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「おーい、鈴木ー。」
俺は鈴木。普通のサラリーマンだ。名前は本作では登場しない予定なので鈴木とだけ覚えといてくれ。
今日の仕事がひと段落し、片付けをしている俺に声をかけてきたコイツは
「ん?なんだ佐藤か。」
「ちょ、なんだって酷くね?俺のハートはガラスなのよ?」
「そんなこと言ってる奴のハートはだいたい防弾ガラスだから大丈夫だ。」
佐藤拓己。俺とは高校からの腐れ縁だ。とはいえ俺と佐藤は配属部署が違い俺の部署とは関係がほぼ無いはずなのだが……何かこっちに関係のある仕事でもできたのか?
「なるほど、俺自身なかなか割れないから不思議だったけど納得。……て、んなこたどうでも良いんだよ。今日こそはできるんだろうな?」
「……ああ、今日は定時で終わりだ。帰って速攻でやるよ。」
なるほど、佐藤はゲームの話をするためにわざわざ就業時間中に俺の所に来たらしい……。昼休憩ならまだしも就業時間中にコッチに来るのはまずいと思うのだが良いのだろうか……?
……うん、良くはなさそうだ。おそらくというか確実に佐藤を探しているであろう部長さんの姿が見える。
「そうこなくっちゃな!時間かかるだろうけどキャラメイク終わったら俺のIDに連絡くれよ!色々案内すっから。」
「…………うん」
後ろの気配に勘付いたのか急に早口になってこの場から立ち去ろうとしているらしいが手遅れだ。凄い形相で部長様がこちらにおいでだからな。
「じゃ、そろそろ俺仕事戻るわ!実は今ちょっと仕事抜け出して来ててよ?」
「…………」
「……だろうな」
そうでないと後ろの人はそんなに怒って無いと思う。
「……?だろうな?って、早く戻らねぇと部長に拳骨でももら——…あ」
そう言いながらこの場を立ち去ろうと後ろを向いた佐藤だが、振り返った目の前に鬼の形相で睨み付ける部長に固まり、「ぶ、部長!?違うんです!これは……その——」しどろもどろで仕事をサボった言い訳をしながら部長に連行されていった。
連行されながら佐藤が俺に助けを求める顔をしていたが、同時に部長もこちらを見ていたので俺は関係ないと佐藤に絡まれたと示すために、片付け作業に戻った。……許せ佐藤…俺はヒーローではない。
□□□□□□
佐藤が仕事をサボってまで俺に聞きに来たのは最新技術を使って制作されたVRMMO RPG「Another World Frontier」というゲームの事だ。
この「Another World Frontier」は今世間を賑わす作品で数世代先の技術なんじゃないかと騒がれるほどにリアルで自由なゲームらしく男女年齢問わず人気のある作品らしい。
あくまで攻略サイトや3ch佐藤から見聞きした情報で特に佐藤はオーバーな話し方をする奴なのでそこまでの期待はしていない。まぁ面白いのは本当だろうから俺も購入した。
□□□□□□
仕事が終わり言葉通り速攻で帰宅し着替えもそこそこに家にあるカプセル型仮装ダイブ機に入り「Another World Frontier」を起動した。
———初めは何も無い黒い空間だったが仮想世界での俺のアバターが瞬時に構築され同時に周りが白く塗り潰されていく。
ピコン!そんな音と共に目の前に透けたウインドウが現れ———
“ようこそAnother World Frontierの世界へ“
男性とも女性ともつかない中性的な言葉と共に、周りの白い空間が別の物に瞬時に切り替わる。
それは街であったり城であったり、はたまた何処かの森、海や砂漠そしてそれぞれに住まう人やモンスター。おそらくこの「Another World Frontier」に実在するであろう風景を流しているのだろう。
“ここは剣と魔法が存在しモンスターが闊歩する世界です”
“ですがこの世界で貴方は自由です“
“必ずしも戦う必要はございません”
“剣を取り英雄になるも良し。槌を持ち物作りに励むも良し。動物あるいはモンスターと触れ合い心を癒すも良し”
“現実ではできない自由をこの世界で心ゆくまでお楽しみ下さい”
「これは凄い。」
この光景に圧巻して見ているとあっという間にオープニングは終わり
“それではこれより貴方のキャラクター設定を行います”
“まずは貴方の職業を決めてください”
その言葉と共に目の前には職業一覧が目の前に現れる。
「攻略サイトを見た時も思ったがかなりの数あるな。」
まずお決まりの[剣士][魔術師][銃士][薬師]に…[釣師]なんてのもある。
ただ俺は職業を予め決めておいたから悩む必要なし。
「錬金術師で決定」
“貴方の職業を錬金術師に決定しました”
“続いて貴方の種族を決めて下さい”
次は種族を決めると。
「にしても種族多いな」
お決まりの人族、獣人、エルフ、ドワーフは勿論選べるが獣人ひとつにしても何の動物の獣人かを選べるしダークエルフや変わったやつだと虫人なんてのもある。
佐藤が時間がかかると言っていたのはこの種族決めの事で、さまざまな種族があり見た目だけで決めるにしても迷うが何よりも迷わせるのは種族毎に全てステータスが違う事が悩む原因だ。
これは全てのステータスを見るだけで時間がかかる。
ここを適当にすれば追々自分が困ることになる可能性を考えると適当にはできないが……
これも攻略サイトで予め決めておいたから問題なし。攻略サイトさまさまだ。
「種族は人族で決定……」
これでキャラメイクは終わりだな。初めから職業と種族決めてたから早かったな。
“人族に決定しました”
“次は容姿の設定を行ってください“
“尚此処で決められたキャラクターの一部の容姿に関しましては今後一切の変更が出来ませんので予めご了承ください”
そうして目の前に今の現実の俺と全く同じアバターが目の前に現れた。
こういった仮想現実ゲームは色々とリアルであるが故のトラブルが存在する。その抑制の為に初期設定以降髪や目の色などは変更できても目の形や輪郭等は変更不可になっている。
「基本弄るのは面倒だからなぁ。」
髪と目の色だけ変えとけば良いな。それだけでもリアルな知り合いにあっても案外気づかれないモンだし。髪は灰色にして、目は赤か青が良いな。どっちにするか…
お?オッドアイにもできるのか……いやダメだ。オッドアイにしてみろ。この後会う佐藤になんて言われるか目に見えてる。ここは青色にしよう。
“容姿を決定しました”
“最後に「Another World Frontier」での貴方の名前を設定してください”
名前は鈴木だから……よし、今誰もが思ったであろう名前でいいかな。
「——…決定」
これでキャラ設定は終わりでこの設定でいいかどうかの確認作業を経て
「ログイン」
この日初めて俺は「Another World Frontier」の世界にダイブした。
俺は鈴木。普通のサラリーマンだ。名前は本作では登場しない予定なので鈴木とだけ覚えといてくれ。
今日の仕事がひと段落し、片付けをしている俺に声をかけてきたコイツは
「ん?なんだ佐藤か。」
「ちょ、なんだって酷くね?俺のハートはガラスなのよ?」
「そんなこと言ってる奴のハートはだいたい防弾ガラスだから大丈夫だ。」
佐藤拓己。俺とは高校からの腐れ縁だ。とはいえ俺と佐藤は配属部署が違い俺の部署とは関係がほぼ無いはずなのだが……何かこっちに関係のある仕事でもできたのか?
「なるほど、俺自身なかなか割れないから不思議だったけど納得。……て、んなこたどうでも良いんだよ。今日こそはできるんだろうな?」
「……ああ、今日は定時で終わりだ。帰って速攻でやるよ。」
なるほど、佐藤はゲームの話をするためにわざわざ就業時間中に俺の所に来たらしい……。昼休憩ならまだしも就業時間中にコッチに来るのはまずいと思うのだが良いのだろうか……?
……うん、良くはなさそうだ。おそらくというか確実に佐藤を探しているであろう部長さんの姿が見える。
「そうこなくっちゃな!時間かかるだろうけどキャラメイク終わったら俺のIDに連絡くれよ!色々案内すっから。」
「…………うん」
後ろの気配に勘付いたのか急に早口になってこの場から立ち去ろうとしているらしいが手遅れだ。凄い形相で部長様がこちらにおいでだからな。
「じゃ、そろそろ俺仕事戻るわ!実は今ちょっと仕事抜け出して来ててよ?」
「…………」
「……だろうな」
そうでないと後ろの人はそんなに怒って無いと思う。
「……?だろうな?って、早く戻らねぇと部長に拳骨でももら——…あ」
そう言いながらこの場を立ち去ろうと後ろを向いた佐藤だが、振り返った目の前に鬼の形相で睨み付ける部長に固まり、「ぶ、部長!?違うんです!これは……その——」しどろもどろで仕事をサボった言い訳をしながら部長に連行されていった。
連行されながら佐藤が俺に助けを求める顔をしていたが、同時に部長もこちらを見ていたので俺は関係ないと佐藤に絡まれたと示すために、片付け作業に戻った。……許せ佐藤…俺はヒーローではない。
□□□□□□
佐藤が仕事をサボってまで俺に聞きに来たのは最新技術を使って制作されたVRMMO RPG「Another World Frontier」というゲームの事だ。
この「Another World Frontier」は今世間を賑わす作品で数世代先の技術なんじゃないかと騒がれるほどにリアルで自由なゲームらしく男女年齢問わず人気のある作品らしい。
あくまで攻略サイトや3ch佐藤から見聞きした情報で特に佐藤はオーバーな話し方をする奴なのでそこまでの期待はしていない。まぁ面白いのは本当だろうから俺も購入した。
□□□□□□
仕事が終わり言葉通り速攻で帰宅し着替えもそこそこに家にあるカプセル型仮装ダイブ機に入り「Another World Frontier」を起動した。
———初めは何も無い黒い空間だったが仮想世界での俺のアバターが瞬時に構築され同時に周りが白く塗り潰されていく。
ピコン!そんな音と共に目の前に透けたウインドウが現れ———
“ようこそAnother World Frontierの世界へ“
男性とも女性ともつかない中性的な言葉と共に、周りの白い空間が別の物に瞬時に切り替わる。
それは街であったり城であったり、はたまた何処かの森、海や砂漠そしてそれぞれに住まう人やモンスター。おそらくこの「Another World Frontier」に実在するであろう風景を流しているのだろう。
“ここは剣と魔法が存在しモンスターが闊歩する世界です”
“ですがこの世界で貴方は自由です“
“必ずしも戦う必要はございません”
“剣を取り英雄になるも良し。槌を持ち物作りに励むも良し。動物あるいはモンスターと触れ合い心を癒すも良し”
“現実ではできない自由をこの世界で心ゆくまでお楽しみ下さい”
「これは凄い。」
この光景に圧巻して見ているとあっという間にオープニングは終わり
“それではこれより貴方のキャラクター設定を行います”
“まずは貴方の職業を決めてください”
その言葉と共に目の前には職業一覧が目の前に現れる。
「攻略サイトを見た時も思ったがかなりの数あるな。」
まずお決まりの[剣士][魔術師][銃士][薬師]に…[釣師]なんてのもある。
ただ俺は職業を予め決めておいたから悩む必要なし。
「錬金術師で決定」
“貴方の職業を錬金術師に決定しました”
“続いて貴方の種族を決めて下さい”
次は種族を決めると。
「にしても種族多いな」
お決まりの人族、獣人、エルフ、ドワーフは勿論選べるが獣人ひとつにしても何の動物の獣人かを選べるしダークエルフや変わったやつだと虫人なんてのもある。
佐藤が時間がかかると言っていたのはこの種族決めの事で、さまざまな種族があり見た目だけで決めるにしても迷うが何よりも迷わせるのは種族毎に全てステータスが違う事が悩む原因だ。
これは全てのステータスを見るだけで時間がかかる。
ここを適当にすれば追々自分が困ることになる可能性を考えると適当にはできないが……
これも攻略サイトで予め決めておいたから問題なし。攻略サイトさまさまだ。
「種族は人族で決定……」
これでキャラメイクは終わりだな。初めから職業と種族決めてたから早かったな。
“人族に決定しました”
“次は容姿の設定を行ってください“
“尚此処で決められたキャラクターの一部の容姿に関しましては今後一切の変更が出来ませんので予めご了承ください”
そうして目の前に今の現実の俺と全く同じアバターが目の前に現れた。
こういった仮想現実ゲームは色々とリアルであるが故のトラブルが存在する。その抑制の為に初期設定以降髪や目の色などは変更できても目の形や輪郭等は変更不可になっている。
「基本弄るのは面倒だからなぁ。」
髪と目の色だけ変えとけば良いな。それだけでもリアルな知り合いにあっても案外気づかれないモンだし。髪は灰色にして、目は赤か青が良いな。どっちにするか…
お?オッドアイにもできるのか……いやダメだ。オッドアイにしてみろ。この後会う佐藤になんて言われるか目に見えてる。ここは青色にしよう。
“容姿を決定しました”
“最後に「Another World Frontier」での貴方の名前を設定してください”
名前は鈴木だから……よし、今誰もが思ったであろう名前でいいかな。
「——…決定」
これでキャラ設定は終わりでこの設定でいいかどうかの確認作業を経て
「ログイン」
この日初めて俺は「Another World Frontier」の世界にダイブした。
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