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教会の礼拝堂に一人の少女とマリア様が向かい合い、少女は何か言いたげにマリア様をジッと見詰め、マリア様はその少女を見詰めては静かに微笑んでいるが少女が自分に何を伝えたいのか分からない為、優しく少女に話し掛けた。
「どうしたのですか?」
マリア様がそう問い掛けると、少女の肩はビクリと跳ねる。少し申し訳なさそうな顔をしながらもマリア様の問い掛けに少女は小さな声で答える。
「…わ、私、その、お、お母さんを助けたくて…どうしたらいいのか分からなくて、マリア様に聞きに来ました。」
「お母様を助けたい、ですか。」
「……はい。病気で苦しんでるお母さんを、助けたいんです。」
「お医者様にはお母様のご病気のこと言ってあるのですか?お医者様に診てもらった方がお母様のご病気も直ぐとは言わずとも少しずつ治ると思うのですが?」
「そ、それは、言ってあります。…診てもらって、お薬ももらってるんですけど、よ、良くならなくて。」
泣きそうな声で少女が答える。マリア様は、少し思案してから少女に声を掛ける。
「…そのお医者様が、ヤブ医者かもしれませんね。」
その言葉を聞いて少女の目には涙が溜まる。ずっと信じていた医者がヤブだと分かれば、泣きたくなるのも分かるとマリア様は心の中で思った後、続けて声を掛ける。
「大丈夫ですよ。そのお医者様は、直ぐに罰が当たります。…それから、貴女のお母様を助けてくださるお医者様も直ぐに見付かりお母様のご病気は少しずつですが良くなります。」
マリア様のその言葉を聞いて、少女は驚き目を丸くさせた後泣き出した。
「あ、ありがとうございます。」
泣きながら少女は、マリア様にお礼を言う。
「いいえ。…貴方に神のご加護があらんことを。」
それだけ言うと、マリア様は優しく微笑んだ。少女は、一礼してから礼拝堂から出ていく。少女の姿が見えなくなるまで見送ったマリア様は、小さく溜め息を吐いた。
「…弱者を狙っているお馬鹿な人が、何故、いなくならないのか不思議ですね。」
ぽつりと呟いた後、マリア様も礼拝堂を後にした。
―翌日
大きな悲鳴が街中に響く。その悲鳴に起こされた人々がぞろぞろと街の中心にある噴水広場に集まってくる。その中に、昨日マリア様に相談していた少女の姿も見えた。
「…あの人って。もしかして、お母さんを診てくれてたお医者様?」
噴水広場で倒れて動かなくなっている男性を見て、少女が呟くように言う。でも、もしかしたら、違う人かも知れないと思い、人々の間を縫ってもう少し見えやすい場所に移動する。
そして、もう一度、噴水広場で倒れて動かなくなっている男性を見る。少女は、確信する。あの人は、母を診ていた医者だと。
昨日の今日で、こんなことが起こるなんてと思いながらも、内心では、罰が当たって当然だと思ってしまった自分がいることに少女は驚く。それでも、これでお母さんをちゃんと助けてくれるお医者様に出会えると思い、その場を離れた。
それから、暫くして少女とその母親のもとにヤブではない医者が訪れ、少女の母親の病気は少しずつ良くなっていった。
その話が、マリア様の耳に届く。
「……良かったです。あの少女が、復讐に染まるのは見たくはないですからね。」
何やら意味深な言葉を発するマリア様に、側に居たシスターはどういう意味ですか?と言うように首を傾げる。
「ふふ、そのままの意味ですよ。」
優しく微笑みながらそう言うマリア様の目はどこか笑っていないように見えて、シスターはマリア様から目を逸らし自分の仕事に戻っていった。
マリア様は、今日も優しく微笑みながら悩める子羊を待つ。
end
「どうしたのですか?」
マリア様がそう問い掛けると、少女の肩はビクリと跳ねる。少し申し訳なさそうな顔をしながらもマリア様の問い掛けに少女は小さな声で答える。
「…わ、私、その、お、お母さんを助けたくて…どうしたらいいのか分からなくて、マリア様に聞きに来ました。」
「お母様を助けたい、ですか。」
「……はい。病気で苦しんでるお母さんを、助けたいんです。」
「お医者様にはお母様のご病気のこと言ってあるのですか?お医者様に診てもらった方がお母様のご病気も直ぐとは言わずとも少しずつ治ると思うのですが?」
「そ、それは、言ってあります。…診てもらって、お薬ももらってるんですけど、よ、良くならなくて。」
泣きそうな声で少女が答える。マリア様は、少し思案してから少女に声を掛ける。
「…そのお医者様が、ヤブ医者かもしれませんね。」
その言葉を聞いて少女の目には涙が溜まる。ずっと信じていた医者がヤブだと分かれば、泣きたくなるのも分かるとマリア様は心の中で思った後、続けて声を掛ける。
「大丈夫ですよ。そのお医者様は、直ぐに罰が当たります。…それから、貴女のお母様を助けてくださるお医者様も直ぐに見付かりお母様のご病気は少しずつですが良くなります。」
マリア様のその言葉を聞いて、少女は驚き目を丸くさせた後泣き出した。
「あ、ありがとうございます。」
泣きながら少女は、マリア様にお礼を言う。
「いいえ。…貴方に神のご加護があらんことを。」
それだけ言うと、マリア様は優しく微笑んだ。少女は、一礼してから礼拝堂から出ていく。少女の姿が見えなくなるまで見送ったマリア様は、小さく溜め息を吐いた。
「…弱者を狙っているお馬鹿な人が、何故、いなくならないのか不思議ですね。」
ぽつりと呟いた後、マリア様も礼拝堂を後にした。
―翌日
大きな悲鳴が街中に響く。その悲鳴に起こされた人々がぞろぞろと街の中心にある噴水広場に集まってくる。その中に、昨日マリア様に相談していた少女の姿も見えた。
「…あの人って。もしかして、お母さんを診てくれてたお医者様?」
噴水広場で倒れて動かなくなっている男性を見て、少女が呟くように言う。でも、もしかしたら、違う人かも知れないと思い、人々の間を縫ってもう少し見えやすい場所に移動する。
そして、もう一度、噴水広場で倒れて動かなくなっている男性を見る。少女は、確信する。あの人は、母を診ていた医者だと。
昨日の今日で、こんなことが起こるなんてと思いながらも、内心では、罰が当たって当然だと思ってしまった自分がいることに少女は驚く。それでも、これでお母さんをちゃんと助けてくれるお医者様に出会えると思い、その場を離れた。
それから、暫くして少女とその母親のもとにヤブではない医者が訪れ、少女の母親の病気は少しずつ良くなっていった。
その話が、マリア様の耳に届く。
「……良かったです。あの少女が、復讐に染まるのは見たくはないですからね。」
何やら意味深な言葉を発するマリア様に、側に居たシスターはどういう意味ですか?と言うように首を傾げる。
「ふふ、そのままの意味ですよ。」
優しく微笑みながらそう言うマリア様の目はどこか笑っていないように見えて、シスターはマリア様から目を逸らし自分の仕事に戻っていった。
マリア様は、今日も優しく微笑みながら悩める子羊を待つ。
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