OH MY CRUSH !!

文月 七

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「あいにく、さっっぱりわからない。そもそも俺視えないし、感じることすらない。」
「……あっ、そ。」
 それに、そんなこと出来るならとっくにやってるよ、と自嘲気味に慶は嗤った。
 視線の先ではりんが同じような黒縁の眼鏡を両手に持ち顰めっ面で悩んでいる。どうやら2つの眼鏡に絞り込んだらしい。
「あの2つって違うのか?デザイン。」
「……微妙に違う。おっ。」
 りんはどうやら右手に持っていた眼鏡に決めたようで、明るい表情で振りむく。
 慶はゆっくりとりんに近づくとポンポンとりんの頭に手をのせる。眼鏡を受け取ると倖からは見えない、奥まったところにある検査機器のほうへとりんを連れて行った。
 倖は知らず詰めていた息を、はぁ、と吐き出した。
 あの眼鏡をりんに渡した慶になら、対処の仕方を教えてもらえるのではないかと思ったのに。

 主に、教室にいたあの白いワンピースの幽霊の。

 りんは視えなければ大丈夫だと言ったが、本当なのだろうか。正直、疑わしいと倖は思っていた。
 倖の脳裏に、キョトンとした顔で血に濡れていくりんの姿がよぎる。

 あんなに禍々しいものを、倖は他に知らない。

 あれで本当に大丈夫なのだと、信じることができなかった。
 でも、誰にもどうすることも出来ないのであれば、只漫然と時が過ぎていくのを待つしか出来なくなる。
 そうして例えば、席替えしてあの席からりんが離れるとか、学年が上がってクラスが変わるとか、卒業してしまうとかした時に、りんがあれから逃れられることを祈るしかない。
 あのワンピースの幽霊が『りんが座る席』に憑いていることを、願うしかない。
 灼きついて離れない光景を払い落とすようにふるりと頭を振ったとき、背後からトントンと肩を叩かれた。
「あのぉ、私達、サングラス買いにきたんですけどぉ。」
 振り返るとキレイめのお姉さんが3人、キラキラした目で見上げてきていた。
「よかったらぁ、どんなのが似合うか一緒に見てもらえたらぁなんてぇ。」
 と、3人で目配せしあいながら、きゃあ言っちゃったぁ、と小突きあっている。
 久しぶりだな、こういうの。
 最近は、何かっちゃりんと連んだり、屋上で柴田とダラダラしたりとあまりこういう方面で活動的ではなかった。
 たまにはいいよな、と憂鬱だった気持ちを一掃するべく、倖は瞬殺スマイルを浮かべた。左からぶりっ子、ツインテール、おかっぱとあだ名をつける。かわいいのはぶりっ子だな。ぶりっ子狙いということで。
「うーん、お姉さん達キレイだから何でも似合いそうだけどなぁ。」
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