雨の中の出会い

星海輝

文字の大きさ
1 / 1

出会い

しおりを挟む
とある森。雨が降りしきる中傘も差さずに歩く青年は、銀色の髪を濡らし着ている服や履いている靴もずぶ濡れになっていた。然し、そんな事は気にしてないというように青年は森の中央まで来ると立ち止まった。

「…赤ん坊?」

大きな木の下に赤子が捨てられているのを見付けては呟くように言った。こんな所に赤ん坊を捨てていくなんて最低な両親だと思いながら、赤ん坊が眠っている小さな籠に近付いた。

「……女の子、か。」

小さな籠の中で寝ている赤ん坊を見ると、青年はその赤ん坊が女の子だと気付いた。こんな誰もいない森の中で泣きもせず寝られる赤ん坊を初めて見た青年は、興味深そうに見ていたがこんな所でずっと寝たままでいたらきっと直ぐに死んでしまうだろうと考え、仕方なく自分の家に赤ん坊を連れて帰る事にした。そのまま赤ん坊に触るのは怖かったのか青年は、小さな籠事抱き上げ、そして、自分の家に帰っていった。
暫く歩いていると古びた家に着く。青年は、玄関の前で一度赤ん坊の様子を見る。赤ん坊は、未だにすやすやと気持ち良さそうに寝ている為か青年はこの子を連れて帰ってきて良かったと心の底から思っていた。もし、この子があのまま放置されていたならきっと直ぐに飢えた獣に襲われてしまっていただろう。そんな考えを振り払うように頭を振ると、髪から小さな水飛沫が跳ね赤ん坊の頬にぴちゃりと当たるが、赤ん坊は水飛沫が当たった事など関係なしに寝ていた。普通なら吃驚して起きるはずなのに、この子は、肝が据わってるのかはたまた鈍感なだけなのか色んな意味でこの子から目を離せなくなった青年は小さく溜め息を吐いてから、家の玄関のドアを開け中へと入った。

「……」

ソファーに赤ん坊が寝ている小さな籠を置いた後、直ぐに暖炉の火を付け濡れてしまった服を脱いで暖炉の前にあるソファーに掛けて乾かし、それから、椅子の背もたれに掛けてあるタオルを手に取り濡れている髪の毛を拭きながら衣装棚の中にある服を適当に選んで着替えた。

「……名前、決めなきゃな。」

着替え終えると、タオルを頭に被せたままソファーに座りちらりと赤ん坊を見詰め小さく独白をした。青年は、誰かに名前を付けるのは初めてなので緊張した面持ちでどんな名前にしようか考えたが、良い名前が思い浮かばずただ時間だけが過ぎていった。
  それから、数時間経つとやっと赤ん坊は目を覚ました。青年は、それに気付くと赤ん坊を見詰めた。

「…おはようさん。随分長いこと寝てたな?」

出来るだけ優しい声で話す青年に対し、赤ん坊は、青年の言葉をまだ理解出来ないので不思議そうな顔をしながらもにこにこ笑っていた。青年は、そんな赤ん坊の反応を見ては、まだ赤ん坊だから俺の言葉を理解する事は難しいかと考えた後、また、この赤ん坊の名前を考え始めた。

「…あ、うっ!」

赤ん坊は、青年の手を掴みたいのか必死に小さな手を動かし可愛らしい声で青年を呼ぶ様に声を出した。

「…ん?俺の手触りたいのか?…人の様に温かくないぞ?」

青年は、別に抱っこするわけじゃないし手ぐらい触らせてもいいかと思いそっと赤ん坊の手に触れた。そして、赤ん坊は嬉しそうにきゃっきゃっと笑った。

「…お前、鈍感なんだな。」

「…う?」

「いいや、何でもないさ。」

「あー、う!」

赤ん坊が自分の言葉に反応する様に声を出す為、青年はほんの少し嬉しく感じ小さく微笑むと赤ん坊はその笑みを見て更に嬉しそうに笑った。

「決めた。お前の名前は、ティーナにしよう。どうだ、可愛い名前だろう?」

「あー!」

「そうか。嬉しいか。…俺も気に入ってくれて嬉しいよ。ティーナ」

小さく微笑んで青年が言うと、ティーナは花のように笑った。そして、青年は、自分の名前はティーナがもう少し大きくなり言葉を理解出来るまでになったら教えてあげようと思ったのだった。

end
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

透明な貴方

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 政略結婚の両親は、私が生まれてから離縁した。  私の名は、マーシャ・フャルム・ククルス。  ククルス公爵家の一人娘。  父ククルス公爵は仕事人間で、殆ど家には帰って来ない。母は既に年下の伯爵と再婚し、伯爵夫人として暮らしているらしい。  複雑な環境で育つマーシャの家庭には、秘密があった。 (カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています)

処理中です...