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序章
覚えのある絶望-3
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静かな室内に荷物をまとめる音だけが響く、荷物をまとめ終わり封をしようとしたところで私は思い出した。クローゼットを開けてその奥のほう、紙袋の中には綺麗にたたまれたワインレッドの≪♧25≫おそろいの服。上は半袖のセーラー服、下は膝上のプリーツスカート。そしてその近くには靴を買ったときのような箱があり、その中には当時愛用していた靴があの時と同じようにそこにいた。茶色いローファーだが、クッションは厚めでストラップで固定ができるようになっている。その箱はさすがに鞄には入らなかったので、鞄の近くにおいて忘れないよう再度確認する。そこで私は思い出したように鞄の中のわずかな隙間に服を紙袋ごと押し込んで何とか封をした。部屋着を脱いで、学校の制服を着て姿見を見ながら細かいところを整える。そして準備ができたら、荷物を持って自室を出る。リビングにつながる扉を開けば、そこでは母がいつもと同じような体勢で本を読んでいた。
「ママ…私行ってくるね。」
「?どこへ?」
そうきょとんと丸くした目をこちらへ向ける母へ、私は手首に輝くブレスレットを見せる。それだけで母は察したみたいで私のほうへフラフラと歩いてきて私を抱きしめる、しばらくそのまま数分が経過して母が離れる。その眼は涙で揺れていながらも決意に輝いていた。
「必ず…帰ってきてね…連絡してね…。」
「うん。」
「体を大切にね…。」
「うん。」
「帰ってきたら好きなもの作ってあげるか…。」
「うん…ママ、いってきます…。」
「いってらっしゃい…。」
そういって私荷物を持っては家を出たところで、近くのコンビニに立ち寄る。冷蔵庫の中から取り出したのはお気に入りのアップルジュース1L。
「支払いはー…交通系で。あと袋とストローお願いします。」
そういって商品を受け取った私はコンビニを出たところにある公園に入る。小さいころよく遊んだ公園だ。何気なしに立ち寄ったことも、ママと喧嘩して家出したときも来たし何回もここにきた。アップルジュースの口を開けてストローが出るように口を閉じて固定する。ゆっくり口に含んで息を吸うと共に飲み込めば、愛すべき果汁の甘みが口の中に広がる。空を見上げれば何も知らなさそうな鮮やかな夕暮れの青が広がっている、4色型色覚のパーティーメンバーが教えてくれた。この青はスモークブルーというらしい、どことなく曇った感覚の青だ。名前がスモークというの納得できる。沈みゆく夕日の赤い光で目が痛くなってきたところで私は時計を見た。時計はすでに夕方の六時過ぎを指していて、そろそろ出発するかと立ち上がる私の影は実際の身長の約二倍ほどはある。夕方になると伸びるこの陰も戦場では不利になっていたなとふと思いだす、かつての経験が新しい仲間たちの力になるといいな。そんなことを言いながらついにその時が来た。
「支配人、ワープお願い。」
そうつぶやけば再度ブレスレットの石がブレスレットから外れて宙に支配人の姿を映し出す。
≪もういいのね?≫
「うん。もうこれ以上いたら戦いに身が入らないから…。」
≪わかったわ。覚えているわね?≫
「もちろん。じゃあよろしく。」
そういって持ち運ぶ荷物を一度足元に置いて、また宙で左から右へ手を滑らす。浮き上がった液晶が示すホームにはNewという文字が点滅するお知らせを覗けば例年通り荷物の運搬法についてだった。速やかに閉じてアイテム欄を開けば二つの選択肢が現れる。『しまう』か『だす』だ。私が『しまう』を選択すれば液晶の隣に真っ暗な穴が浮かびあ上がる。私はその中に荷物をすべて落とし込んで、液晶を端の『×』を押してを閉じた。そうすれば自動的にポップアップウィンドウが選択肢を提示してきた。
≪転送開始しますか?≫
私は迷わずYESを押した。
紫色の宝石が浮いて私を中心に円を描くようにすさまじい速さで回る、そして徐々にそれは光を増していってその場から私は跡形もなく姿を消した。
「ママ…私行ってくるね。」
「?どこへ?」
そうきょとんと丸くした目をこちらへ向ける母へ、私は手首に輝くブレスレットを見せる。それだけで母は察したみたいで私のほうへフラフラと歩いてきて私を抱きしめる、しばらくそのまま数分が経過して母が離れる。その眼は涙で揺れていながらも決意に輝いていた。
「必ず…帰ってきてね…連絡してね…。」
「うん。」
「体を大切にね…。」
「うん。」
「帰ってきたら好きなもの作ってあげるか…。」
「うん…ママ、いってきます…。」
「いってらっしゃい…。」
そういって私荷物を持っては家を出たところで、近くのコンビニに立ち寄る。冷蔵庫の中から取り出したのはお気に入りのアップルジュース1L。
「支払いはー…交通系で。あと袋とストローお願いします。」
そういって商品を受け取った私はコンビニを出たところにある公園に入る。小さいころよく遊んだ公園だ。何気なしに立ち寄ったことも、ママと喧嘩して家出したときも来たし何回もここにきた。アップルジュースの口を開けてストローが出るように口を閉じて固定する。ゆっくり口に含んで息を吸うと共に飲み込めば、愛すべき果汁の甘みが口の中に広がる。空を見上げれば何も知らなさそうな鮮やかな夕暮れの青が広がっている、4色型色覚のパーティーメンバーが教えてくれた。この青はスモークブルーというらしい、どことなく曇った感覚の青だ。名前がスモークというの納得できる。沈みゆく夕日の赤い光で目が痛くなってきたところで私は時計を見た。時計はすでに夕方の六時過ぎを指していて、そろそろ出発するかと立ち上がる私の影は実際の身長の約二倍ほどはある。夕方になると伸びるこの陰も戦場では不利になっていたなとふと思いだす、かつての経験が新しい仲間たちの力になるといいな。そんなことを言いながらついにその時が来た。
「支配人、ワープお願い。」
そうつぶやけば再度ブレスレットの石がブレスレットから外れて宙に支配人の姿を映し出す。
≪もういいのね?≫
「うん。もうこれ以上いたら戦いに身が入らないから…。」
≪わかったわ。覚えているわね?≫
「もちろん。じゃあよろしく。」
そういって持ち運ぶ荷物を一度足元に置いて、また宙で左から右へ手を滑らす。浮き上がった液晶が示すホームにはNewという文字が点滅するお知らせを覗けば例年通り荷物の運搬法についてだった。速やかに閉じてアイテム欄を開けば二つの選択肢が現れる。『しまう』か『だす』だ。私が『しまう』を選択すれば液晶の隣に真っ暗な穴が浮かびあ上がる。私はその中に荷物をすべて落とし込んで、液晶を端の『×』を押してを閉じた。そうすれば自動的にポップアップウィンドウが選択肢を提示してきた。
≪転送開始しますか?≫
私は迷わずYESを押した。
紫色の宝石が浮いて私を中心に円を描くようにすさまじい速さで回る、そして徐々にそれは光を増していってその場から私は跡形もなく姿を消した。
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