novelmber2022(仮)

麻木香豆

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灯す

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「それでね……」
とダイが話した時だった。2人のもとを電気が照らす。アスミはびっくりした。
「大丈夫だ、ここは定期的に電気がつくようになってる、それもこれもあの噂話のせいだけどね」
「びっくりしたよ」
「びっくりしたよね、僕も」
ダイの手は汗が。

「それでね」
話を再開する。
「明日夜、彼女に呼ばれたんだ。ここに来て欲しいって」
アスミはここ、と聞いた瞬間に何かひんやりとしたものを感じた。

「こんな暗い時に?」
「そうだね、こうやっていきなり電気が灯されることもなかったとき」
電気は消えた。

「駆けつけたさ、こんな夜にメールで「お願いだからはやく」って」
「……そりゃ心配よね」
「もしかしたら彼女は誰かに襲われたのかもしれないって、家にあった大きなスコップ持って自転車で駆けつけた」
「スコップ……」
ダイは笑った。
「なぜにスコップだったんだろう、でも考えてる暇はなかったんだ、あの時は」
ダイの握る手の強さは増した。
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