魔王様と暁の姫短編集

椿灯夏

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兄様たちはチョコがほしい

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冬の月。異国から伝わったとされるバレンタインデーというチョコレートを贈るイベントは、ここ暁の国でもすっかり根づいてしまった。それ以外にも焼き菓子、紅茶、本――ホワイトデーで並ぶ商品も人気だ。


その中でも特に限定品と呼ばれるものが人気で、すぐ売れ切れてしまう。



そして姫様こと、リシュティアは前日にこっそり城下町に出かけていた。お供にクオイのグリフォンを肩に乗せて。大きくもなれるが、さすがにそれはまずいので肩乗りサイズだ。



「わあ……お菓子がいっぱいだね! ちゃんとネルちゃんの分も買うから大丈夫だよ」


“フェンネル”というかっこいい名前があるのだが、リシュティアの中ではネルちゃんなのである。


いつもよりきらきらした町には甘くていい香りが漂う。ショーケースには三日月や星の形をした可愛いらしいものから、果実酒をふんだんに使った大人好みのものまで、幅広く置いてある。



「このチョコレート、ドライフルーツのイチゴが入ってるんだって。いいなあ、ホワイトチョコレートで美味しそう……」



ピンクの可愛いらしいカフェのショーケースに思わずべったり張り付く。グリフォンから、くいくい髪を引っ張られ思い留まる。そうなのだ。今日は日頃お世話になっているルシュラとクオイに、あげる贈り物を買いにきたのだから。


「そうだった。お手伝いして貯めたお金持ってきたけど、そんなに安くないもんね……。別のところいこっか」


しょぼんと肩を落し、離れようとした時店から出てきたのは――ヨルだった。紫紡の国の姫であるオリメに仕えている少年だ。でもヨルとこのお店はどう考えてもマッチングせず、首を傾げる。


「来てたんだね。オリメちゃんも一緒?」

「姫か……クオイたちじゃなくてよかった。オリメは一緒じゃない。今日は私的な用件で来てるからな」

「そうなんだあ。じゃあどうして?」

「……いやその」

「ねぇどうして?」



結構容赦ないリシュティアとたじたじのヨル。


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みんなの感想(1件)

2021.08.25 ユーザー名の登録がありません

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椿灯夏
2021.08.25 椿灯夏

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