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「おい、邪魔。」
予想していなかったタイミングで頭を倖に押されて思わずよろける。すると、倖が慌てたようにはっしとりんを支えてくれた。
「ほらな!」
「なにがですか。」
「おまえ、飯食う量が少ないんだって!」
ちょっと押したくらいでフラフラしやがって。
ぶつくさ言いながらもきちんと支えてくれるのだから、まぁ、優しいのだろう。
2人で右に左にとフラフラ歩いているうちに正門まできてしまった。正門を過ぎると左右と前と進む道が分かれる。図書館は駅と同じ方向、右の道に行かなければならない。倖と言い合いながら右に曲がりかけた、その時。
「きゃあっっ!」
すぐ後ろで聞こえた悲鳴に振り向くと、女子生徒が何もないところで派手に転んでいた。迫田さんがしゃがみこんで助けおこしている。
転んだのはりんに白けた視線をとばしていた女子の1人のようだ。
「なんであんなとこで転ぶんだ?」
頭越しに倖がつぶやいた。
「……なんででしょう。」
とりあえず、そう、答えておく。
転んでしまった女子生徒は、てへへと照れ笑いを浮かべ迫田さんの手を借り立ち上がると、スカートについた土を払い、首を傾げながら歩き出した。
彼女たちの周りに、とりあえず、障害物は見当たらなかった。
りんは視線を正門の方へと戻す。
右の道路へと進みかけて止まったままの倖の横、眼鏡から外れたぼやけた視界に赤黒い何かがぞろりと動く。
何かは倖の横をゆっくり進む。
倖は全く気づかずそれと一緒に並んで歩き出した。
りんは、ゴクリ、と生唾を飲み込んだ。冷や汗で手のひらが気持ち悪かった。
精一杯気づかぬフリをして、倖のあとに続いて歩いた。
図書館に行くには右の道に行かなければならない。
あれはきっと、まっすぐ進む。
大丈夫だ。
横目であれがまっすぐ進むのを確認すると、倖のあとを追いかけて、りんは小走りに左へと曲がった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
市立図書館はりんのお気に入りの場所だ。といっても他の場所になど、まだほとんど行ったことはないのだが。
とくに目立った施設があったりイベントをやっていたりするわけではないが、ふんだんに木材が使われていて、とても落ち着くのだ。
席も自習机から1人掛けのテーブル席、あちこちに点在する木製の座り心地の良い椅子、クッション性の高いソファのカップル席などバラエティーに富んでいる。
りんが本の返却作業をカウンターでしている間、倖は以前りんに付き添って来たときと同じように手持ち無沙汰にあちこち眺めていた。
「お待たせしました。今日は何冊か借りようと思っているんですが、いいですか?」
「おう。何借りるんだ?」
「特に決めてはいないんですが、推理小説で面白そうなものがあればと思って。」
「推理小説ねぇ。」
「……倖くんは本とか読みますか?」
「読む。割と好き。」
予想していなかったタイミングで頭を倖に押されて思わずよろける。すると、倖が慌てたようにはっしとりんを支えてくれた。
「ほらな!」
「なにがですか。」
「おまえ、飯食う量が少ないんだって!」
ちょっと押したくらいでフラフラしやがって。
ぶつくさ言いながらもきちんと支えてくれるのだから、まぁ、優しいのだろう。
2人で右に左にとフラフラ歩いているうちに正門まできてしまった。正門を過ぎると左右と前と進む道が分かれる。図書館は駅と同じ方向、右の道に行かなければならない。倖と言い合いながら右に曲がりかけた、その時。
「きゃあっっ!」
すぐ後ろで聞こえた悲鳴に振り向くと、女子生徒が何もないところで派手に転んでいた。迫田さんがしゃがみこんで助けおこしている。
転んだのはりんに白けた視線をとばしていた女子の1人のようだ。
「なんであんなとこで転ぶんだ?」
頭越しに倖がつぶやいた。
「……なんででしょう。」
とりあえず、そう、答えておく。
転んでしまった女子生徒は、てへへと照れ笑いを浮かべ迫田さんの手を借り立ち上がると、スカートについた土を払い、首を傾げながら歩き出した。
彼女たちの周りに、とりあえず、障害物は見当たらなかった。
りんは視線を正門の方へと戻す。
右の道路へと進みかけて止まったままの倖の横、眼鏡から外れたぼやけた視界に赤黒い何かがぞろりと動く。
何かは倖の横をゆっくり進む。
倖は全く気づかずそれと一緒に並んで歩き出した。
りんは、ゴクリ、と生唾を飲み込んだ。冷や汗で手のひらが気持ち悪かった。
精一杯気づかぬフリをして、倖のあとに続いて歩いた。
図書館に行くには右の道に行かなければならない。
あれはきっと、まっすぐ進む。
大丈夫だ。
横目であれがまっすぐ進むのを確認すると、倖のあとを追いかけて、りんは小走りに左へと曲がった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
市立図書館はりんのお気に入りの場所だ。といっても他の場所になど、まだほとんど行ったことはないのだが。
とくに目立った施設があったりイベントをやっていたりするわけではないが、ふんだんに木材が使われていて、とても落ち着くのだ。
席も自習机から1人掛けのテーブル席、あちこちに点在する木製の座り心地の良い椅子、クッション性の高いソファのカップル席などバラエティーに富んでいる。
りんが本の返却作業をカウンターでしている間、倖は以前りんに付き添って来たときと同じように手持ち無沙汰にあちこち眺めていた。
「お待たせしました。今日は何冊か借りようと思っているんですが、いいですか?」
「おう。何借りるんだ?」
「特に決めてはいないんですが、推理小説で面白そうなものがあればと思って。」
「推理小説ねぇ。」
「……倖くんは本とか読みますか?」
「読む。割と好き。」
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