ネトラレクラスメイト

八ツ花千代

文字の大きさ
49 / 55

49話

しおりを挟む
 議事堂で愛しの鬼頭日香莉アイドルと二人きりに。
 チャンス到来と勘違いした俺は告白しようと試みる。
 しかし、話の最中に彼女に好きな人がいることが判明。

 ――それがなんだ!!!

 それはそれ、これはこれ。
 好きな気持ちは揺らがない。
 カッコイイ言葉かもしれないけど、一歩間違うとストーカーだ。
 迷惑をかけないよう片思いでいよう、うん……。

 どうせもとの世界には帰れないんだ。
 彼女も昔の男の思いでは箱の奥にしまうだろう。
 頼むからしまってくれ。
 お願いします……。



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 自転車部の菊池潤奈サイクラーから、自慰行為がマンネリ化したので対策を考えて欲しいと依頼を受けた。
 男に相談する内容じゃない。
 しかし相談できるのは秘密を知っている俺だけなのかもしれない。
 なので話だけでも聞いてみることにした。



 ここは彼女の自宅。
 昼食後にお邪魔すると伝えてある。
 玄関ドアが開き、彼女が姿を見せた。

「いらっしゃい!」

 いつもの半袖短パンのラフな服装じゃない。ブラウスとスカートだ。
 こう見ると普通の女子だな。

 部屋の間取りはどの家も同じ、フローリングのワンルーム。
 けれど、玄関のサイズだけは違う。
 自転車が置けるように広くしてもらったようだ。

 室内にはベッド、タンス、ドレッサー、テーブル、ソファーが置いてある。
 飾りつける趣味はないらしく、とてもサッパリとした雰囲気だ。

「さあさあ座って」

 俺を引っ張るようにソファーに座る。肩が密着するほど近い。

「部屋に男子を招いたのは初めてだよ、もちろんもとの世界でもね」
「それは光栄だね」
「へへっ」

 小麦色の顔が笑っている。

「で! で! マンネリ防止、考えてくれた?」
「その前に、クラス会議で話した件を詰めよう」
「なんの話?」
「装甲車を作るって話!」
「あ~思い出した、ウンウンまかせて」

 コイツ、完全に忘れてたな。

 俺はもってきた布袋から紙とシャーペンを取り出す。
 紙は亀ケ谷暁子エセ京都の店から。シャーペンは玩具の油科輝彦ネガティブに依頼した。

「作りたいのはキャンピングカーのように車内で生活できる車だ」
「外に出るのは危険だもんね」
「そのとおり、作れそうか?」

 彼女は目の前の空間をキョロキョロ見ている。
 たぶん製作可能なリストにあるか確認しているのだろう。

「ウン、あるよ」
「その車はカスタマイズできるか?」
「できそうだね」
「まずは外装の変更。なるべく硬くて軽い素材がいい」
「セルロースナノファイバーがいいみたい」
「じゃあソレで。出先でパンクの修理はできないから車輪は八つ。悪路も走れるように大きめのタイヤで」

 俺はイメージした絵を紙に書いている。

「軍用タイヤがいいみたい。ノーパンクだって」
「窓は小さくして、ガラスは防弾がいいな」
「もうキャンピングカーじゃないね」
「浅い川くらいは渡れる防水性が欲しい」
「それって車かなぁ」
「上には軽機関銃をつけてくれ」
「もう戦車だね」

 たしかに俺の書いた絵は戦車にも見える。

「無理か?」
「まって……、ウン作れそう。でも弾はダメっぽい」
「そのほうがいい。なかのインテリアはどんな設備がある?」
「キッチン、トイレ、洗面台かな」
「どのくらい車内で暮らせるんだろう」
「水タンクは大人二人で三日くらいかな」
「ん~……」
「どうしたの?」
「最低でも二週間は暮らせるようにしたい。水かぁ……」

 彼女が俺の顔をのぞき込む。

苦瓜にがうり君はいつもそうやって村のこと考えてくれてたんだね」
裕之ひろゆきに相談してたさ」
「それでも凄いよ。そうだ、水は三門みかどさんにお願いしよう」

 アイツはパートナーの三門志寿漫画家がいっしょじゃないと嫌がりそうだな。
 説得はしてみよう。

三門みかどが不在のあいだ、村の水をどうするか……。気仙けせんに浄水場を作れるか確認するのが先だな」

 立ち上がろうとすると、腕を引っ張られる。

「帰るの?」
「ああ、確認しにいこうかと」
「ボクのお願いは?」

「……あぁ! ごめん忘れてた」

 焼いたお餅のようにぷく~っと頬を膨らませる。

「怒るなよ、いいモノもってきたから」

 布袋から取り出しテーブルのうえに置く。

「これはなに?」
「マッサージ機だよ」

 親指ほどの大きさのカプセルと無線リモコンだ。
 充電式の電池と充電器もある。
 これはバイブと呼ばれる大人のおもちゃだ。

 彼女はバイブを手に取ると不思議そうな表情で眺めている。
 俺はリモコンのスイッチを押した。
 ブーンという機械音とともにバイブが振動を始める。

「凝っている肩にあててみな」
「あ~きもちいいね」
「だろっ」

 リモコンのスイッチをオフにした。
 機械音は止み、振動がおさまる。

「プレゼントは嬉しいけど、お願いとは関係ないような?」
菊池きくちはニブイ子だねえ」
「なにおっ!」
「それをキモチイイ場所にあてるんだよ」

 ハッと気づいた表情になる。

「理解したようだな。じゃあ後はひとりで楽しむんだな」
「待って!」
「ん?」

 顔が真っ赤だ。

「見てて……」
「はぁっ?」
「刺激がね、足りないの、あの日のことが忘れられなくて……」
「あ~っ……」

 新たな性癖の扉を俺が開いたようだ。
 見られながらスルと感じる体になったらしい。

 テーブルを挟んで、ソファーの向かい側がベッドだ。
 彼女はソファーから立ち上がると、ベッドに移動し、腰を下ろす。
 そこは俺の正面だ。


 物欲しそうな目で俺を見ている。
 しかたないな……。
 リモコンのスイッチを押した。
 願いが通じたのが嬉しいのか、ニコッと微笑んだ。

 彼女はバイブを首筋にあてた。
 マッサージ機なのでそこでは感じないだろう。

 恥ずかしそうな表情で、ゆっくりとバイブを下ろしてゆく。
 視線はずっと俺をみている。

 緩やかな山を登り、バイブが頂上に到着する。

「あっ……」

 山頂にある突起物がキモチイイらしい。
 彼女は円を描くように先端の周囲をなぞる。

「んっ……」

 ときおり、背中がぴくっと痙攣けいれんした。

「ねぇ、苦瓜にがうり君」
「なに?」
「下の名前で呼んでいい?」
「いいよ」
「ありがとう翔矢しょうや

 名前なんて儀保裕之悪友幼馴染詩織くらいしか呼ばない。
 それほど親しくないヤツに呼ばれると心がくすぐったい。

 彼女は立ち上がるとスカートのファスナーを下ろした。
 ストンとスカートが床に落ち、健康的な小麦色の足があらわれる。
 いつも短パンなので、日焼けの跡がクッキリしている。
 焼けていない肌は思った以上に白く、眩しく感じられた。
 白い下着が小麦色の肌から浮き出て見える。

 彼女はふたたびベッドに座る。
 お腹にあてたバイブがゆっくりと降りていく。

 太もものあいだに入り込み、俺からは見えなくなった。

「んっ……」

 見えないもどかしさが俺の心をかき乱す。
 いたずら心が疼き、俺の手のなかにあるリモコンのスイッチを中にすると振動音が大きくなった。

「あっ、あっ」

 彼女のクチから洩れる吐息も増えてくる。
 ひざがゆっくりと開き、バイブの姿が確認できた。
 下着の上を滑るように動いている。

翔矢しょうや
「なに?」

 陶酔しているらしく返事はない。
 いつのまにか彼女のまぶたは閉じていた。

 ベッドのうえに置いていた右手が胸に移動する。
 乳房を包むように手が開く。
 大きく円を描くように手が動くと、柔肉が形を変える。

 湿った下着をなぞるようにバイブが往復していた。

翔矢しょうや翔矢しょうや

 俺はここにいるのに、目を閉じて名前を呼んでいる。
 まるで夢のなかに語りかけているようだ。

「んっ……、あっ……、翔矢しょうや、もっと……」

 バイブをもつ手が激しく上下し始めた。
 苦しそうに呼吸する。
 胸を触る手の動きも、より激しさを増す。

「あっ、あっ、あっ、翔矢しょうや、んっ、あっ」

 リモコンのスイッチを強にすると、さらに振動音が大きくなった。

「ああっ! ああっ! 翔矢しょうや、好きっ、もっとっ、翔矢しょうや、ああっ!」

 彼女はベッドに倒れこみ、仰向けになった。
 痛々しいほど胸を強く掴んでいる。
 快感をさらに高めるように、腰がうねうねとゆらめく。
 足はつま先立ちになり、背中が弓のようにそる。

「ああっ! ああっ! んんっ!! 翔矢しょうや翔矢しょうや、いくっ!!!」

 ベッドから腰が浮き上がり、ビクビクと痙攣けいれんしている。
 リモコンのスイッチをオフにすると振動音も止まる。
 手の力が失われたのか、バイブが手からこぼれ落ちた。


 ガクンと腰がベットに落ち、つま先立ちだった足も元にもどる。
 呼吸もゆるやかになり、吐息もおちついた。





 彼女は体を起こすと顔を両手で隠す。

「どうでしたか?」
「なにが?」
「だから、ボクの……自慰」
「えっろ!」

 枕が飛んできた。
 受け止めることもできたが、あえて顔であたりにいく。

「もっと! 気のきいた感想を求むっ!」
「細い首は美しく、大きすぎない胸はポイント高い。贅肉のない腰がくねっと曲がると色っぽく、小さなお尻が揺れるのはエッチだし、引き締まった太ももは見惚れるし、筋肉質のふくらはぎは健康的でとてもいい、濡れて透けた下着は刺激的だ」

 顔を隠したまま、もも上げランニングのように、その場で足踏みしている。

「もしかするとさあ、いつも俺の名前を呼びながらしてる?」
「ダメ?」
「声を聴いたヤツが誤解しそうだ」
「じゃあもっと大きな声でするね」
「確信犯かよ!」
「へへっ」

「スカートはかないと風邪ひくぞ」
「こっち来ない?」

 指の隙間から俺を見ている。

「行きません」
「ちぇっ。ホントに手を出す気はないんだね」
「ばあちゃんの遺言でね、結婚するまで肉体関係を結ぶのを禁じられてるんだ」
「ウソだね」
「バレたか」

 落ち着いたらしく、顔を隠していた手を下ろした。

鬼頭きとうさんのどこがいいの?」
「一目ぼれに理由なんてないさ」
「やっぱり顔かぁ~、カワイイもんね」

 落胆の溜息ためいきをつきながら床に視線を落とす。

「芸能界でも余裕で成功しそうな容姿。同じクラスになれた幸運に感謝だ」
「もうっ、告白してフラれちゃえ!」

 すでにフラれたようなものだが、好きな人がいるのは秘密なので返事がむずかしい。

「タイミングを測っているところさ」
「フラれたら教えてよ! 絶対だからね!」
「フラれるの前提かよ」
「ボクの体で慰めてあげるから、さ!」
「いりません」
「ちぇっ」

 クチを尖らせて拗ねてしまう。


 メンタルケアのスキルは、肉体関係をもつと癒されていた傷心や好感度が反転するらしい。
 けれど、俺にたいする彼女の好感度は下がった様子はない。
 彼女の自慰を見たわけだが、どうやら肉体関係とはみなされないようだ。
 それに、リモコンでバイブを操作しでも大丈夫。
 判定基準はなんだろう……。
 彼女で試すのは危険だな。自慰をのぞかれたショックは計り知れない。

「じゃそろそろ行くよ。気がむいたら、また見せてくれ」
「うん!」

 俺は中腰のまま菊池潤奈サイクラーの家を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった

黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった! 辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。 一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。 追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...