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僕のミューズ

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しゅわしゅわと空気が弾ける音が心地良い。きめ細やかな泡で、座ったままの凌太の体を撫でるセナの指は確かに男性のものだ。けれど、友達連中のようにささくれなんかなってなくて、なめらかだった。この指で先ほどは弄られたのかと考えが巡ると、セナの指を見ているだけでエロい気分になってくる。

「りょーちんこの辺の人?この店初めてなんでしょ?」

 丁寧に洗い流される泡。体に付着したセナの唾液が流されていくのを見ると、勿体ないような気持ちになる。

「まあ、この辺といえばこの辺ですかね……ここは初めてです。というか風俗自体ほぼ初めてというか」

「初めてでココとか、他じゃ満足できなくなるよ?」

「そうなんですか?」

「ここ、ハマる人はハマるし、りょーちん素質ありそうだよね。この店初めてなら、キャストによってプレイ内容違ったりするし、色々楽しいから他の子にも遊んでもらってみたら?また新しい自分に出会えるかも」

 セナの瞳が意地悪そうに笑う。そんな言い方をされると、もうセナに会ってはいけないような気がして、心が焦りだす。

「あの、また、セナさんにお願いしても良いですか?」

 凌太の体を洗う手が、ぴたりと止まった。意地悪な瞳に強者の光が足された気がする。

「そんな事言って……セナにハマっちゃった?」

「……はい」

 綺麗な顔が近づいてきて、ドキドキする。

「あんまり最初っからこういうのしないんだけど……セナもりょーちん気に入ったから……」

「……?セナさっ……?!」

 吐息が混じる距離で呟くと、凌太の戸惑いごとセナの唇で塞がれた。触れるだけの口づけが離されると、心臓が耳についたのかというくらいバクバク言って煩い。男とのキスでこんな風になるなんて、この店に入る前の自分に言っても信じないのではなかろうか。

「大サービスしたんだからね。セナ以外と遊んじゃダメだよ。結構、嫉妬深いんだから」

「は……はい……」

「ふふ、情けない顔。かーわいー」

 あはは、と明るい笑い声がキラキラしている。お金を払うのはこちらで、客はこちら。キャストは客に選ばれる。なのに、この瞬間ある種の主従関係のような、絶対的にセナが上であるという観念が凌太の頭に刷り込まれる事になったのだった。


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