冬月シバの事件簿

女の子の死

真相

「俺の方が被害者だ」
　男は取調室でそう言う。まだ言うか。
「マフラー……どうした？」
「監察に回した」
「ならわかるだろ。あいつが編んだマフラー、俺にプレゼントとして、送ってきた」
……？

　あのマフラーは……あの子が編んだのか。お前のことを思って編んだんじゃないのか？
「マフラーの毛糸、よく見たか？」
毛糸？俺は茜部に鑑識に連絡を取ってもらう。
「あんな気持ち悪いものをよこしやがって……もう限界だった」
　男は頭を抱えた。
「シバさん！鑑識に問い合わせたら……マフラーに髪の毛が……死んだ女性の髪の毛が一緒に編み込まれていたと……」
髪の毛？！あの子のか？俺は男を見た。

「何度も警察に相談したんだよ……あいつのしたことを！　まだ他にもされてたんだ。跡をつけられたり、無言電話とか！！！なのに相手にしてくれなくて。だから、俺がやるしかなかった……」
　他の捜査員がやってきた。男が警察に来て何度か相談していた記録が残ってた。もう一年前から。

　男は机に頭を打ちつけ叫び暴れ出した。
「なんてことだ……」
　俺はあの女性の髪の毛の長さを思い出した。とても長くて緩やかなパーマを。

　男は殺人容疑で逮捕されたものの、精神的にダメージを負い、病院に搬送された。精神科への通院記録もあった。

　その後俺たちは女性の家に再び向かい、両親の制止を振り払い彼女の部屋に入る。
「勝手に入らないデェえええええけえ」
母親の叫び声。そして俺らは絶句した。



　部屋の中には一面、あの男の写真だらけ、机の上には赤い毛糸玉、編み物の棒、編み物の本、失敗したマフラーのいくつか。そのマフラーたちの中にも彼女の髪の毛も編み込まれていた……。







　そう、あの女性は男のストーカーであった……


おわり