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第二章 少年期編
第十八話 本物の無気力の新たな友人(9)
ハクの回し蹴りをもろに受けた隊長さんは家屋の壁を突き破りそのまま出てこない。
あの店って………まあ逆に安心だな。
「隊長ーーー!!」
「隊長が吹っ飛んだ!!」
オロオロしながらも助けには行かない部下さん。
「なんなんだあの子ども!!すげえ!」
「やるなあのチビ!スカッとしたー!」
爛々とした瞳でハクを褒めている部下さん。
隊長さんすっごい嫌われてる…。ちょっと可哀想になってきた。俺もあんまり好きにはなれないけど。
「ルシオン大丈夫ですか?よしよし。怖かったですねぇ」
ハクが抱き締めてあやしてくれる。俺は痛くも痒くもないけどさ。酷いこと言われたのはハクなんだぞ。
弟の心配する前にもっと自分のこと気にしないと。
「おいハク。お前何してくれてんだ」
「おじさんの店でしたか。ごめんなさい」
先程隊長さんが開けた穴から昼間に会ったおじさんが出てくる。ハクやティティはおじさんっていうけど多分この人うちの父様とそんなに変わらない年だと思う。
左手で隊長さんの首根っこを掴んで軽々持ち上げている様からは老いなんか一切感じない。
「ったく。皇室騎士団とかまた大層なもんに手出しやがって。ほらよ、返す」
おじさんは丸めた紙屑のように隊長さんを放り投げた。
「「「「うわーーー!!!」」」」
部下さん達は何故か全員揃ってそれを避けた。
「ぐふっ」
隊長さんは壁の次は硬い道路に打ち付けられ完全に意識を失う。
同情を誘う光景だがおじさんは全く興味を示さない。
それどころか俺の方を見て顔を顰めた。
「まだこんなとこにいるのか。お前の父親は何して………」
───「ルシオーン!!!!」
この雄叫び。間違いない。
「とうさ、ま………」
こういうのを『目にも留まらぬ速さ』と言うんだろう。
気付いたら台車の上から搔っ攫われて父様の腕の中にいた。
「遅くなってごめんな!怪我してないか!?怖いことなかったか!?寂しくなかったか!?父様はもう寂しくて寂しくて………」
大号泣だ。これじゃあどっちが迷子か分かんないぞ。
「返してください!!」
大きな声に肩が揺れた。
ハク怯がむことなく父様を見上げて声を上げる。
「その子は僕の弟なんです。返してください」
パッと両腕を広げるハク。
父様相手にここまで堂々と立ち振る舞える人は大人でもそういない。
対して父様は………
「ああん?」
滅茶苦茶大人げない感じで睨み返した。さすがのハクも一歩後退る。
「か、返してください!」
それでも負けじと声を張った。『お兄ちゃん』ってすごいな。
とはいえこういう時の父様の器がとんでもなく小さくなることも知っているので。
「だめ」
取り敢えず手のひらでいつも以上に血走っている赤い瞳を隠す。
「る、ルシオン?」
「睨んだらダメ。俺のお兄ちゃんだから」
「………?」
まずは父様に威嚇をやめさせて。
それからハクに色々説明を………
「ハク、この人父様」
「父様…?」
よし。これで任務完了。
「簡潔すぎんだろ」
「お前はこんなところで何してるんだ」
「働いてんだよ。てか店の修繕費弁償しろよ」
父様とおじさんが急に会話を始めた。どうやら知り合いだったらしい。雰囲気が似ている二人だとは思っていたが世間は本当に狭いな。
「なあ、あの人って………」
「ああ。てことはあのやたらオーラのある子どもが………」
騎士さん達は漸く俺の正体に気付いたらしい。父さんに抱っこされている俺を凝視している。
「つーかあの片腕の人も見覚えある気がするんだよなぁ」
「「「それな」」」
「てか思ったんだけどこの状況ちょっとまずいんじゃないか?」
「何がだ?」
「だって気絶した隊長を放置してるんだぜ?このままじゃ間違いなく処分されるぞ」
「「「たしかに!」」」
「よし。お前が運べ」
「いやここは公平にじゃんけんだろ」
道路で円になって胡坐をかき談笑を始める四人。
あの人達はちゃんと騎士をやれているんだろうか?ブンブン剣振って早朝訓練にも参加して身体作りとかもしてるんだろうか?興味ないけど疑問には思う。取り敢えず騎士道精神とかから学び直した方がいいと思う。
───「ごめんなさい」
突然の謝罪に俺は勿論父様とおじさんまでハクを見た。
ハクはやっぱり真顔で考えていることが読めない。
「てっきりルシオンは家族に捨てられたんだと思って連れてきてしまいました。ごめんなさい」
でも多分ハクの言葉に嘘はない。嘘を吐ける性格じゃない。
つまり本気で悪いと思って謝罪しているということだ。
「ルシオン?下りるのか?」
父様の胸を軽く押すと名残惜しそうに放してくれた。
「ごめんなさい」
自分の足で立って頭を下げる。
「なんでルシオンが謝るんですか?」
なんでって………勝手に台車乗ったし面倒で流されるままになってたし俺のせいで誘拐犯扱いされたし挙げたらキリがないと思うんだけどハクは首を傾げたまま律儀に俺の返事を待っている。
「あと、ありがとう」
「今度はお礼ですか?」
こっちにも心当たりがないらしい。天然とか通り越してる。自分のことに関して鈍すぎやしないか。
こういう人にはなるべく分かりやすく端的に。
「助けてくれてありがとう、お兄ちゃん」
「………!」
俺の言葉にハクは一瞬目を見開いて。
「えへへ、」
花が開くように笑った。
おお。かーわいい。
すぐにまたいつもの真顔に戻ってしまったけれど心なしか声が浮ついている。
「僕、まだルシオンのお兄ちゃんですか?」
「うん。ずっと」
ハクはキュっと俺の手を握ってその場で変な踊り?足踏み?みたいなのをした。
るんたっるんたっ。そんなおかしな効果音が聞こえてきそう。
「………」
意外だったのがお父さんが何も言わなかったこと。
てっきりすぐに引き剝がしてくると思ったんだけど父様も成長したんだな。
「ンギギギギギギッ」
何処からか激しすぎる歯ぎしりの音が聞こえてくるんだけど気のせいにしとこう。
あの店って………まあ逆に安心だな。
「隊長ーーー!!」
「隊長が吹っ飛んだ!!」
オロオロしながらも助けには行かない部下さん。
「なんなんだあの子ども!!すげえ!」
「やるなあのチビ!スカッとしたー!」
爛々とした瞳でハクを褒めている部下さん。
隊長さんすっごい嫌われてる…。ちょっと可哀想になってきた。俺もあんまり好きにはなれないけど。
「ルシオン大丈夫ですか?よしよし。怖かったですねぇ」
ハクが抱き締めてあやしてくれる。俺は痛くも痒くもないけどさ。酷いこと言われたのはハクなんだぞ。
弟の心配する前にもっと自分のこと気にしないと。
「おいハク。お前何してくれてんだ」
「おじさんの店でしたか。ごめんなさい」
先程隊長さんが開けた穴から昼間に会ったおじさんが出てくる。ハクやティティはおじさんっていうけど多分この人うちの父様とそんなに変わらない年だと思う。
左手で隊長さんの首根っこを掴んで軽々持ち上げている様からは老いなんか一切感じない。
「ったく。皇室騎士団とかまた大層なもんに手出しやがって。ほらよ、返す」
おじさんは丸めた紙屑のように隊長さんを放り投げた。
「「「「うわーーー!!!」」」」
部下さん達は何故か全員揃ってそれを避けた。
「ぐふっ」
隊長さんは壁の次は硬い道路に打ち付けられ完全に意識を失う。
同情を誘う光景だがおじさんは全く興味を示さない。
それどころか俺の方を見て顔を顰めた。
「まだこんなとこにいるのか。お前の父親は何して………」
───「ルシオーン!!!!」
この雄叫び。間違いない。
「とうさ、ま………」
こういうのを『目にも留まらぬ速さ』と言うんだろう。
気付いたら台車の上から搔っ攫われて父様の腕の中にいた。
「遅くなってごめんな!怪我してないか!?怖いことなかったか!?寂しくなかったか!?父様はもう寂しくて寂しくて………」
大号泣だ。これじゃあどっちが迷子か分かんないぞ。
「返してください!!」
大きな声に肩が揺れた。
ハク怯がむことなく父様を見上げて声を上げる。
「その子は僕の弟なんです。返してください」
パッと両腕を広げるハク。
父様相手にここまで堂々と立ち振る舞える人は大人でもそういない。
対して父様は………
「ああん?」
滅茶苦茶大人げない感じで睨み返した。さすがのハクも一歩後退る。
「か、返してください!」
それでも負けじと声を張った。『お兄ちゃん』ってすごいな。
とはいえこういう時の父様の器がとんでもなく小さくなることも知っているので。
「だめ」
取り敢えず手のひらでいつも以上に血走っている赤い瞳を隠す。
「る、ルシオン?」
「睨んだらダメ。俺のお兄ちゃんだから」
「………?」
まずは父様に威嚇をやめさせて。
それからハクに色々説明を………
「ハク、この人父様」
「父様…?」
よし。これで任務完了。
「簡潔すぎんだろ」
「お前はこんなところで何してるんだ」
「働いてんだよ。てか店の修繕費弁償しろよ」
父様とおじさんが急に会話を始めた。どうやら知り合いだったらしい。雰囲気が似ている二人だとは思っていたが世間は本当に狭いな。
「なあ、あの人って………」
「ああ。てことはあのやたらオーラのある子どもが………」
騎士さん達は漸く俺の正体に気付いたらしい。父さんに抱っこされている俺を凝視している。
「つーかあの片腕の人も見覚えある気がするんだよなぁ」
「「「それな」」」
「てか思ったんだけどこの状況ちょっとまずいんじゃないか?」
「何がだ?」
「だって気絶した隊長を放置してるんだぜ?このままじゃ間違いなく処分されるぞ」
「「「たしかに!」」」
「よし。お前が運べ」
「いやここは公平にじゃんけんだろ」
道路で円になって胡坐をかき談笑を始める四人。
あの人達はちゃんと騎士をやれているんだろうか?ブンブン剣振って早朝訓練にも参加して身体作りとかもしてるんだろうか?興味ないけど疑問には思う。取り敢えず騎士道精神とかから学び直した方がいいと思う。
───「ごめんなさい」
突然の謝罪に俺は勿論父様とおじさんまでハクを見た。
ハクはやっぱり真顔で考えていることが読めない。
「てっきりルシオンは家族に捨てられたんだと思って連れてきてしまいました。ごめんなさい」
でも多分ハクの言葉に嘘はない。嘘を吐ける性格じゃない。
つまり本気で悪いと思って謝罪しているということだ。
「ルシオン?下りるのか?」
父様の胸を軽く押すと名残惜しそうに放してくれた。
「ごめんなさい」
自分の足で立って頭を下げる。
「なんでルシオンが謝るんですか?」
なんでって………勝手に台車乗ったし面倒で流されるままになってたし俺のせいで誘拐犯扱いされたし挙げたらキリがないと思うんだけどハクは首を傾げたまま律儀に俺の返事を待っている。
「あと、ありがとう」
「今度はお礼ですか?」
こっちにも心当たりがないらしい。天然とか通り越してる。自分のことに関して鈍すぎやしないか。
こういう人にはなるべく分かりやすく端的に。
「助けてくれてありがとう、お兄ちゃん」
「………!」
俺の言葉にハクは一瞬目を見開いて。
「えへへ、」
花が開くように笑った。
おお。かーわいい。
すぐにまたいつもの真顔に戻ってしまったけれど心なしか声が浮ついている。
「僕、まだルシオンのお兄ちゃんですか?」
「うん。ずっと」
ハクはキュっと俺の手を握ってその場で変な踊り?足踏み?みたいなのをした。
るんたっるんたっ。そんなおかしな効果音が聞こえてきそう。
「………」
意外だったのがお父さんが何も言わなかったこと。
てっきりすぐに引き剝がしてくると思ったんだけど父様も成長したんだな。
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