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第二章 少年期編
第十二話 本物の無気力の新たな友人(2)
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出会ったばかりの頃はクールキャラだと思っていて、接していくうちにツンデレキャラだと気づき、結果的に俺様キャラになるとは。
人間の変化って不思議だ。
もしかして俺も数年後には熱血キャラになっているかも。
瞳に炎を宿して雄叫びを上げる自分を想像してみる。
考えるだけで疲れた。無理。
「「「第二皇子殿下にご挨拶申し上げます」」」
大人三人は直ぐに頭を垂れて皇族向けの挨拶をした。
「お前またおかしなこと考えてるだろ」
エディはそれを華麗にスルーして俺の目の前で片膝をついて座る。
「その顔。また碌でもない想像をしてるな?少しくらい口に出したらどうだ」
乱雑に頭を撫でられる。
結局遊び相手というお役目が途切れることはなく、幼馴染と呼べるくらい近くで育てられた俺達は割とお互いのことを理解していた。
表情筋が殆ど息をしていない俺の脳内をここまで的確に当てられるのは屋敷外の人間ではエディくらいのものだ。
同い年でありながら成長速度は俺より幾分も上のエディは少年から青年に変わろうとしている。
未だ伸び続ける背はエド先生に追いつこうとしていて、柔らかな印象を与えるはずの桃色の髪は大人びて見えるようきっちりセットされている。
一方で目尻がわずかに釣り上がった瞳は幼い頃から何も変わらないのに不思議と昔ほど張り詰めた空気を感じない。
「ふあぁ、」
「もう寝そうだな。ほら、おぶってやるから帰るぞ」
「ん」
エディが背を向けて屈んでくれる。
ではお言葉に甘えて………
「ストップ。殿下、それは流石に駄目ですねー」
すかさず止めに入ったのはゲイレンだ。
お尻を僅かに上げた俺の肩に両手を乗せて地面に向かって押してくる。
言い出したのはエディなのに何で俺が抑えられてるんだ。
「………」
「睨んでも駄目なもんはダーメ。外にはたくさん人がいるんですから」
ゲイレンの奴すごいな。
皇子にここまではっきり物申すとは。
ていうかもういいよな。
俺結構耐えた。何回も限界超えた。
「人がいるからなんなんだ。神殿では人前でおぶってはいけない規則でもあるのか?」
「皇子が白昼堂々おんぶなんてしたら婚約者だと思われかねないですよ。自分でも分かってるでしょ?」
「俺は別に………そう思われたって構わない」
一瞬の間の後で、エイデンははっきり言い切る。
「あのー、そろそろ僕達お暇しますね。
坊ちゃま寝てますんで」
「それでは失礼します。リッツェさん、ルシオン様が起きないよう細心の注意を払ってください」
「はーい」
いつの間にかルシオンをおんぶしていたリッツェは平然とした様子で聖堂を出ていく。
エドワルドもそれに続いたが、直前で立ち止まり振り向いた。
表情はいつもと変わらない。しかし僅かにレンズ越しの瞳が冷たくなっている。
「ルシオン様の気持ちを考慮出来ないのなら距離を置いてください」
そう一言だけ言い残してその場を去った。
「いや、エドちゃんこわー。普通殿下にあそこまで言うかね。
………殿下?」
皇子という身分があるからこそ相手の気持ちを慮らなければならないのは確かだ。しかし皇族相手にかなり行き過ぎた言い方だった。
それでもエイデンは強く拳を握りしめるだけだ。
まるで返す言葉もないとでも言うように。
「…なあ、」
「はい」
「………」
やっと口を開いたと思ったらまたまた黙り込んでしまうし、ゲイレンはそろそろこの状況に飽きてきた。
「殿下、オレそろそろ治療棟に………」
「『ユーリ』って知ってるか?」
「ゆーり?」
「知らないならいい」
「ええ!?ちょっと待ってよ!ユーリって何!?誰!?気になるんだけど!」
エイデンは一人で会話を終わらせてスタスタ帰ってしまった。
「えー、マジで何?ユーリって誰なの?リトちゃん知ってる?」
「知らないですね。少なくとも神殿の周辺にはいないと思いますよ」
試しに補佐の神官に聞いてみても首を傾げるだけだ。有名人というわけではないらしい。
「まあどうせベビたん関係なんだろうけどさー」
勤勉で努力家。熱心に神殿に通う厚い信仰心の持ち主で、優秀な兄を献身的にサポートする器の広さも兼ね備えている。
世間でのエイデンの評価はそんなところだろう。
誤りではないが彼を形成する一番大きな要素が抜けている。
エイデンという人間を語るのにルシオン・エリューストという存在は欠かせないことを彼に近しい者は皆知っていた。
「あんなに仲良しなのに何でいつも焦ってるのかなーって思ってたけど、もしかしてそのユーリちゃんって子が原因なのかね。んー、気になる!」
「余計なことしないでくださいよ。皇室とは程よい距離感で!」
「あははっ、分かってないから安心して!」
「なんっにも安心できない!」
人間の変化って不思議だ。
もしかして俺も数年後には熱血キャラになっているかも。
瞳に炎を宿して雄叫びを上げる自分を想像してみる。
考えるだけで疲れた。無理。
「「「第二皇子殿下にご挨拶申し上げます」」」
大人三人は直ぐに頭を垂れて皇族向けの挨拶をした。
「お前またおかしなこと考えてるだろ」
エディはそれを華麗にスルーして俺の目の前で片膝をついて座る。
「その顔。また碌でもない想像をしてるな?少しくらい口に出したらどうだ」
乱雑に頭を撫でられる。
結局遊び相手というお役目が途切れることはなく、幼馴染と呼べるくらい近くで育てられた俺達は割とお互いのことを理解していた。
表情筋が殆ど息をしていない俺の脳内をここまで的確に当てられるのは屋敷外の人間ではエディくらいのものだ。
同い年でありながら成長速度は俺より幾分も上のエディは少年から青年に変わろうとしている。
未だ伸び続ける背はエド先生に追いつこうとしていて、柔らかな印象を与えるはずの桃色の髪は大人びて見えるようきっちりセットされている。
一方で目尻がわずかに釣り上がった瞳は幼い頃から何も変わらないのに不思議と昔ほど張り詰めた空気を感じない。
「ふあぁ、」
「もう寝そうだな。ほら、おぶってやるから帰るぞ」
「ん」
エディが背を向けて屈んでくれる。
ではお言葉に甘えて………
「ストップ。殿下、それは流石に駄目ですねー」
すかさず止めに入ったのはゲイレンだ。
お尻を僅かに上げた俺の肩に両手を乗せて地面に向かって押してくる。
言い出したのはエディなのに何で俺が抑えられてるんだ。
「………」
「睨んでも駄目なもんはダーメ。外にはたくさん人がいるんですから」
ゲイレンの奴すごいな。
皇子にここまではっきり物申すとは。
ていうかもういいよな。
俺結構耐えた。何回も限界超えた。
「人がいるからなんなんだ。神殿では人前でおぶってはいけない規則でもあるのか?」
「皇子が白昼堂々おんぶなんてしたら婚約者だと思われかねないですよ。自分でも分かってるでしょ?」
「俺は別に………そう思われたって構わない」
一瞬の間の後で、エイデンははっきり言い切る。
「あのー、そろそろ僕達お暇しますね。
坊ちゃま寝てますんで」
「それでは失礼します。リッツェさん、ルシオン様が起きないよう細心の注意を払ってください」
「はーい」
いつの間にかルシオンをおんぶしていたリッツェは平然とした様子で聖堂を出ていく。
エドワルドもそれに続いたが、直前で立ち止まり振り向いた。
表情はいつもと変わらない。しかし僅かにレンズ越しの瞳が冷たくなっている。
「ルシオン様の気持ちを考慮出来ないのなら距離を置いてください」
そう一言だけ言い残してその場を去った。
「いや、エドちゃんこわー。普通殿下にあそこまで言うかね。
………殿下?」
皇子という身分があるからこそ相手の気持ちを慮らなければならないのは確かだ。しかし皇族相手にかなり行き過ぎた言い方だった。
それでもエイデンは強く拳を握りしめるだけだ。
まるで返す言葉もないとでも言うように。
「…なあ、」
「はい」
「………」
やっと口を開いたと思ったらまたまた黙り込んでしまうし、ゲイレンはそろそろこの状況に飽きてきた。
「殿下、オレそろそろ治療棟に………」
「『ユーリ』って知ってるか?」
「ゆーり?」
「知らないならいい」
「ええ!?ちょっと待ってよ!ユーリって何!?誰!?気になるんだけど!」
エイデンは一人で会話を終わらせてスタスタ帰ってしまった。
「えー、マジで何?ユーリって誰なの?リトちゃん知ってる?」
「知らないですね。少なくとも神殿の周辺にはいないと思いますよ」
試しに補佐の神官に聞いてみても首を傾げるだけだ。有名人というわけではないらしい。
「まあどうせベビたん関係なんだろうけどさー」
勤勉で努力家。熱心に神殿に通う厚い信仰心の持ち主で、優秀な兄を献身的にサポートする器の広さも兼ね備えている。
世間でのエイデンの評価はそんなところだろう。
誤りではないが彼を形成する一番大きな要素が抜けている。
エイデンという人間を語るのにルシオン・エリューストという存在は欠かせないことを彼に近しい者は皆知っていた。
「あんなに仲良しなのに何でいつも焦ってるのかなーって思ってたけど、もしかしてそのユーリちゃんって子が原因なのかね。んー、気になる!」
「余計なことしないでくださいよ。皇室とは程よい距離感で!」
「あははっ、分かってないから安心して!」
「なんっにも安心できない!」
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