67 / 135
2
しおりを挟む
それから一週間たっても、倖がりんに話しかけてくることはなかった。
りんは学校の玄関口でもそもそと上履きを脱ぎながら、ここ数日のことを思い返していた。
今朝も倖は欠伸をしながらスタスタと教室に入ってくると、机につくなり突っ伏して寝てしまう。
仲良くしていたときでも朝はああいう感じなのがスタンダードだった。以前は何とも思わなかった一連の倖の行動。けれど今は、それを見ていると何だか妙に息苦しい気がして、録に挨拶もできなかった。
勇気を出して声をかければ、きっと返事くらいはしてくれると思う、のに。
りんの脳裏に、倖に声をかけて無視される迫田さんの姿が浮かんでは消える。迫田さんはあっけらかんと笑っていたが、きっと自分はそんな風には笑えない。
倖に声をかけて、あからさまに無視されることが、何より怖かった。
〝林田りん〟と書かれた靴箱の扉を開けローファーを取り出し、上履きをしまう。カタン、と扉が閉まる音が固く虚ろに響いて消えた。
しばらく2人だったせいか、1人で帰るのが妙に寂しく感じる。ちょっと前まで、ぼっちで帰ることが当たり前だったというのに。
言葉をかわしたのも、あの、慶と引き合わせた日の翌日だけで、それ以来視線が合うこともない。
日常は、倖から手紙をもらう以前の日常へと逆戻りした。
りんは軽くため息をついた。
そうしてピクリと身じろぎして、りんは動きを止めた。
靴箱を正面に捉えた左目の、眼鏡のきれた外側、ぼやけた視界にはっきりと赤いものが動くのがわかった。
左、運動場は左手になる。
りんはゆっくりと再度大きなため息をついた。
あんなに遠いのに、何でわかってしまうのだろう。
慶に勧められるままに縁なしの眼鏡にしてみたが、失敗だったかもしれない。以前の物に比べて縁がないぶんカバーできる範囲が小さくなってしまった。
りんは運動場手前まで重い足取りで歩を進めた。
運動場の中央にでんと陣取るサッカーコート内では部員がボールを奪い合い右に左にと走り抜ける。
今日はサッカー部が試合をしているようだ。どうやら1、2年生と3年生にわかれての試合らしく、クラスメイトと思しき顔もちらほら見える。
りんは眼鏡を少しだけ上にずらす。
あれは、コート内をゆっくりと横断していた。横断しながらも時折止まっては土産を置いていくので、遅々として前に進まない。
りんの心配をよそに部員はみな器用に臓器の手前で進路を変更したりする。視えているわけでもないのに不思議なものだ。
りんは学校の玄関口でもそもそと上履きを脱ぎながら、ここ数日のことを思い返していた。
今朝も倖は欠伸をしながらスタスタと教室に入ってくると、机につくなり突っ伏して寝てしまう。
仲良くしていたときでも朝はああいう感じなのがスタンダードだった。以前は何とも思わなかった一連の倖の行動。けれど今は、それを見ていると何だか妙に息苦しい気がして、録に挨拶もできなかった。
勇気を出して声をかければ、きっと返事くらいはしてくれると思う、のに。
りんの脳裏に、倖に声をかけて無視される迫田さんの姿が浮かんでは消える。迫田さんはあっけらかんと笑っていたが、きっと自分はそんな風には笑えない。
倖に声をかけて、あからさまに無視されることが、何より怖かった。
〝林田りん〟と書かれた靴箱の扉を開けローファーを取り出し、上履きをしまう。カタン、と扉が閉まる音が固く虚ろに響いて消えた。
しばらく2人だったせいか、1人で帰るのが妙に寂しく感じる。ちょっと前まで、ぼっちで帰ることが当たり前だったというのに。
言葉をかわしたのも、あの、慶と引き合わせた日の翌日だけで、それ以来視線が合うこともない。
日常は、倖から手紙をもらう以前の日常へと逆戻りした。
りんは軽くため息をついた。
そうしてピクリと身じろぎして、りんは動きを止めた。
靴箱を正面に捉えた左目の、眼鏡のきれた外側、ぼやけた視界にはっきりと赤いものが動くのがわかった。
左、運動場は左手になる。
りんはゆっくりと再度大きなため息をついた。
あんなに遠いのに、何でわかってしまうのだろう。
慶に勧められるままに縁なしの眼鏡にしてみたが、失敗だったかもしれない。以前の物に比べて縁がないぶんカバーできる範囲が小さくなってしまった。
りんは運動場手前まで重い足取りで歩を進めた。
運動場の中央にでんと陣取るサッカーコート内では部員がボールを奪い合い右に左にと走り抜ける。
今日はサッカー部が試合をしているようだ。どうやら1、2年生と3年生にわかれての試合らしく、クラスメイトと思しき顔もちらほら見える。
りんは眼鏡を少しだけ上にずらす。
あれは、コート内をゆっくりと横断していた。横断しながらも時折止まっては土産を置いていくので、遅々として前に進まない。
りんの心配をよそに部員はみな器用に臓器の手前で進路を変更したりする。視えているわけでもないのに不思議なものだ。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話
そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん!
好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。
ほのぼのラブコメというか日常系小説
オチなどはなく、ただひたすらにまったりします
挿絵や文章にもAIを使用しております。
苦手な方はご注意ください。
おもいでにかわるまで
名波美奈
青春
失恋した時に読んで欲しい物語です。
高等専門学校が舞台の王道純愛青春ラブストーリーです。
第一章(主人公の水樹が入学するまで)と第二章(水樹が1年生から3年生まで)と第三章と第四章(4年生、5年生とその後)とで構成されています。主人公の女の子は同じですが、主に登場する男性が異なります。
主人公は水樹なのですが、それ以外の登場人物もよく登場します。
失恋して涙が止まらない時に、一緒に泣いてあげたいです。
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる