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慌てて足をどかし這いよると、おばあさんは苦しそうに顔を歪ませて呻いていた。ひゅうひゅうという喘鳴が聞こえる。
手を伸ばしかけ、そういえば上にあれが、とその手でそっと眼鏡を押し上げる。
間近で見ると、その肌が焼けた有り様が子細に目に飛び込んでくる。
まるでたった今、大火傷を負ったかのような。
何かが焼けて焦げるような臭いが強く漂っているが、それはこの商店が燃えている臭いなのか。
それとも、これが、この人が、焼けた時の臭いなのか。
それが上に被さるように。
おばあさんの頭に手をのせ彼女の白髪混じりの髪に、その肉がむき出しになった痛々しい頬を寄せ、ギュッと抱え込むように、抱きしめていた。
しっかりと、抱きしめていた。
この人は、おばあさんを庇おうとしている。
必死に、守ろうとしている。
そうとしか、視えなかった。
りんは眼鏡を支えていた手をゆっくりはなすと、おばあさんの体を起こそうと手をかけた。しかし、りん程度の力ではびくともしない。
倖くん。
倖くんが、まだ家の中にはいるはずだ。
脱衣所から居間に続いているだろうと思われる木の扉に目を向ける。隙間から漏れる煙の量が心なしか少なくなっている気がした。
戸を開けて叫んでみようか、とりんがおばあさんから手を離したとき、その戸がバンッ!と大きな音をたてて開いた。
開いた戸から低姿勢で姿を現したのは倖だ。たぶん。
何故かびしょ濡れのブレザーを頭から羽織り、さっきまでは着けていなかったマスクとピンクの水泳用ゴーグルをしている。
呆気に取られて固まっていると、そのままりんの傍までズカズカと近寄ってくると、
「おまえ、何で来てんだよ!」
と、やおら思い切り怒鳴られた。
自分はほいほい突入した癖に、と思ったが倖のおかしな格好のせいであまり腹はたたなかった。
「そんなことより倖くん、おばあさんの肩一緒に持ってくれませんか?」
「おまえなぁ!煙なめんなよ!マジでバカじゃねぇのっ!?」
そう怒鳴りながら倖は自分のマスクをはぎ取ると、りんに無理やりつけさせる。
驚いたことにその下からはもう一枚のマスクが顔を出す。
重ねづけをしていたらしい。
「ったく!おら、ばあさん大丈夫か!?」
煙は最初に吸い込んでしまった時よりも、かなり少なくなっているのでマスクはもういらないのではとりんは思ったが、怖かったので黙っておいた。
しかし、倖から借りたそのマスクがやたらとびしょびしょと濡れているのが気にかかった。
重ねづけしていたようなので、もしかしたらブレザーと一緒で煙対策として濡らしたのかもしれない。
手を伸ばしかけ、そういえば上にあれが、とその手でそっと眼鏡を押し上げる。
間近で見ると、その肌が焼けた有り様が子細に目に飛び込んでくる。
まるでたった今、大火傷を負ったかのような。
何かが焼けて焦げるような臭いが強く漂っているが、それはこの商店が燃えている臭いなのか。
それとも、これが、この人が、焼けた時の臭いなのか。
それが上に被さるように。
おばあさんの頭に手をのせ彼女の白髪混じりの髪に、その肉がむき出しになった痛々しい頬を寄せ、ギュッと抱え込むように、抱きしめていた。
しっかりと、抱きしめていた。
この人は、おばあさんを庇おうとしている。
必死に、守ろうとしている。
そうとしか、視えなかった。
りんは眼鏡を支えていた手をゆっくりはなすと、おばあさんの体を起こそうと手をかけた。しかし、りん程度の力ではびくともしない。
倖くん。
倖くんが、まだ家の中にはいるはずだ。
脱衣所から居間に続いているだろうと思われる木の扉に目を向ける。隙間から漏れる煙の量が心なしか少なくなっている気がした。
戸を開けて叫んでみようか、とりんがおばあさんから手を離したとき、その戸がバンッ!と大きな音をたてて開いた。
開いた戸から低姿勢で姿を現したのは倖だ。たぶん。
何故かびしょ濡れのブレザーを頭から羽織り、さっきまでは着けていなかったマスクとピンクの水泳用ゴーグルをしている。
呆気に取られて固まっていると、そのままりんの傍までズカズカと近寄ってくると、
「おまえ、何で来てんだよ!」
と、やおら思い切り怒鳴られた。
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「そんなことより倖くん、おばあさんの肩一緒に持ってくれませんか?」
「おまえなぁ!煙なめんなよ!マジでバカじゃねぇのっ!?」
そう怒鳴りながら倖は自分のマスクをはぎ取ると、りんに無理やりつけさせる。
驚いたことにその下からはもう一枚のマスクが顔を出す。
重ねづけをしていたらしい。
「ったく!おら、ばあさん大丈夫か!?」
煙は最初に吸い込んでしまった時よりも、かなり少なくなっているのでマスクはもういらないのではとりんは思ったが、怖かったので黙っておいた。
しかし、倖から借りたそのマスクがやたらとびしょびしょと濡れているのが気にかかった。
重ねづけしていたようなので、もしかしたらブレザーと一緒で煙対策として濡らしたのかもしれない。
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