MY異世界 ~創造神(僕)による、のんびり自由に”創り”ながらのスローライフ〜

本田成己

文字の大きさ
3 / 10

3.「孤児院」へ

しおりを挟む
 とっさにギュッと目をつぶった刹那、何かが振るわれた音と猪の鳴き叫ぶ声が聞こえた。

 しばらくして、
 「大丈夫?!ケガはないか?!」
 背中をとんとんと叩かれ、驚いて目を開ける。目の前には、座り込んでいた僕に目線を合わせ、かがんでいる大人がいた。雨を避けるためだろうか、フード付きのマントを被っている。

 うなづくと、その人はよかったと言って笑みを浮かべた。そして背負っていたカバンから布と小さいマントを取り出し、布で僕の体を拭いた後、雨避けのマントを被せてくれた。
 後ろにはもう二人、大人がいた。剣と盾を持ったガタイのいい男性と、槍を持った女性。いかにも勇者パーティのような人たちだ。ガタイのいい男性の剣には、血がべっとりついていた。

 猪はというと、剣を持つ男性の横で、首についた鋭い切り傷から血を流して横たわっていた。たぶんもう死んでいるだろう。
 「……」
 こう見るとめっちゃグロいな……魔物なんだろうけど、ちょっとかわいそう……

 さっきの人が二人の方に振り向く。背中にえびら(矢を入れる筒)を背負っていた。
 「そっちはどうだ?」
 「おう、バッチリ倒したぜ!いやーこのツノシシ、大きいくせに逃げ足超速かったな……苦戦したぜ」
 「なにはともあれ、依頼達成ね!」

 
 三人の話からは「依頼」「報酬」といった言葉が多く聞こえる。フリーノティアにも冒険者ギルドっぽいものがあるのかな。ていうか、創ったの僕なのか。うーんどうだったっけ……。
 あと、一つ思い出したことがある。角が生えた猪の「ツノシシ」。これは、僕が……
 

 考えこんでいると、えびらの人がまた僕に近寄ってきた。何だろう。
 「危険だからもう一人で森に行っちゃだめだよ。家に連れてってあげるから。立てる?」
 親切で良かった。でもな……
 「……家、ないです」
 「え?」
 「あ、親もいないです」
 「……森で暮らしてた、ってことか?」
 「ええ、きっとそうね。池の水を飲んで暮らしていたんだわ」
 え?飲んでないけど……池のぞいてたの見られてたのか。勘違いされて余計に心配されてしまった。

 「そうか。大変だったな……。よし、じゃあ孤児院に行こうか!君、名前はなんて言うの?」
 「ヨムライト」
 僕は無意識に言葉を発した。なるほど、ヨムライトって名前なのか。
 「そうか。ヨムライト、立てるか?」

 というわけで、僕は孤児院とやらに連れていかれることになった。森を歩いてる中、何度かおんぶしようか?と言われたが、大丈夫ですと断った。裸足だったけど道は平らで何の問題も無かったし、高校生が大人におぶられるのはちょっと……となって。後からそういえば今小さいんだったわと思い出したけど。まあそれでも人様の迷惑になっちゃうしね。
 
 僕が池にたどり着いた時よりも早く、村の門の前についた。結構近くにいたんだな。門の横には、「ノートン村」と書かれた小さな看板が立っている。……日本語じゃない!何語かわからないけど、読める。ファンタジーあるあるじゃないかコレ……。妙に感動した。
 武器を持つ三人は門番に身分証のようなものを見せ、また僕についての説明もしていた。しばらくして門番は門を開け、僕たちはノートン村へ入った。雨はいつの間にかやんでいた。

 途中で剣の人と槍の人は、狩ったツノシシを運んでどこかに行ってしまった。やはりギルドのようなものがあるのだろうか。僕はえびらの人に手を引かれながら、二人とは反対方向へ進んでいった。

 ノートン村は、完全にファンタジーの最初の村、という感じだった。のどかな田舎いなか。通る道は森と同じで、特に塗装などはされていない。大きい建物はあまりなく、道沿いには小さな店のテントがいくつか建っていて、パンや野菜が並べられている。もう夕方だったが、店の前で店員さんと話している人や歩いている子連れの家族など、それなりににぎわっていた。
 「あの人、スゴ腕の冒険者だぞ!本物の!」
 「すっげー!おれもおとなになったらあーなりたい!」
 「あら~かっこいいわね!ん?あの一緒にいる子、誰かしら……?」


 ミニ商店街のような道を抜けると、木製の平屋が見えてきた。「ムーンライトブック孤児院」と書いてある。また日本語じゃない文字だ。よく考えたら、森にいたときから日本語を一度も見ていない。まあ読めてるし、言葉もなんか伝わってるからいいか。

 「おお、冒険者さんか。いつもご苦労様」
 扉が開き、おじいさんが一人出てきた。
 「お久しぶりです、ムーンライトさん。あの、この子をそちらで引き取ることはできますでしょうか。どうやら森で一人で暮らしていたようなのですが……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...