鬼怒川さんと坊

花田トギ

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逃亡先の安らぎ

薄着で宅急便2

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「あ、あの、竜児さ……」
「あれ?前川さん指定時間と違いませんか?」
前川の言葉を遮るように、聞きなれた声が飛んできた。若干怒りが見える声に、前川はハッと正気に戻る。
「あー!すみません絹田さん!ちょうどこの辺りにお荷物あったんで、もしかしたらいるかなーって来ちゃいました!」
「いえいえ、良いんですよ。前の担当の方には指定時間厳守して貰ってたんで……次回からは前川さんもお時間守ってくださいね」
「は、はい!」
さらさらとサインすると、鬼怒川はにっこりとした笑顔を向けた。笑顔なのに怖い。明らかな「帰れ」の合図に前川は笑顔を引き攣らせると、慌てて帰って行った。
「きぬ、オニーサン怖がってんじゃん」
「坊ちゃん、ピンポン鳴らされても知らない人なら出ないって約束でしょう?」
「宅配だったし。荷物くらい俺でも受け取れるし」
「そういう問題ちゃうやろが」
ドスの効いた声と共に、ただでさえ人を殺してそうな鬼怒川の目が鋭利になった。
「じゃあ、どういう問題?」
怖がることも無く、汗ばんだ手が、鬼怒川の首に回される。気化熱によってひんやりとした竜児の腕が心地良い。
「教えて差し上げましょうか」
「お、いいね、今日はヤル気?」
「……たまには良いでしょう。でも、熱中症は怖いのでエアコン付けてからしましょうか」
いとも簡単にエアコンのスイッチをいれると、しっかりと締めていたネクタイに手をかける。
シュル、とネクタイを取った鬼怒川を見て、たまには嫉妬されるのも悪くないと心の中で竜児はペロリと舌を出したのだった。
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