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3.「孤児院」へ
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とっさにギュッと目をつぶった刹那、何かが振るわれた音と猪の鳴き叫ぶ声が聞こえた。
しばらくして、
「大丈夫?!ケガはないか?!」
背中をとんとんと叩かれ、驚いて目を開ける。目の前には、座り込んでいた僕に目線を合わせ、かがんでいる大人がいた。雨を避けるためだろうか、フード付きのマントを被っている。
うなづくと、その人はよかったと言って笑みを浮かべた。そして背負っていたカバンから布と小さいマントを取り出し、布で僕の体を拭いた後、雨避けのマントを被せてくれた。
後ろにはもう二人、大人がいた。剣と盾を持ったガタイのいい男性と、槍を持った女性。いかにも勇者パーティのような人たちだ。ガタイのいい男性の剣には、血がべっとりついていた。
猪はというと、剣を持つ男性の横で、首についた鋭い切り傷から血を流して横たわっていた。たぶんもう死んでいるだろう。
「……」
こう見るとめっちゃグロいな……魔物なんだろうけど、ちょっとかわいそう……
さっきの人が二人の方に振り向く。背中に箙(矢を入れる筒)を背負っていた。
「そっちはどうだ?」
「おう、バッチリ倒したぜ!いやーこのツノシシ、大きいくせに逃げ足超速かったな……苦戦したぜ」
「なにはともあれ、依頼達成ね!」
三人の話からは「依頼」「報酬」といった言葉が多く聞こえる。フリーノティアにも冒険者ギルドっぽいものがあるのかな。ていうか、創ったの僕なのか。うーんどうだったっけ……。
あと、一つ思い出したことがある。角が生えた猪の「ツノシシ」。これは、僕が……
考えこんでいると、箙の人がまた僕に近寄ってきた。何だろう。
「危険だからもう一人で森に行っちゃだめだよ。家に連れてってあげるから。立てる?」
親切で良かった。でもな……
「……家、ないです」
「え?」
「あ、親もいないです」
「……森で暮らしてた、ってことか?」
「ええ、きっとそうね。池の水を飲んで暮らしていたんだわ」
え?飲んでないけど……池のぞいてたの見られてたのか。勘違いされて余計に心配されてしまった。
「そうか。大変だったな……。よし、じゃあ孤児院に行こうか!君、名前はなんて言うの?」
「ヨムライト」
僕は無意識に言葉を発した。なるほど、ヨムライトって名前なのか。
「そうか。ヨムライト、立てるか?」
というわけで、僕は孤児院とやらに連れていかれることになった。森を歩いてる中、何度かおんぶしようか?と言われたが、大丈夫ですと断った。裸足だったけど道は平らで何の問題も無かったし、高校生が大人におぶられるのはちょっと……となって。後からそういえば今小さいんだったわと思い出したけど。まあそれでも人様の迷惑になっちゃうしね。
僕が池にたどり着いた時よりも早く、村の門の前についた。結構近くにいたんだな。門の横には、「ノートン村」と書かれた小さな看板が立っている。……日本語じゃない!何語かわからないけど、読める。ファンタジーあるあるじゃないかコレ……。妙に感動した。
武器を持つ三人は門番に身分証のようなものを見せ、また僕についての説明もしていた。しばらくして門番は門を開け、僕たちはノートン村へ入った。雨はいつの間にかやんでいた。
途中で剣の人と槍の人は、狩ったツノシシを運んでどこかに行ってしまった。やはりギルドのようなものがあるのだろうか。僕は箙の人に手を引かれながら、二人とは反対方向へ進んでいった。
ノートン村は、完全にファンタジーの最初の村、という感じだった。のどかな田舎。通る道は森と同じで、特に塗装などはされていない。大きい建物はあまりなく、道沿いには小さな店のテントがいくつか建っていて、パンや野菜が並べられている。もう夕方だったが、店の前で店員さんと話している人や歩いている子連れの家族など、それなりににぎわっていた。
「あの人、スゴ腕の冒険者だぞ!本物の!」
「すっげー!おれもおとなになったらあーなりたい!」
「あら~かっこいいわね!ん?あの一緒にいる子、誰かしら……?」
ミニ商店街のような道を抜けると、木製の平屋が見えてきた。「ムーンライトブック孤児院」と書いてある。また日本語じゃない文字だ。よく考えたら、森にいたときから日本語を一度も見ていない。まあ読めてるし、言葉もなんか伝わってるからいいか。
「おお、冒険者さんか。いつもご苦労様」
扉が開き、おじいさんが一人出てきた。
「お久しぶりです、ムーンライトさん。あの、この子をそちらで引き取ることはできますでしょうか。どうやら森で一人で暮らしていたようなのですが……」
しばらくして、
「大丈夫?!ケガはないか?!」
背中をとんとんと叩かれ、驚いて目を開ける。目の前には、座り込んでいた僕に目線を合わせ、かがんでいる大人がいた。雨を避けるためだろうか、フード付きのマントを被っている。
うなづくと、その人はよかったと言って笑みを浮かべた。そして背負っていたカバンから布と小さいマントを取り出し、布で僕の体を拭いた後、雨避けのマントを被せてくれた。
後ろにはもう二人、大人がいた。剣と盾を持ったガタイのいい男性と、槍を持った女性。いかにも勇者パーティのような人たちだ。ガタイのいい男性の剣には、血がべっとりついていた。
猪はというと、剣を持つ男性の横で、首についた鋭い切り傷から血を流して横たわっていた。たぶんもう死んでいるだろう。
「……」
こう見るとめっちゃグロいな……魔物なんだろうけど、ちょっとかわいそう……
さっきの人が二人の方に振り向く。背中に箙(矢を入れる筒)を背負っていた。
「そっちはどうだ?」
「おう、バッチリ倒したぜ!いやーこのツノシシ、大きいくせに逃げ足超速かったな……苦戦したぜ」
「なにはともあれ、依頼達成ね!」
三人の話からは「依頼」「報酬」といった言葉が多く聞こえる。フリーノティアにも冒険者ギルドっぽいものがあるのかな。ていうか、創ったの僕なのか。うーんどうだったっけ……。
あと、一つ思い出したことがある。角が生えた猪の「ツノシシ」。これは、僕が……
考えこんでいると、箙の人がまた僕に近寄ってきた。何だろう。
「危険だからもう一人で森に行っちゃだめだよ。家に連れてってあげるから。立てる?」
親切で良かった。でもな……
「……家、ないです」
「え?」
「あ、親もいないです」
「……森で暮らしてた、ってことか?」
「ええ、きっとそうね。池の水を飲んで暮らしていたんだわ」
え?飲んでないけど……池のぞいてたの見られてたのか。勘違いされて余計に心配されてしまった。
「そうか。大変だったな……。よし、じゃあ孤児院に行こうか!君、名前はなんて言うの?」
「ヨムライト」
僕は無意識に言葉を発した。なるほど、ヨムライトって名前なのか。
「そうか。ヨムライト、立てるか?」
というわけで、僕は孤児院とやらに連れていかれることになった。森を歩いてる中、何度かおんぶしようか?と言われたが、大丈夫ですと断った。裸足だったけど道は平らで何の問題も無かったし、高校生が大人におぶられるのはちょっと……となって。後からそういえば今小さいんだったわと思い出したけど。まあそれでも人様の迷惑になっちゃうしね。
僕が池にたどり着いた時よりも早く、村の門の前についた。結構近くにいたんだな。門の横には、「ノートン村」と書かれた小さな看板が立っている。……日本語じゃない!何語かわからないけど、読める。ファンタジーあるあるじゃないかコレ……。妙に感動した。
武器を持つ三人は門番に身分証のようなものを見せ、また僕についての説明もしていた。しばらくして門番は門を開け、僕たちはノートン村へ入った。雨はいつの間にかやんでいた。
途中で剣の人と槍の人は、狩ったツノシシを運んでどこかに行ってしまった。やはりギルドのようなものがあるのだろうか。僕は箙の人に手を引かれながら、二人とは反対方向へ進んでいった。
ノートン村は、完全にファンタジーの最初の村、という感じだった。のどかな田舎。通る道は森と同じで、特に塗装などはされていない。大きい建物はあまりなく、道沿いには小さな店のテントがいくつか建っていて、パンや野菜が並べられている。もう夕方だったが、店の前で店員さんと話している人や歩いている子連れの家族など、それなりににぎわっていた。
「あの人、スゴ腕の冒険者だぞ!本物の!」
「すっげー!おれもおとなになったらあーなりたい!」
「あら~かっこいいわね!ん?あの一緒にいる子、誰かしら……?」
ミニ商店街のような道を抜けると、木製の平屋が見えてきた。「ムーンライトブック孤児院」と書いてある。また日本語じゃない文字だ。よく考えたら、森にいたときから日本語を一度も見ていない。まあ読めてるし、言葉もなんか伝わってるからいいか。
「おお、冒険者さんか。いつもご苦労様」
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