OH MY CRUSH !!

文月 七

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 うっとりとかほりん見つめながら言う佐藤に、しまった、と倖は内心頭を抱えた。別にかほりんを誉めたわけでもないのだが、佐藤を喜ばせる結果となってしまった。
 「でも、君知らないの?あの子は眼鏡取ったら、すんごい美少女だよ?素顔がものすごくかほりんにそっくりなんだ!」
 眼鏡取ったら美少女だなんて萌えるしね、と呟く佐藤に、倖は驚愕の眼差しで答える。
「……今、なんつった?」
「かほりんのすごいところはねぇ、」
「かほりんのことは聞いてねぇ。」
 ぐっと拳を握りしめてみせると、佐藤はしかめ面をしつつ、少し怯えた様子で口を噤んだ。
「今、眼鏡とったら、て言ったか?」

「言ったよ。そこら辺のアイドルなんか目じゃないよ、あの子。」

 うそだろ、と倖は放心状態でつぶやいた。
 あれが眼鏡取ったくらいでかわいくなんのか?
 いやしかし、佐藤の美的感覚はおそらく『かほりん』が基準だ。鵜呑みにするには怪しすぎないか。
「まて、おまえ、どこであいつの眼鏡とったんだよ。」
「僕がとったわけじゃないよ。図書館であの子派手に躓いてさ、その時本と一緒に眼鏡も落としたから、その時にね。」
 図書館、と倖が佐藤を睨む。
「そういやおまえ、あんな犯罪まがいのこと、何度もあいつにやってないだろうな?」
「犯罪?なんてしたことないよ。何のこと?」
 佐藤は薄ら笑いを浮かべてそう言った。
「スカートの中に手ぇ突っ込むのは犯罪だろ。」
 反射的に殴ってしまいそうになるのを我慢しながら倖は聞く。
「あぁ、あれね、鍵落としたんだ。冷房効きすぎて寒そうだったからジャケットかけてあげたんだけど、ポケットから鍵が落ちちゃって。」
「鍵、落とした?ほう、じゃ何でおまえ、俺と目があったとき逃げたんだよ。」
 倖が格段に低い声で凄み佐藤の方へとにじりよる。
「さっきも言ったけど、君、恐いんだよ。そんな風に睨みつけられたら普通逃げるだろ?」
 参ったな、と髪をかきあげてさも迷惑そうにのたまった。
 ……こいつ、確信犯だ。
 ギリと音がしそうなほど倖は歯を食いしばった。
「君、あの子の彼氏か何かかと思ったんだけど、違うみたいだね。素顔も知らないんじゃ、ね。」
 素顔。
 そういえば。
 眼鏡とったらって、本当だろうか。
 考えながら倖は足元の石をひとつ拾った。
 佐藤はそんな倖を訝しげに見ながら、あざ笑うように顎を上げる。
「彼氏でもないんだったら、からんでこないでくれるかな?『あいつ』呼ばわりもやめてくれない?ムカつくから。性格はまったくタイプじゃないんだけど、あの子とは僕が遊んであげ」
 ガンッ!!
 
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