Break the World

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1■ ー you and me ー

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 「 い く ら 何 で も 暑 過 ぎ … 。 … 水 袋 貸 し て 」
 
午 後 の 日 差 し が 身 を 灼 く 中 、 隣 を 歩 く 少 女 が 今 に も 死 に そ う な 様子 で 呪 詛 を 延 々 と 漏 ら し て い る 。
 
 
そ ん な 彼 女 を 傍 目 で 見 て だ ら し な い と 文 句 の 一 つ で も 言 っ て や ろう か と 思 っ た が 、 自 分 の 足 元 に 滴 り 落 ち た 汗 を 見 る や 否 や そ ん な気 も 共 に 流 れ て 行 っ て し ま っ た 。
 
 
 「 今 日 の 気 温 は 5 2 度 ら し い よ 。 あ 、 一 口 だ け だ か ら ね 」
 
 
こ の や り 取 り も 何 回 繰 り 返 し た か わ か ら な い 。 き っ と ま た 一 口 で半 分 程 を 消 費 さ れ る の だ ろ う 。
 
 
し か し 文 句 を 言 っ た 瞬 間 に 水 は 全 部 飲 み 干 さ れ 、さ ら に 彼 女 の 機嫌 が 悪 く な る だ け で あ る 事 は も う 経 験 済 み な の で や は り 何 も 言 わず に 辺 り の 景 色 を 適 当 に 眺 め る 。

 
今 か ら 1 0 0 年 前 に は 海 と 陸 が 7 : 3 の 割 合 で 存 在 し 、 海 で は 多種 多 様 の 生 物 が 悠 悠 と 生 活 し 、 陸 で は 木 々 や 草 花 が 青 々 と 生 い 茂っ て い た と 研 究 塔 の 歴 史 学 で 教 わ っ た 事 を 思 い 出 す が 、 そ れ を 信じ る に は こ の 世 界 は 残 酷 す ぎ た 。

 
 「 海? 1 割 も 残 っ て な い じ ゃ ん 。陸? 砂 し か な い ん だ け ど … 」

 
 「 何 ブ ツ ブ ツ 言 っ て ん の ?暑 さ で 頭 お か し く な っ た ? 」

 
い つ の 間 に か 俺 自 身 も 呪 詛 を 漏 ら し て い た ら し い 。

 
突 然 声 を 掛 け ら れ 現 実 に 戻 っ て く る が 、 彼 女 の 右 手 に 持 つ 水 袋 の残 量 が 3 割 以 下 で あ ろ う こ と を 認 識 し た 瞬 間 、 俺 は 再 度 一 人 の 世界 へ と 戻 っ て い っ た 。

 
 「 … 支 柱 ま で 後 ど の く ら い 掛 か り そ う ? 」

 
し ば ら く 歩 い て い る と 、 申 し 訳 な さ そ う な 声 が 鼓 膜 を 震 わ せ て きた 。 普 段 は 気 が 強 く プ ラ イ ド が 高 い 彼 女 に も 、 罪 悪 感 と い う モ ノは 備 わ っ て い る ら し い 。

 
『 契 約 』 を 交 わ し て か ら お よ そ 6 年 に な る だ ろ う が 、 こ ん な 彼 女の 姿 を 見 た 記 憶 を 数 え る に は 両 の 指 で 充 分 に 事 足 り る 。 こ れ は 彼女 が そ れ く ら い 失 敗 を し な い 証 左 で も あ る の だ が 。

 
 「 さ っ き 『 1 』 の 磁 界 線 を 跨 い だ か ら … え え と … … 」

 
革 の リ ュ ッ ク か ら 小 さ な 機 械 を 取 り 出 し て マ ッ プ を 空 中 に 投 影 する 。

 
 「 俺 達 の 現 在 地 は 凡 そ 2 0 1 支 柱 か ら 南 に 2 0 k m の 地 点 だ ね 。 … モ ラ ト リ ア ム さ え 完 了 す れ ば こ ん な 機 械 に 頼 ら な く て も い い の に 」

 
磁 界 線 の 影 響 に よ り 使 う 度 に 磁 界 値 を 入 力 し な く て は な ら な い が 、 そ の か わ り に 現 在 地 と 『 敵 』 の 位 置 や 数 、 脅 威 度 な ど も 表 示 し て く れ る 利 便 性 を 考 え れ ば お 釣 り が 来 る ほ ど の 性 能 だ ろ う 。
 

最 後 の 一 言 が 悪 い 空 気 を 呼 ん だ の か 、 彼 女 の 表 情 が 少 し 曇 る 。

 
 「 そ の … バ イ ク … … ご め ん 」

 
 「 気 に し て な い よ 。 さ 、 奴 ら が 来 る 前 に 急 ご う 」

 
短 い 一 言 を 放 っ て 再 び 歩 を 進 め る 。

 
砂 面 の 大 地 を 移 動 す る の は 基 本 的 に は 歩 き だ が 、 一 部 の も の 好 きは そ の 限 り で は な い 。
 
 
自 分 で 廃 車 を レ ス ト ア す る 者 や 、 パ ー ツ を 組 み 合 わ せ て 新 た な 乗り 物 を 組 み 上 げ る 猛 者 な ど 、 男 で あ れ ば 誰 も が 一 度 は ト ラ イ す る 。


特 に 重 要 な の は 砂 の 上 を 安 定 的 に 走 行 で き る タ イ ヤ で あ る 。 通 常の 装 備 で は 空 転 し て し ま う か ら だ 。 し か し 、 酸 素 を 生 み 出 す 樹 木は と て も 貴 重 で あ り 、 中 央 管 理 局 の 下 で 厳 重に 管 理 さ れ て い る 。


つ ま り ゴ ム の 木 か ら ラ テ ッ ク ス を 採 取 で き る ハ ズ も な く 、 タ イ ヤは 過 去 の 遺 物 を 流 用 す る し か な い 。 廃 棄 さ れ て い る ゴ ム は 1 0 0年 以 上 前 の も の で あ る 為 に 例 外 な く 劣 化 し て お り 、 ま る で 使 い 物に な ら な い 。 そ の た め 、 誰 も が 一 度 は 夢 見 る マ シ ン 作 り は そ の 殆ど が 挫 折 に 終 わ る 。
 
 
ま だ 使 用 で き る ゴ ム を 保 管 し て い る 自 称 プ ロ は レ ス ト ア し た も のな ど を 市 場 に 流 し て 生 計 を 立 て て い る が 、 そ の 価 格 は と て も 一 般人 に 買 え る 様 な 額 で は な か っ た 。
 

そ れ に 、 中 央 管 理 局 の 眼 が 光 る 市 場 に 流 れ る 以 上 は 避 け 通 れ な いの が 排 気 量 の 問 題 で あ る 。 た だ で さ え 超 温 暖 化 が 現 在 進 行 形 で 進ん で い る 。

 
つ ま り は ガ チ ガ チ の 規 制 に よ り 、 総 排 気 量 1 5 0 c c 以 下 の エ ンジ ン 以 外 は 売 買 が 一 切 禁 止 さ れ て い る の で あ る 。
 

こ れ に 違 反 し た 排 気 量 の バ ギ ー を 裏 取 引 し た 男 が 、 二 度 と 姿 を 見せ な く な っ た 事 は 記 憶 に 新 し い 。


こ の 排 気 量 以 上 の マ シ ン を 手 に 入 れ た い の で あ れ ば 、 そ れ は も う自 分 で 作 る し か な い 。

 
 「 1 3 0 0 c c で タ イ ヤ も ま だ ま だ 使 え た の に … ご め ん … … 」
 
 
何 を 隠 そ う 、 彼 女 が 先 程 「 私 に も 運 転 さ せ な さ い よ ! 」 と 言 い 出し 、 盛 大 に コ ケ て ク ラ ッ チ を 損 傷 さ せ て し ま っ た の だ 。 一 か ら 組み 上 げ た 俺 で も 、 流 石 に 工 具 や 替 え の パ ー ツ が 無 け れ ば 治 せ な い 。 砂 漠 の ど 真 ん 中 で 3 0 0 k g の 鉄 塊 と 成 り 果 て た 愛 車 は 破 棄 せ ざ る を 得 な か っ た 。
 

 「 し ょ う が な い よ 。 い く ら 脅 威 度 が 低 く て も 単 純 な 回 路 の 個 体 は 侵 入 し て く る ん だ か ら 。 こ れ 以 上 ス ピ ー ド 落 と す の は 危 険 で し ょ 」
 
 
「 … そ う ね … … あ り が と 」
 
 
今 に も 消 え 入 り そ う な 声 で お 礼 を 言 わ れ る が 、 こ れ が 原 因 で 後 の制 限 解 除 や 『 履 行 』 に 影 響 が 出 て し ま っ て は 目 も 当 て ら れ な い 。
 
 
こ の 空 気 を 換 え る た め に 俺 は 話 の 腰 を 無 理 や り 折 っ た 。

 
 「 さ ! 支 柱 ま で 後 少 し だ よ ! 」 

 
視 界 に は 支 柱 は 見 え て い る 。 し か し 塔 自 体 が 途 轍 も な く 長 大 で ある 為 に 、 す ぐ 近 く に あ る と 錯 覚 し て し ま う の だ 。 歩 け ど 歩 け ど 一向 に サ イ ズ の 変 わ ら な い 支 柱 が 、 漸 く そ の 背 を 伸 ば し 始 め た の はお よ そ 3 時 間 の 後 で あ っ た 。





支 柱 の 内 部 に 入 っ た 瞬 間 、 散 々 嗅 ぎ 慣 れ た ア ル コ ー ル の 臭 い が 肺を 満 た す 。 そ れ と 同 時 に 自 ら の 脳 内 で 、 あ の 記 憶 が フ ラ ッ シ ュ バッ ク す る の を 俺 は 止 め る 事 が 出 来 な か っ た 。
 
  

そ れ は 忘 れ た い と 何 度 願 っ て も 決 し て 忘 れ ら れ な か っ た 記 憶 ― 。
 
 
そ れ は 忘 れ た い と 何 度 も 願 う 度 、 よ り 一 層 強 く 記 憶 に 定 着 す る 記憶 ― ― 。
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