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異世界に行きたい
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異世界に行きたい。
そう思ったのはネット小説にはまっていたときだろう。
自分も異世界に行って新しい人生を歩めたらどんなにいいだろうか。
こんなクソみたいな世界から抜け出して、違う世界で過ごせたらどんなに良いだろうか。
考えただけで身震いがしたが、本気で行こうとは考えなかった。
そうしなかったのは、まだこの世界との繋がりを断ちたくないと思っていたからだ。
友人。家族。将来。希望ーー
それらがあったからまだこの世界に留まってもいいと思っていた。
しかし、高校受験に失敗した俺に、それはもうない。
家族からは見放され、将来は霧散し、希望は朽ち果て、友人も、ゴールがもう見えてるかのように走っていき、自分はそれを、ただ後ろから眺めることしか出来なかった。
だから、俺はこの世界からいなくなることを決意した。
今の季節は春。
桜の花びらが降りしきる満天の桜がその季節を知らせ、鶯(うぐいす)がその知らせを祝福しているように鳴いていた。
春とは、基本的にあらゆる文学作品において明るい描写で描かれることが多い。
まあ、当然だろう。新しい門出を祝う季節であり、新しい出会いをするような季節だ。そう、このように門出や出会いといった「始まり」を意味する言葉がこの季節にはよく使われる。
しかし、知っているだろうか? 「始まり」には「終わり」があるということを。
つまり、この春というとても明るい季節でさえ、対極である闇の部分が存在する。
例えば、春は季節の変わり目。 寒い気候から暖かい気候へ変化しようと暖かい日と寒い日を繰り返す(これを三寒四温という)季節。そうなってくると、恒温動物である人は、身体の調子をととのえようとその温度に合わせるように上がったり下がったりを繰り返し、人の身体は不安定に乱れるようになる。
結果、自律神経の乱れを引き起こし、頭痛や下痢といった症状を引き起こすのだ。
また、 この季節にはさっきも言ったが新年度や新学期といったものが付き纏い、新しい環境が自分を苦しめることがある。
結果、ストレスが大きく溜まりやすい上に季節の変わり目という自律神経の乱れでリラックスすることができないダブルパンチが襲い掛かり、年間自殺率が最も多い、という結果が導かれる。
え、お前さっきから何が言いたいだって?
んじゃ、単刀直入に言うと…
満天の桜が並び、新しい制服を着た若人たちが通るような道を、俺のような黒の綿製のズボンに灰色のパーカーを着て、そのパーカーのポケットに手を突っ込んでいる闇の住人が通っても何も問題がないということだ。
いや、だって、さっきの闇の部分も春の風物詩って言うなら俺だってそうだ。受験に失敗してこの世界に愛想が尽きたから他の世界に転生しようとしている人間。
うん、問題ない問題ない、全然問題ない。
あれ、でも何故だろう。周りからの目線が妙にするな。特に若人たちからの目線がゴミを見る目なんですが。
あ、ヒソヒソ話をしてるやつもいるな。おい、指を刺すな、指を!
まあ、こんな屁理屈を心の中で呟いても、周りの人間が納得するわけではないことぐらいわかっているが、俺はそんな屁理屈を言いながらこの道を通らないと気が持たない。俺だって好きでこんな場違いな場所を歩いているわけじゃない。ここを通らないと目的地である10階建てマンションにつけないのだ。
ネットで書いてあった異世界に行く方法にはそのマンションがどうしても必要なのだ。
え、なんでささっと死なないんだって?
お前ら、勘違いするなよ。俺は別に死にたいわけじゃない。異世界に行きたいのだ。確かに死ねば、この世界から居なくなることは出来るが、異世界に行けるかはわからない。もし俺が自殺して神とやらが「異世界? そんなもんないよ」って言ったらどうする? もう絶対に天国か地獄に行かなければならないではないか。
そんなのは絶対に嫌だ。俺は異世界に行って美少女と異世界ライフを過ごすんだ!
そんなことを考えてるうちに上鍛冶 銀(かみかじ ぎん)は目的地に着いていた。
そう思ったのはネット小説にはまっていたときだろう。
自分も異世界に行って新しい人生を歩めたらどんなにいいだろうか。
こんなクソみたいな世界から抜け出して、違う世界で過ごせたらどんなに良いだろうか。
考えただけで身震いがしたが、本気で行こうとは考えなかった。
そうしなかったのは、まだこの世界との繋がりを断ちたくないと思っていたからだ。
友人。家族。将来。希望ーー
それらがあったからまだこの世界に留まってもいいと思っていた。
しかし、高校受験に失敗した俺に、それはもうない。
家族からは見放され、将来は霧散し、希望は朽ち果て、友人も、ゴールがもう見えてるかのように走っていき、自分はそれを、ただ後ろから眺めることしか出来なかった。
だから、俺はこの世界からいなくなることを決意した。
今の季節は春。
桜の花びらが降りしきる満天の桜がその季節を知らせ、鶯(うぐいす)がその知らせを祝福しているように鳴いていた。
春とは、基本的にあらゆる文学作品において明るい描写で描かれることが多い。
まあ、当然だろう。新しい門出を祝う季節であり、新しい出会いをするような季節だ。そう、このように門出や出会いといった「始まり」を意味する言葉がこの季節にはよく使われる。
しかし、知っているだろうか? 「始まり」には「終わり」があるということを。
つまり、この春というとても明るい季節でさえ、対極である闇の部分が存在する。
例えば、春は季節の変わり目。 寒い気候から暖かい気候へ変化しようと暖かい日と寒い日を繰り返す(これを三寒四温という)季節。そうなってくると、恒温動物である人は、身体の調子をととのえようとその温度に合わせるように上がったり下がったりを繰り返し、人の身体は不安定に乱れるようになる。
結果、自律神経の乱れを引き起こし、頭痛や下痢といった症状を引き起こすのだ。
また、 この季節にはさっきも言ったが新年度や新学期といったものが付き纏い、新しい環境が自分を苦しめることがある。
結果、ストレスが大きく溜まりやすい上に季節の変わり目という自律神経の乱れでリラックスすることができないダブルパンチが襲い掛かり、年間自殺率が最も多い、という結果が導かれる。
え、お前さっきから何が言いたいだって?
んじゃ、単刀直入に言うと…
満天の桜が並び、新しい制服を着た若人たちが通るような道を、俺のような黒の綿製のズボンに灰色のパーカーを着て、そのパーカーのポケットに手を突っ込んでいる闇の住人が通っても何も問題がないということだ。
いや、だって、さっきの闇の部分も春の風物詩って言うなら俺だってそうだ。受験に失敗してこの世界に愛想が尽きたから他の世界に転生しようとしている人間。
うん、問題ない問題ない、全然問題ない。
あれ、でも何故だろう。周りからの目線が妙にするな。特に若人たちからの目線がゴミを見る目なんですが。
あ、ヒソヒソ話をしてるやつもいるな。おい、指を刺すな、指を!
まあ、こんな屁理屈を心の中で呟いても、周りの人間が納得するわけではないことぐらいわかっているが、俺はそんな屁理屈を言いながらこの道を通らないと気が持たない。俺だって好きでこんな場違いな場所を歩いているわけじゃない。ここを通らないと目的地である10階建てマンションにつけないのだ。
ネットで書いてあった異世界に行く方法にはそのマンションがどうしても必要なのだ。
え、なんでささっと死なないんだって?
お前ら、勘違いするなよ。俺は別に死にたいわけじゃない。異世界に行きたいのだ。確かに死ねば、この世界から居なくなることは出来るが、異世界に行けるかはわからない。もし俺が自殺して神とやらが「異世界? そんなもんないよ」って言ったらどうする? もう絶対に天国か地獄に行かなければならないではないか。
そんなのは絶対に嫌だ。俺は異世界に行って美少女と異世界ライフを過ごすんだ!
そんなことを考えてるうちに上鍛冶 銀(かみかじ ぎん)は目的地に着いていた。
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