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放課後、当たり前のように倖がりんの席にくると、かーえーりーまーしょ、とやたら低い声で誘ってきた。
ちなみに朝、あれを視てから右から通らなくなっている。
だから、言ったのに。本当に視るのかって何度も聞いたのに。
実際に視るああいうものは、かなりえげつないのだ。
「準備するので、ちょっと待ってください。」
とごそごそとしだすと、急に教室内のざわめきがピタリと止まった。
その妙な雰囲気にそっと周囲を伺うと、何名かのクラスメイトが眉間に皺を寄せてこちらを見ている。そうでない生徒も、困惑したようにりんを見る。
ふと後ろの席の迫田さんと目があったが、彼女もこの雰囲気に気圧されているようで、戸惑った様子が伺えた。
既視感があった。
前にもあった。
前にも。
小学校で。
そして中学校でも。
前の高校でも。
学年が変わるたび、進学するたびに急に今のような雰囲気になって、それまで仲良くしていた友人たちが。
……準備しないと。
倖くんが、待ってる。
りんは震える手で筆記用具入れのファスナーを閉めようとするが、手を滑らせ中身を盛大に床にぶちまけてしまった。
何でこんな時に、と慌てて拾いあげているとすぐに横から手がのびてきて迫田さんが手伝ってくれた。
「何か用か?」
頭上から憮然とした倖の声が聞こえてくる。
それは顰めっ面で内緒話をしていたクラスメイト達へと向けられていたようだった。
その瞬間、教室内にあった妙な空気が霧散する。
ひそひそとしていたクラスメイト達も、用なんて、別に、などと言いながら三々五々散り始める。
その様子を不機嫌そうに見やって、行くぞ、と顎で示して倖は先に出て行った。
「りんちゃん、これで全部だよ。」
迫田さんは戸惑ったように辺りをちらちらと窺いながらそう言うと、定規を渡してくれた。
「迫田さん、本当にありがとう。助かったよ。」
「いーのいーの。……さっきみたいなの、あんま気にしないでね。てか、なんか、変だった、ね。」
「……うん。」
「ほら!倖くん先帰っちゃうよ!」
パンッ、と背中を叩かれてりんは慌てて立ち上がった。
また明日ね、と迫田さんに手を振ると倖を追いかけてりんも教室を後にした。
◇◇◇◇◇◇
靴箱の少し先で倖に追いつくと、りんははぁはぁと弾む息を必死に整えようと膝に手をついて倖を見上げた。
「ちょ、ちょっと、倖くん、待って、ください。」
その声に倖は足を止めて応えてくれるが、相変わらずの渋面だ。
急いで走ったせいで吹き出した汗を、りんはぐいっと袖で拭った。
ちなみに朝、あれを視てから右から通らなくなっている。
だから、言ったのに。本当に視るのかって何度も聞いたのに。
実際に視るああいうものは、かなりえげつないのだ。
「準備するので、ちょっと待ってください。」
とごそごそとしだすと、急に教室内のざわめきがピタリと止まった。
その妙な雰囲気にそっと周囲を伺うと、何名かのクラスメイトが眉間に皺を寄せてこちらを見ている。そうでない生徒も、困惑したようにりんを見る。
ふと後ろの席の迫田さんと目があったが、彼女もこの雰囲気に気圧されているようで、戸惑った様子が伺えた。
既視感があった。
前にもあった。
前にも。
小学校で。
そして中学校でも。
前の高校でも。
学年が変わるたび、進学するたびに急に今のような雰囲気になって、それまで仲良くしていた友人たちが。
……準備しないと。
倖くんが、待ってる。
りんは震える手で筆記用具入れのファスナーを閉めようとするが、手を滑らせ中身を盛大に床にぶちまけてしまった。
何でこんな時に、と慌てて拾いあげているとすぐに横から手がのびてきて迫田さんが手伝ってくれた。
「何か用か?」
頭上から憮然とした倖の声が聞こえてくる。
それは顰めっ面で内緒話をしていたクラスメイト達へと向けられていたようだった。
その瞬間、教室内にあった妙な空気が霧散する。
ひそひそとしていたクラスメイト達も、用なんて、別に、などと言いながら三々五々散り始める。
その様子を不機嫌そうに見やって、行くぞ、と顎で示して倖は先に出て行った。
「りんちゃん、これで全部だよ。」
迫田さんは戸惑ったように辺りをちらちらと窺いながらそう言うと、定規を渡してくれた。
「迫田さん、本当にありがとう。助かったよ。」
「いーのいーの。……さっきみたいなの、あんま気にしないでね。てか、なんか、変だった、ね。」
「……うん。」
「ほら!倖くん先帰っちゃうよ!」
パンッ、と背中を叩かれてりんは慌てて立ち上がった。
また明日ね、と迫田さんに手を振ると倖を追いかけてりんも教室を後にした。
◇◇◇◇◇◇
靴箱の少し先で倖に追いつくと、りんははぁはぁと弾む息を必死に整えようと膝に手をついて倖を見上げた。
「ちょ、ちょっと、倖くん、待って、ください。」
その声に倖は足を止めて応えてくれるが、相変わらずの渋面だ。
急いで走ったせいで吹き出した汗を、りんはぐいっと袖で拭った。
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