冬月シバの事件簿

麻木香豆

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飯を食わねば捜査はできぬ

食堂

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 現場近くの大衆食堂に寄り、おばちゃんに対面でざるそばを頼んだ。

 昼だから混み合ってて、ほとんどの客が肉をくちゃくちゃと食べ、食い散らかす姿は気乗りしない。

 今日のご遺体もとても綺麗に切り刻んでいて芸術のようであった。が、人間は芸術品ではないのだ。人の命をなんだと思っている。
 かなり雑でぐちゃぐちゃのご遺体よりかはマシかも知れんが。

 空いてる席の横には先客がおり、見覚えのある顔だと思ったら現場の入り口に立っていた若い警官だった。
「お疲れ様です」 
「おう」
 彼は魚料理を食べていた。流石にこいつも肉は食べれんやろ。
 味噌汁が熱すぎるのか、猫舌すぎるのか、ふうふう言ってる。

「また同じ奴の犯行ですか?」
「そうだな。やり方も同じだ。若い男性を狙った犯行のようだ。30中盤……独身……体力もあって働き盛りの男たちをどう襲ったか。て、俺も30だけどな。ははっ」
「警部、気をつけてくださいね」
「まぁ俺を襲う奴はアホだな。警察の剣道大会全国優勝の俺に少しでも危害を与えることをしたらどうなるか……て、体格の良い被害者もおったからなぁ。相当相手は強いぞ」
 話に夢中になりすぎて。やばい、ワサビ入れすぎた。

 つい辛すぎて咳き込むと、警官は笑った。
「結構お茶目なところあるんですね、警部」
「るせぇ、ワサビには勝てん、」
 お茶を流し込む。警官はまだふうふうといいながら味噌汁をすする。どんだけ熱いんだ。いや、猫舌すぎるのか?

「いつになったらこの事件の犯人は捕まるのですかね」
「だよなぁ。全然つかめんのだわ。犯行時刻も不規則、被害者も接点無し。鳶職、銀行マン、ホスト……今回は大手の営業マン。この食堂に居そうな奴らばかりだ、なんつって」
「いろんな職種の人いますからねー。すぐ食べられるし、安いし、美味いし」
 ……たしかに唐揚げとか美味しそうなんだろうな。結構な率で食べてる奴がいる。

「ここは夜もやってるのか?」
「やってますね。朝も早からやってますし、夜も遅くまでやってる。ただ、客層は変わりませんよ」
「そうなんや。まぁなんかの縁だしまた飯でも食おうな」
「はいっ。奢ってくださいね」
「馬鹿野郎が」

 ここは初めて入ったが、たまには普段行かないところに行くのも事件解決の糸口になる。
「それでは、僕は先に」

 警官が去った後に、着信が鳴った。部下の茜部からだ。
「お疲れぃ。ちょうどよかった。あのさ、ちょいと調べて欲しいんだ」
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