小足姫 ~Fake~

睦月

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 窓から見える中庭の植物の移り変わりで季節の変化を知る日々。


「お嬢様のお加減がよろしくありませんので、どなたも立ち入りをご遠慮下さいませ」

 数ヵ月に一度、凱から屋敷の者達に告げられる言葉。

 それは… 

 彼女にとって最も苦痛を伴う「治療」の時だった。

 内側に折り曲げられたため、足裏の肉が腐る。

 壊死し、膿を内包してしまうのだ。

 足裏に刃物を入れ、腐臭を放つ膿を絞りだし、不要な腐肉を刮げ取る。

 香を焚こうが部屋に充満する腐臭は隠しようもない。

 痛みも相当な物で、全身から珠のような汗を吹き出しながら堪える。

 数日間熱が出ることもしばしばある。

 薬草を煎じた物を服用したり、塗りつけたり。

 それでもじくじくとした痛みは続く。

 彼女の足が、成長を止めるその時までこの「治療」は続くのだ。

 外側の炎症が治まると、家人には秘密で続けられていることがもう一つある。

 それは、歩く練習。

 歩くどころかダンスの練習すらしている。

 素足のままだとバランスが悪く、ぐらりぐらりと体が傾ぐが、凱の国の淑女御用達の専用の靴を履くといくらかマシになる。

 この練習も凱が彼女に「必ず必要になること」と言っていた。


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