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妬
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母親は「学校、休んでもいいのよ」なんて言ったけれど、正直なところ私には落ち込む理由がなかったから登校した。「聖薇さん、偉いわ!」なんて株が上がってしまった。
そんなこんなで、朝から花園さんはミツバチみたいにぶんぶん私の周りを可愛らしく飛び回る。
「ねえ、ねえ、私、謝ったほうがいいと思うの。話の弾みってあるじゃない。ずっと一緒だと喧嘩しちゃうことってあるかもだし、もう一度、考え直してみよう? ね?」
顔を合わせてからずっとこんな調子だから、周囲の人たちは「え? どういうこと?」って気になっている様子だ。一生懸命なのはいいけれど少し困った。
仕方ないので昨日のように屋上へ連れ出した。空が澄んでいて、風が心地いい。実にいい天気だった。
「御崎さんって雄星君のこと好きなんでしょ?」
花園さんは問う。だから好きになっちゃいけない、なんて、雄星ルートでは葛藤していたなぁ。気持ちは結ばれているのに倫理観で逃げて、切なさに涙を流すシーンは、流石ヒロインだと思った。自分のものではない感情にメロメロに酔って、だから私は聖薇を憎く感じた。当の花園さん本人はそんな感情を持ち合わせてはいなかったけれど。
「いいえ。私は昨日言ったのが本音よ」
聖薇の本音ではないかもしれないけれど、私の本音ではある。
「花園さんは雄星のこと好き?」
「え!?」
聞き取れていたはずだから二度は言わない。困惑で目を丸く見開き、困ったように眉を下げる。視線は一度だけ逃げた。でも、すぐに戻ってきた。
「雄星君は優しくてかっこよくて頭もよくて夢もあって……友達として、好き。応援したいって思う」
「恋愛感情はないのかしら?」
「……私、恋したことないの。だから、わからない」
もともと、恋愛に疎い女の子が恋を覚えて行く話だ。彼女は真顔で言っている。それは、彼には興味ないと言っていることと同意着だった。フラグは立ってないようだ。
ステキなのになんだかカチンと来るのはなんでだろう。理由がわからない。花園さんの余裕、なのだろうか? 彼女はなんでも持ってるから飢えなくて済む。可愛くて愛されて、だから素直。ますます腹立たしくなってくる。
「そう。昨日、雄星を追っていったでしょう。もしかして、雄星に告白されたんじゃないかしら、と思ったの」
「私が?」
花園さんは、まさか、と目を丸くした。うん、と私は小さく頷く。
「あなたは可愛いし優しいし、人を和ませる才能があると思うの。雄星もあなたに惹かれていたわ」
「そ、そんな……私、信じられない」
花園さんはオロついて冷や汗をかいていた。恐らく昨日は気持ちがすれ違うようなこともあったのだろう。雄星が逆ギレしたと思う。ゲームでも、逆ギレからの強引なキス、そして告白だった。
「花園さんは知らないうちに人を傷つけているのかもしれないわね」
「……私、御崎さんにも酷いこと、してる?」
目も眩むようだった存在は、まだまだ眩しい。目を細めても見られないかもしれない。だからこそ私は彼女に傷付けられる。一方的に傷付く。腹が立つ。妬ましくなる。彼女がいい子であればあるほど、自分がどんどん惨めになる。美人は笑顔の一つで人を幸せにすることができる。でも、美人が笑ったところでブスはブス。笑顔の裏に悪意はなくても、彼女が美人で私がブスという現実は変わらないし、肉体の腐汁が滲み出て染みた心もまた、変わらないのだ。
私は曖昧に微笑んだ。美人だから許される。花園さんは不安になったようで、瞳の色をグラグラさせていた。
「ねえ、御崎さん」
「授業よ。行きましょう」
私は花園さんに背を向けた。自分がどんな顔をしているか、わからないし、見せられない。ただ、彼女も醜くなってしまえばいいのに、と、心の底から思った。
そんなこんなで、朝から花園さんはミツバチみたいにぶんぶん私の周りを可愛らしく飛び回る。
「ねえ、ねえ、私、謝ったほうがいいと思うの。話の弾みってあるじゃない。ずっと一緒だと喧嘩しちゃうことってあるかもだし、もう一度、考え直してみよう? ね?」
顔を合わせてからずっとこんな調子だから、周囲の人たちは「え? どういうこと?」って気になっている様子だ。一生懸命なのはいいけれど少し困った。
仕方ないので昨日のように屋上へ連れ出した。空が澄んでいて、風が心地いい。実にいい天気だった。
「御崎さんって雄星君のこと好きなんでしょ?」
花園さんは問う。だから好きになっちゃいけない、なんて、雄星ルートでは葛藤していたなぁ。気持ちは結ばれているのに倫理観で逃げて、切なさに涙を流すシーンは、流石ヒロインだと思った。自分のものではない感情にメロメロに酔って、だから私は聖薇を憎く感じた。当の花園さん本人はそんな感情を持ち合わせてはいなかったけれど。
「いいえ。私は昨日言ったのが本音よ」
聖薇の本音ではないかもしれないけれど、私の本音ではある。
「花園さんは雄星のこと好き?」
「え!?」
聞き取れていたはずだから二度は言わない。困惑で目を丸く見開き、困ったように眉を下げる。視線は一度だけ逃げた。でも、すぐに戻ってきた。
「雄星君は優しくてかっこよくて頭もよくて夢もあって……友達として、好き。応援したいって思う」
「恋愛感情はないのかしら?」
「……私、恋したことないの。だから、わからない」
もともと、恋愛に疎い女の子が恋を覚えて行く話だ。彼女は真顔で言っている。それは、彼には興味ないと言っていることと同意着だった。フラグは立ってないようだ。
ステキなのになんだかカチンと来るのはなんでだろう。理由がわからない。花園さんの余裕、なのだろうか? 彼女はなんでも持ってるから飢えなくて済む。可愛くて愛されて、だから素直。ますます腹立たしくなってくる。
「そう。昨日、雄星を追っていったでしょう。もしかして、雄星に告白されたんじゃないかしら、と思ったの」
「私が?」
花園さんは、まさか、と目を丸くした。うん、と私は小さく頷く。
「あなたは可愛いし優しいし、人を和ませる才能があると思うの。雄星もあなたに惹かれていたわ」
「そ、そんな……私、信じられない」
花園さんはオロついて冷や汗をかいていた。恐らく昨日は気持ちがすれ違うようなこともあったのだろう。雄星が逆ギレしたと思う。ゲームでも、逆ギレからの強引なキス、そして告白だった。
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私は曖昧に微笑んだ。美人だから許される。花園さんは不安になったようで、瞳の色をグラグラさせていた。
「ねえ、御崎さん」
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私は花園さんに背を向けた。自分がどんな顔をしているか、わからないし、見せられない。ただ、彼女も醜くなってしまえばいいのに、と、心の底から思った。
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