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合格おまもり
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マナブは有名大学付属中学に合格したいと思っている。あの中学校に行くことができれば、マナブは無敵なのだ。何故無敵か? それは、いい大学、いい就職先が約束されているからだ。マナブは優秀な友達が欲しいと思っていた。そして、あの中学校の生徒だという勲章が欲しいだけだった。しかし、模擬試験はE判定しかとったことはなく、この先E判定以上を取ることはかなり難しいことは目に見えていた。きっとこのままでは不合格になってしまう。
有名大学付属高校に合格したいという一心でたそがれどきに心の中で叫んでみる。きっと不思議な店にたどりつけるはず。もう頼みのつなは都市伝説しかない!!
「有名大学付属高校に入学したいんだ」
と心の底から叫ぶ。光がまぶしい。何がおこったのだろうか? 目をつぶってしばらくその場で立ちつくす。
目を開けると、信じられないことだが、まわりの景色が変わっていた。看板には夕陽屋とかかれており、マナブをまちかまえていたようにレトロな建物が迎えてくれる。
「いらっしゃい」
誰に対しても、夕陽はそっけないあいさつをする。でも、客の心を読んでいるのかいつもばっちり合う商品を提案する。夕陽はやはりプロの仕事人なのだろう。
「合格できるお菓子とかグッズはないですか?」
「おまもりなんかどうかな?」
夕陽が持ったおまもりは、キーホルダータイプでランドセルにつけても違和感のないデザインだった。大きさも比較的小さくデザインも悪くない。
「中学受験するから、合格したいんだ。でも、今のままでは絶対に落ちるという成績の悪さなんだ」
「合格でいいのか? 頭がいい人になりたいとか成績優秀になりたいとかじゃないのか? 大学の合格や一流企業の内定っていうことだってありだろ」
「僕のねがいは有名中学校に合格したい、それだけだ。入学するだけでいいんだ」
「地元の中学校は嫌なのか?」
「僕、あまり友達がいなくて。実は、今の小学校の奴らは、ほとんどが地元の中学だから。そいつらと離れたいんだよね。逃げているって言われてもかまわないけどさ」
「有名中学校で必ずいい友達ができるとか楽しいとは限らないけどな。これをつけているだけで合格できるぞ。おまもりは50円だよ。ただし、合格したらそのおまもりは消えてしまうんだ」
「このおまもりは、君にとって素晴らしい友達なると思うよ」
「どういう意味?」
「このおまもりはおしゃべりなんだ」
「だから君の受験合格までいろいろアドバイスしてくれるし、口うるさいことも言うかもしれない。でも、これを身につけているだけで必ず合格する力がつくんだ」
「合格できるのならば、なんでもこい!」
少し調子に乗ったマナブは50円を支払うとおまもりを握って、落とさないように握りしめながら帰宅した。
「そんなに強くもたないでよ。僕の体が痛いんだけど」
おまもりは話しかけてきた。
「ねぇ、おまもりさん、有名中学付属高校に入学したいんだ。おねがい」
「まずは、マナブの生活リズムや勉強方法を見せてもらうよ。僕は受験のプロだからね。合格できるようにアドバイスするよ」
「え? 勉強しなくてもおまもりさえもっていれば合格できるんでしょ?」
「甘いな!! 合格できるように勉強を教えるのが合格おまもりなのさ」
「なんだ、家庭教師みたいな感じなのか。僕の学力をなにもしなくても上げてくれるのかと思ってたよ」
「はっきり言って、僕の指導は厳しいぞ。なんせ24時間ずっと君を監視しているんだから、1時間程度の家庭教師より、ずっと合格させられるってことさ」
おまもりは小さいくせに口うるさくスパルタな指導をしてくる。母親より100倍がみがみうるさい。24時間のおまもりによる監視生活は正直苦しい。おまもりをつけて受験する、たったそれだけで合格すると思っていたのだが、甘かった……。
おまもりがうるさいので、道端に捨てたのだが、なぜかマナブの元に帰ってきてしまう。いやいやながら毎日勉強していた。やらざるおえなかったと言ったほうが正しい。わからないところがあればおまもりがじっくりわかるまで教えてくれる。一種の師弟関係のような友情のようなきずながマナブの心に生まれていた。おまもりがいてあたりまえの生活が半年ほど続いた。何度も逃げ出しそうになったが、おまもりの強引な力でマナブは成し遂げることができた。そして、見事マナブは有名中学校に合格した。そして、合格を確認すると、おまもりはあとかたもなく消えてしまった。
その瞬間、不合格だったらおまもりが消えなかったのではないかとマナブは悔いるような気持ちに襲われた。でも、どんなときも努力を怠らず、自分が今日より明日成長するべきだというおまもりの教えは消えなかった。しばらく、マナブはおまもりを失ったことで悲しい気持ちの海に沈んでいた。でも、これからを見て前進しなければいけないということを思い、悲しみに打ち勝っていた。
♢♦♢♦♢
「ふわわ、合格した後が重要なのに、あの子、合格すればいいって言ってたな。地元の中学校で新しい友達ができるかもしれないのに」
「有名中学は合格してからが大変らしいふぁ」
「あそこは優秀な生徒の集まりだけれど、おまもりのおかげで根性をきたえられたマナブはきっとうまくやっていけると思うぞ。高校や大学で学びたいことがある人のほうが成績も伸びるからな」
「満足したらそこで成長って止まるらしいふぁ」
「自分の力で成し遂げた人のほうが成功しているっていうことをおまもりが身をもって教えてくれたんだろうな。マナブはこれからはおまもりがいなくてもきっと頑張ることができる根性が身に着いたってことだ」
「夕陽はマナブを変えるためにあのおまもりを売ったふぁか? 身につけているだけで合格できるおまもりもあるのに」
合格だけできるおまもりのほうをふわわが指をさす。
「さあ、偶然いい方向にいっただけだよ。俺は正義でも悪でもないから。合格だけさせてもよかったけれど、その後のバッドエンドが目に見えているからな。マナブはおまもりがいなくなってその寂しさに打ち勝てたかな。さてと、俺はマナブのその後を人生の書庫で読んでくるから、店番たのんだぞ」
「人生はお別れのくりかえしふぁ」
そう言うと、夕陽は人生の書庫の部屋へ行き、読書をはじめた。
「次の運命の赤い糸のはなしは、マナブのお姉ちゃんの話らしいぞ」
そう言った夕陽は楽しそうにページをめくった。
有名大学付属高校に合格したいという一心でたそがれどきに心の中で叫んでみる。きっと不思議な店にたどりつけるはず。もう頼みのつなは都市伝説しかない!!
「有名大学付属高校に入学したいんだ」
と心の底から叫ぶ。光がまぶしい。何がおこったのだろうか? 目をつぶってしばらくその場で立ちつくす。
目を開けると、信じられないことだが、まわりの景色が変わっていた。看板には夕陽屋とかかれており、マナブをまちかまえていたようにレトロな建物が迎えてくれる。
「いらっしゃい」
誰に対しても、夕陽はそっけないあいさつをする。でも、客の心を読んでいるのかいつもばっちり合う商品を提案する。夕陽はやはりプロの仕事人なのだろう。
「合格できるお菓子とかグッズはないですか?」
「おまもりなんかどうかな?」
夕陽が持ったおまもりは、キーホルダータイプでランドセルにつけても違和感のないデザインだった。大きさも比較的小さくデザインも悪くない。
「中学受験するから、合格したいんだ。でも、今のままでは絶対に落ちるという成績の悪さなんだ」
「合格でいいのか? 頭がいい人になりたいとか成績優秀になりたいとかじゃないのか? 大学の合格や一流企業の内定っていうことだってありだろ」
「僕のねがいは有名中学校に合格したい、それだけだ。入学するだけでいいんだ」
「地元の中学校は嫌なのか?」
「僕、あまり友達がいなくて。実は、今の小学校の奴らは、ほとんどが地元の中学だから。そいつらと離れたいんだよね。逃げているって言われてもかまわないけどさ」
「有名中学校で必ずいい友達ができるとか楽しいとは限らないけどな。これをつけているだけで合格できるぞ。おまもりは50円だよ。ただし、合格したらそのおまもりは消えてしまうんだ」
「このおまもりは、君にとって素晴らしい友達なると思うよ」
「どういう意味?」
「このおまもりはおしゃべりなんだ」
「だから君の受験合格までいろいろアドバイスしてくれるし、口うるさいことも言うかもしれない。でも、これを身につけているだけで必ず合格する力がつくんだ」
「合格できるのならば、なんでもこい!」
少し調子に乗ったマナブは50円を支払うとおまもりを握って、落とさないように握りしめながら帰宅した。
「そんなに強くもたないでよ。僕の体が痛いんだけど」
おまもりは話しかけてきた。
「ねぇ、おまもりさん、有名中学付属高校に入学したいんだ。おねがい」
「まずは、マナブの生活リズムや勉強方法を見せてもらうよ。僕は受験のプロだからね。合格できるようにアドバイスするよ」
「え? 勉強しなくてもおまもりさえもっていれば合格できるんでしょ?」
「甘いな!! 合格できるように勉強を教えるのが合格おまもりなのさ」
「なんだ、家庭教師みたいな感じなのか。僕の学力をなにもしなくても上げてくれるのかと思ってたよ」
「はっきり言って、僕の指導は厳しいぞ。なんせ24時間ずっと君を監視しているんだから、1時間程度の家庭教師より、ずっと合格させられるってことさ」
おまもりは小さいくせに口うるさくスパルタな指導をしてくる。母親より100倍がみがみうるさい。24時間のおまもりによる監視生活は正直苦しい。おまもりをつけて受験する、たったそれだけで合格すると思っていたのだが、甘かった……。
おまもりがうるさいので、道端に捨てたのだが、なぜかマナブの元に帰ってきてしまう。いやいやながら毎日勉強していた。やらざるおえなかったと言ったほうが正しい。わからないところがあればおまもりがじっくりわかるまで教えてくれる。一種の師弟関係のような友情のようなきずながマナブの心に生まれていた。おまもりがいてあたりまえの生活が半年ほど続いた。何度も逃げ出しそうになったが、おまもりの強引な力でマナブは成し遂げることができた。そして、見事マナブは有名中学校に合格した。そして、合格を確認すると、おまもりはあとかたもなく消えてしまった。
その瞬間、不合格だったらおまもりが消えなかったのではないかとマナブは悔いるような気持ちに襲われた。でも、どんなときも努力を怠らず、自分が今日より明日成長するべきだというおまもりの教えは消えなかった。しばらく、マナブはおまもりを失ったことで悲しい気持ちの海に沈んでいた。でも、これからを見て前進しなければいけないということを思い、悲しみに打ち勝っていた。
♢♦♢♦♢
「ふわわ、合格した後が重要なのに、あの子、合格すればいいって言ってたな。地元の中学校で新しい友達ができるかもしれないのに」
「有名中学は合格してからが大変らしいふぁ」
「あそこは優秀な生徒の集まりだけれど、おまもりのおかげで根性をきたえられたマナブはきっとうまくやっていけると思うぞ。高校や大学で学びたいことがある人のほうが成績も伸びるからな」
「満足したらそこで成長って止まるらしいふぁ」
「自分の力で成し遂げた人のほうが成功しているっていうことをおまもりが身をもって教えてくれたんだろうな。マナブはこれからはおまもりがいなくてもきっと頑張ることができる根性が身に着いたってことだ」
「夕陽はマナブを変えるためにあのおまもりを売ったふぁか? 身につけているだけで合格できるおまもりもあるのに」
合格だけできるおまもりのほうをふわわが指をさす。
「さあ、偶然いい方向にいっただけだよ。俺は正義でも悪でもないから。合格だけさせてもよかったけれど、その後のバッドエンドが目に見えているからな。マナブはおまもりがいなくなってその寂しさに打ち勝てたかな。さてと、俺はマナブのその後を人生の書庫で読んでくるから、店番たのんだぞ」
「人生はお別れのくりかえしふぁ」
そう言うと、夕陽は人生の書庫の部屋へ行き、読書をはじめた。
「次の運命の赤い糸のはなしは、マナブのお姉ちゃんの話らしいぞ」
そう言った夕陽は楽しそうにページをめくった。
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