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第3章―生きる自信も死ぬ勇気もなくー
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ボクはキミを連れて またあの病院に来ていたんだ。
いやな予感がはずれてほしいと願って…
ボクのココロの中に ちょっとだけ…
ナニカが引っかかったような気がしてたから
「立花さん どうぞー」
「ここに座って 待っててな」
「うん」
尚緒は綾夏の頭をクシャってやって 診察室に入った。
「アルツハイマー症痴呆だね… キミはお兄さんだっけ?
この名前くらい聞いたことあるでしょ?少し説明しようか…」
「お願いします」
「この病気は主に女性に多く、物忘れの自覚が失われ、
神経病状が現れる例も少なくないんです
で、最終的に脳全体がおかされてしまいます」
「そしたらどうなるんですか?」
ボクはおそる おそる 医師に聞いてみた
「身体機能も低下して寝たきりになってしまいます…
だから 覚悟をしていた方がよろしいかと…」
「でも…何かあるでしょう?治療法とか…」
「残念だけど病状を回復ような治療法はないんだよ…
病状の進行を抑える為の脳循環改善薬や血管拡張剤を使用したりはするけど…」
「そうですか…」
(オレのせいだ オレのせいで綾夏は…っ!!)
診察室から出てきた尚緒にそっと綾夏は近づいた。
「どうしたの 尚緒兄ぃ…」
心配そうに尚緒の顔を覗き込んだ。
「……っ!!ごめんな 綾夏っ…」
「どっ… どうしたの?いきなり…」
知ってる…? キミは、自分の病気(こと)を――――――…
「…え? また… ですか……?」
「今度は別の場所に腫瘍が見つかってね…」
「……っ」
何て言っていいのか
その時は言葉も出なかった
生きる自信を失ってしまったから
死が近づいてるボクと
自分が誰だか分からなくなっていくキミと2人で
どうやって生きていけばいいのか
わからなかったんだ――――――…
重い鉄の扉を開けて屋上に出ると、洗濯物のシーツがはためいていた。
ボクは靴を脱ぎ遺書をそこに置いた
そう ボクはキミと一緒に死ぬ事を決めた…
「尚緒兄ぃ 何してるの?」
状況が把握出来てない綾夏は笑って言った。
「綾夏……」
その何も知らない笑顔は
命を絶とうとした このボクを引き止めた
「ごめん!ごめんな――――っ!!」
お湯みたいな涙が、瞳(め)からこぼれ出し、尚緒は泣き叫んだ。
少しずつ 少しずつ…
記憶を失っていくキミは
それでも ボクを看病してくれたんだ
そう 一度も
自分がアルツハイマーに侵されているなんて
気づくこともなく――――――――――――…
限られた時間がココロでしか見えない
”青の季節”
キミの病状は見えないところで
じっくりとじんわりと確実に進行していたんだ
to next→
いやな予感がはずれてほしいと願って…
ボクのココロの中に ちょっとだけ…
ナニカが引っかかったような気がしてたから
「立花さん どうぞー」
「ここに座って 待っててな」
「うん」
尚緒は綾夏の頭をクシャってやって 診察室に入った。
「アルツハイマー症痴呆だね… キミはお兄さんだっけ?
この名前くらい聞いたことあるでしょ?少し説明しようか…」
「お願いします」
「この病気は主に女性に多く、物忘れの自覚が失われ、
神経病状が現れる例も少なくないんです
で、最終的に脳全体がおかされてしまいます」
「そしたらどうなるんですか?」
ボクはおそる おそる 医師に聞いてみた
「身体機能も低下して寝たきりになってしまいます…
だから 覚悟をしていた方がよろしいかと…」
「でも…何かあるでしょう?治療法とか…」
「残念だけど病状を回復ような治療法はないんだよ…
病状の進行を抑える為の脳循環改善薬や血管拡張剤を使用したりはするけど…」
「そうですか…」
(オレのせいだ オレのせいで綾夏は…っ!!)
診察室から出てきた尚緒にそっと綾夏は近づいた。
「どうしたの 尚緒兄ぃ…」
心配そうに尚緒の顔を覗き込んだ。
「……っ!!ごめんな 綾夏っ…」
「どっ… どうしたの?いきなり…」
知ってる…? キミは、自分の病気(こと)を――――――…
「…え? また… ですか……?」
「今度は別の場所に腫瘍が見つかってね…」
「……っ」
何て言っていいのか
その時は言葉も出なかった
生きる自信を失ってしまったから
死が近づいてるボクと
自分が誰だか分からなくなっていくキミと2人で
どうやって生きていけばいいのか
わからなかったんだ――――――…
重い鉄の扉を開けて屋上に出ると、洗濯物のシーツがはためいていた。
ボクは靴を脱ぎ遺書をそこに置いた
そう ボクはキミと一緒に死ぬ事を決めた…
「尚緒兄ぃ 何してるの?」
状況が把握出来てない綾夏は笑って言った。
「綾夏……」
その何も知らない笑顔は
命を絶とうとした このボクを引き止めた
「ごめん!ごめんな――――っ!!」
お湯みたいな涙が、瞳(め)からこぼれ出し、尚緒は泣き叫んだ。
少しずつ 少しずつ…
記憶を失っていくキミは
それでも ボクを看病してくれたんだ
そう 一度も
自分がアルツハイマーに侵されているなんて
気づくこともなく――――――――――――…
限られた時間がココロでしか見えない
”青の季節”
キミの病状は見えないところで
じっくりとじんわりと確実に進行していたんだ
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