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3章
63話 アーヴェインとミーシャの過去
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ローデンハルトが街を去った後、アルウェンが会合で聞いた話について気になることがあるというのでラナと3人で話をすることとなった。
「それで話って?」
「先ほどイザさんがおっしゃっていたエーテロイドについてです」
イザとラナは顔を見合わせた。
「知ってるのか!?」
「い、いえ!我々エルフ族はずっと森で暮らしていましたので流石に外の世界の者の話はほとんど聞いておりませんので」
「なんだ……」
「ですが情報を得られるかもしれない場所に思い当たりはあります」
「どこだ?」
「それはゼルメリス魔導王国です。私も以前エンシェントトレントの封印が弱まってきたのを感じたときに、なにか手立てがないか調べるために、かの国に立ち寄ったことがあるのです」
「なるほど。確かに魔法に特化していると聞いているし封印魔法なんかも詳しい人が居そうだな」
「はい、そう思い魔術院の門をたたいたのですが封印魔法の専門家は残念ながらいないとのことでした。ですが魔法に関する研究は盛んで、各地の強力な魔法の使い手を探していると聞いたことがあります。ですのでマティアさんと同等の存在ならば魔導王国に行けば何か情報が得られるかもしれません」
「魔導王国か……確かに前にラナからその国の存在を聞いたときから気にはなってたけど。俺はこのグローブを付けていないと魔力を制限できないし、マティアは俺以上に魔力の制御が苦手だから魔導王国に行ったりしたら面倒になりそうでなぁ」
「そうですか……。では他の者に行ってもらうというのはどうですか?」
「っていってもなぁ。一応ゼルメリス魔導王国って三大大国なんだろう?この街から来たって知れたら大ごとになりそうだしなぁ。行くにしてももっとゼルメリス魔導王国の情報が欲しいかな」
「でしたらニルンハイムやイャーリスに協力を仰いでみてはいかがですか?」
(そうか。魔法の使い手や行商人、冒険者の中にはゼルメリス魔導王国に行ったことがある者もいるかもしれないな。あっ)
「エルロン達……、ナックとミーシャってまだこの街にいたよな?」
「ええ、エルロンさんはミアと毎日決闘してるみたいですが……フェルさんは食堂に、ナックさんとミーシャさんはリーンさんやエルフの皆様のところで魔法の修業をしていたはずです」
「ちょっと聞いてみるか」
エルロンとフェルは後回しにして、魔法の心得がありゼルメリス魔導王国について知って居そうなナック達の元へと向かった。
丁度街中を歩いていたエラルドを見かけたので二人がどこにいるか聞いているとリーンとアーヴェインと一緒に研究室に入り浸っているそうだ。
リーンとアーヴェインは一緒にすると危険な気がする……。
嫌な予感がしたがとりあえずリーンの薬品工房兼研究室に向かった。
ドアを掛ける前から何やら部屋の中から不穏な気配が漂ってくる。
イザは若干躊躇しつつもノックしドアを開けた。
「りーん、入るぞー」
扉を開け奥に目を向けると4人は薄暗い部屋の中でなにやら怪し気な笑みを浮かべていた。
「おい!こんな暗い部屋で何をしてるんだ。窓くらい開けろよな」
イザが窓を開けようとした瞬間。4人が慌てて止めようとする。
しかし時すでに遅く、4人の阻止しようとする手が届いたときにはイザが窓を開けていた。
「ああああああ!!」
「いったいなんだっていうんだ……」
イザは意味が分からずドン引きした。
次の瞬間、部屋の中央にあった宝石のような物が日の光にあてられて輝き始めた。
リーンが慌てて部屋を飛び出そうとした。
「やばいやばい!みんな避難してー!!」
その声を聴いてあわててイザたちも部屋の外に飛び出した。
その瞬間部屋の中で大きな爆発が起こりギリギリで駆けだしてきたナックとミーシャは爆風で吹き飛ばされた。
みんなどうにか怪我はなかったようだ。
「さっきの爆発は一体なんなんだ?りーん?」
「あれはアーヴェインと私が研究している光のエネルギーを吸収する魔石です!一度に沢山の光を当てると今みたいに大爆発を起こしてしまうので、暗室で少しずつ光を当ててどこまで光を吸収できるか実験してたんですよ」
「その石が完成したとして、いったい何の役に立つっていうんだ……?」
「この石の素晴らしさがイザさんにはわからないのですか!?」
(うん、全くわからん)
「光を吸収して魔力に変えて力を蓄えるということは、この魔力を利用して様々な魔道具に使用できる可能性を秘めているんですよ!??」
アーヴェインはイザに顔を近づけて力説した。
その迫力と顔の近さにイザは気圧された。
「お、おう……」
(ん?光を蓄えて力を変換して使える?それって太陽光発電と蓄電池みたいなものってことか。完成したら本当にすごいものなんじゃ?)
「これが完成したら魔法技術に革命がおこりますよ!!ああ、魔導王国の魔術院で最新の知識を学べたら……」
「おいアーヴェイン!魔導王国にいったことがあるのか!?」
「え、ええ。ですが私が居たのはもう200年ほど前ですが」
「詳しい話を聞かせてくれないか――」
話を聞くとアーヴェインは魔導王国に3年ほどいたそうだ。
魔術院という施設は魔法の学校らしく、入ることが出来れば落第さえしなければ3年で卒業を迎えるらしい。
魔術院を卒業すると魔導士と名乗ることを許され。魔導師学術研究院という場所で魔法についての研究を進めることができるそうだ。研究分野によって功績が国から認められれば研究費の支援も受けられるらしい。
アーヴェインはアルウェンの先代長の頃に3年だけと頼んでゼルメリス魔導王国に向かっていたそうで、それ以上の研究は出来なかったそうだ。
「アーヴェインは魔導王国に行きたいか?」
「それはもう!機会が頂けるのであればいつでも!」
イザはアーヴェインとリーンを眺めた。
(アーヴェインは名づけもしていないので魔力はこの世界の人並みより少し多い程度。リーンは魔力が高いが意外と魔力の操作に長けているので隠すことができる)
などと考えているとラナがイザに注意する。
「イザ様?もしやと思いますがこの二人を魔導王国に行かせようと思っていたりしませんか?」
イザの考えは見透かされていた。
イザは空笑いしながらラナを見た。
ラナが小声でイザに話しかける。
「たしかにこの二人ならそれほど目立たないかもしれませんが、この街で一番外に出すと危険なお二人ですよ!?正気ですか!?」
「でも、アーヴェイン以外に魔導王国に詳しい奴なんてこの街にいないだろう?」
「そうかもしれませんけど……ぜっっったいに問題を起こすとしか思えませんよ……?」
イザは先ほどの石の話で盛り上がっている二人を見て苦笑いした。
(確かに……さすがにこの二人を組ませるのは無謀かもしれない)
そんなとき後ろから小さく手をあげミーシャ声をかけてきた
「あの……」
「ん?どうした?」
「魔導王国でしたら私の姉が学術研究院に努めておりますので、お二人が向かいたいというのなら口利きできるかも知れませんけど?」
イザはミーシャの両肩をがっしりと掴み確認した。
「それはほんとうか!?」
「え、ええ。兎人族はもともとゼルメリス魔導王国に多い種族でして、私の実家は魔導王国にあるので……」
「ナイスミーシャ!」
「えー!ミーシャって魔導王国出身だったんですか!?」
ナックが驚いている。
「ええ、このニルンハイムでゼルメリスの出身だとバレると色々問題があるので今まで誰にも言ってませんでしたけど……」
(ってことはミーシャの姉や家の協力を得られれば何とか潜り込めるかもしれないな)
「よし、ラナ今夜の食事の後で主要な者に集まるように声をかけておいてくれないか」
「はぁ……わかりました」
ラナは諦めたといった感じで返事をした。
「それで話って?」
「先ほどイザさんがおっしゃっていたエーテロイドについてです」
イザとラナは顔を見合わせた。
「知ってるのか!?」
「い、いえ!我々エルフ族はずっと森で暮らしていましたので流石に外の世界の者の話はほとんど聞いておりませんので」
「なんだ……」
「ですが情報を得られるかもしれない場所に思い当たりはあります」
「どこだ?」
「それはゼルメリス魔導王国です。私も以前エンシェントトレントの封印が弱まってきたのを感じたときに、なにか手立てがないか調べるために、かの国に立ち寄ったことがあるのです」
「なるほど。確かに魔法に特化していると聞いているし封印魔法なんかも詳しい人が居そうだな」
「はい、そう思い魔術院の門をたたいたのですが封印魔法の専門家は残念ながらいないとのことでした。ですが魔法に関する研究は盛んで、各地の強力な魔法の使い手を探していると聞いたことがあります。ですのでマティアさんと同等の存在ならば魔導王国に行けば何か情報が得られるかもしれません」
「魔導王国か……確かに前にラナからその国の存在を聞いたときから気にはなってたけど。俺はこのグローブを付けていないと魔力を制限できないし、マティアは俺以上に魔力の制御が苦手だから魔導王国に行ったりしたら面倒になりそうでなぁ」
「そうですか……。では他の者に行ってもらうというのはどうですか?」
「っていってもなぁ。一応ゼルメリス魔導王国って三大大国なんだろう?この街から来たって知れたら大ごとになりそうだしなぁ。行くにしてももっとゼルメリス魔導王国の情報が欲しいかな」
「でしたらニルンハイムやイャーリスに協力を仰いでみてはいかがですか?」
(そうか。魔法の使い手や行商人、冒険者の中にはゼルメリス魔導王国に行ったことがある者もいるかもしれないな。あっ)
「エルロン達……、ナックとミーシャってまだこの街にいたよな?」
「ええ、エルロンさんはミアと毎日決闘してるみたいですが……フェルさんは食堂に、ナックさんとミーシャさんはリーンさんやエルフの皆様のところで魔法の修業をしていたはずです」
「ちょっと聞いてみるか」
エルロンとフェルは後回しにして、魔法の心得がありゼルメリス魔導王国について知って居そうなナック達の元へと向かった。
丁度街中を歩いていたエラルドを見かけたので二人がどこにいるか聞いているとリーンとアーヴェインと一緒に研究室に入り浸っているそうだ。
リーンとアーヴェインは一緒にすると危険な気がする……。
嫌な予感がしたがとりあえずリーンの薬品工房兼研究室に向かった。
ドアを掛ける前から何やら部屋の中から不穏な気配が漂ってくる。
イザは若干躊躇しつつもノックしドアを開けた。
「りーん、入るぞー」
扉を開け奥に目を向けると4人は薄暗い部屋の中でなにやら怪し気な笑みを浮かべていた。
「おい!こんな暗い部屋で何をしてるんだ。窓くらい開けろよな」
イザが窓を開けようとした瞬間。4人が慌てて止めようとする。
しかし時すでに遅く、4人の阻止しようとする手が届いたときにはイザが窓を開けていた。
「ああああああ!!」
「いったいなんだっていうんだ……」
イザは意味が分からずドン引きした。
次の瞬間、部屋の中央にあった宝石のような物が日の光にあてられて輝き始めた。
リーンが慌てて部屋を飛び出そうとした。
「やばいやばい!みんな避難してー!!」
その声を聴いてあわててイザたちも部屋の外に飛び出した。
その瞬間部屋の中で大きな爆発が起こりギリギリで駆けだしてきたナックとミーシャは爆風で吹き飛ばされた。
みんなどうにか怪我はなかったようだ。
「さっきの爆発は一体なんなんだ?りーん?」
「あれはアーヴェインと私が研究している光のエネルギーを吸収する魔石です!一度に沢山の光を当てると今みたいに大爆発を起こしてしまうので、暗室で少しずつ光を当ててどこまで光を吸収できるか実験してたんですよ」
「その石が完成したとして、いったい何の役に立つっていうんだ……?」
「この石の素晴らしさがイザさんにはわからないのですか!?」
(うん、全くわからん)
「光を吸収して魔力に変えて力を蓄えるということは、この魔力を利用して様々な魔道具に使用できる可能性を秘めているんですよ!??」
アーヴェインはイザに顔を近づけて力説した。
その迫力と顔の近さにイザは気圧された。
「お、おう……」
(ん?光を蓄えて力を変換して使える?それって太陽光発電と蓄電池みたいなものってことか。完成したら本当にすごいものなんじゃ?)
「これが完成したら魔法技術に革命がおこりますよ!!ああ、魔導王国の魔術院で最新の知識を学べたら……」
「おいアーヴェイン!魔導王国にいったことがあるのか!?」
「え、ええ。ですが私が居たのはもう200年ほど前ですが」
「詳しい話を聞かせてくれないか――」
話を聞くとアーヴェインは魔導王国に3年ほどいたそうだ。
魔術院という施設は魔法の学校らしく、入ることが出来れば落第さえしなければ3年で卒業を迎えるらしい。
魔術院を卒業すると魔導士と名乗ることを許され。魔導師学術研究院という場所で魔法についての研究を進めることができるそうだ。研究分野によって功績が国から認められれば研究費の支援も受けられるらしい。
アーヴェインはアルウェンの先代長の頃に3年だけと頼んでゼルメリス魔導王国に向かっていたそうで、それ以上の研究は出来なかったそうだ。
「アーヴェインは魔導王国に行きたいか?」
「それはもう!機会が頂けるのであればいつでも!」
イザはアーヴェインとリーンを眺めた。
(アーヴェインは名づけもしていないので魔力はこの世界の人並みより少し多い程度。リーンは魔力が高いが意外と魔力の操作に長けているので隠すことができる)
などと考えているとラナがイザに注意する。
「イザ様?もしやと思いますがこの二人を魔導王国に行かせようと思っていたりしませんか?」
イザの考えは見透かされていた。
イザは空笑いしながらラナを見た。
ラナが小声でイザに話しかける。
「たしかにこの二人ならそれほど目立たないかもしれませんが、この街で一番外に出すと危険なお二人ですよ!?正気ですか!?」
「でも、アーヴェイン以外に魔導王国に詳しい奴なんてこの街にいないだろう?」
「そうかもしれませんけど……ぜっっったいに問題を起こすとしか思えませんよ……?」
イザは先ほどの石の話で盛り上がっている二人を見て苦笑いした。
(確かに……さすがにこの二人を組ませるのは無謀かもしれない)
そんなとき後ろから小さく手をあげミーシャ声をかけてきた
「あの……」
「ん?どうした?」
「魔導王国でしたら私の姉が学術研究院に努めておりますので、お二人が向かいたいというのなら口利きできるかも知れませんけど?」
イザはミーシャの両肩をがっしりと掴み確認した。
「それはほんとうか!?」
「え、ええ。兎人族はもともとゼルメリス魔導王国に多い種族でして、私の実家は魔導王国にあるので……」
「ナイスミーシャ!」
「えー!ミーシャって魔導王国出身だったんですか!?」
ナックが驚いている。
「ええ、このニルンハイムでゼルメリスの出身だとバレると色々問題があるので今まで誰にも言ってませんでしたけど……」
(ってことはミーシャの姉や家の協力を得られれば何とか潜り込めるかもしれないな)
「よし、ラナ今夜の食事の後で主要な者に集まるように声をかけておいてくれないか」
「はぁ……わかりました」
ラナは諦めたといった感じで返事をした。
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