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第一章
平行世界
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俺が戻ってきた時代が、あの消えた時代と同じものだったのかどうかはわからない。
しかし不思議な体験をしてきたことは事実だし、それを他人に語る気もない。
どうせ誰も信じてはくれないだろうから。
ただ一つ不憫なのは、あの世界に残してきたことになったゆきと娘のうめだ。
突然いなくなったおとっつぁんに恨みを抱いているかもしれない。
向うで生活した6年間はまるで夢のようだった。
あの時、会社の仲間3人で飛騨の位山に登山したのは、1998年だった。
何回か一緒に全国の山を登った気心のしれた仲間同士での山行だった。
今思い起こせば、そのころはまだバブルが弾けて大型倒産があったが、まだ良かったと思う。
その後は、長期デフレや東北の震災、原発の事故、そして2020年に発生した新型ウィルスによる景気の後退と、日本にも自分にとっても良いことはほとんどなかったと言える。
当時子供もまだ小さくて仕事が忙しく、子育ては嫁まかせでクタクタになるまで毎日働きづめの日々だった。
年に1度ゴールデンウィークに行くこの泊りがけの登山旅行が楽しみであった。
あの日も五月晴れの気持ちの良い日だった。
大阪から来た同期を迎えてから車で高速で高山まで飛ばした。
2時間半ほどで、登山口のスキー場まで着いて登山を始めた。
登山口には、鳥居がありその向こうには何故か神社ではなくて、なんだかUFOのような丸い銀色の円盤型のものがある。
大きさでいうと小さめの家くらいあり、銀色に光るまん丸の円盤。
その円盤の手前両側には狛犬ならぬ人間の顔を持つ緑色の龍が両側に鎮座している。
摩訶不思議でこんな神社は見た事がないなあと話しながら、みんなで写真を撮ってから登山開始することにした。
山自体は大した勾配もなく途中にある大きな名前のついた岩を見ながら登ると、1時間半ほどで頂上に着いた。
ここは分水嶺となっており、水上神社の奥の院であり、また竹内宿禰の古文書にも出てくる日本最古のパワースポットとも言われている。
頂上付近にて途中のSAで買ってきたお握りで昼食を取り、そのまま早めに本日の宿まで行こうと下山しかけた時だった。
神聖な山で不謹慎ではあったが、小用を催してしまい、下山途中の薮の中に入って用を足した。
で、降ろしたズボンを上げたその時 目の前をトンボが横切り、それを見てた俺は迂闊にも浮石に載せた右足を滑らせてしまった。
そしてそのまま谷に落ちた。
はずだった。 しかし。
目眩がする。
ぐるぐると回って、落ちていく感覚はあった。
そして意識がなくなった。
ちょっとお前さん
大丈夫かい?
しっかりおし
近くで声が聞こえてきた。
目を開けてみたら、眩しい夕陽が飛び込んできて、気が付いたら草むらに横たわっていた。
肩を揺すられた方を見ると、若い女子 着物を着た女性に声をかけられていた。
別段体に怪我をした様子もなくホッとした。
しかし、それも一瞬であり直ぐに信じられない現実を知ることになるのだった。
しかし不思議な体験をしてきたことは事実だし、それを他人に語る気もない。
どうせ誰も信じてはくれないだろうから。
ただ一つ不憫なのは、あの世界に残してきたことになったゆきと娘のうめだ。
突然いなくなったおとっつぁんに恨みを抱いているかもしれない。
向うで生活した6年間はまるで夢のようだった。
あの時、会社の仲間3人で飛騨の位山に登山したのは、1998年だった。
何回か一緒に全国の山を登った気心のしれた仲間同士での山行だった。
今思い起こせば、そのころはまだバブルが弾けて大型倒産があったが、まだ良かったと思う。
その後は、長期デフレや東北の震災、原発の事故、そして2020年に発生した新型ウィルスによる景気の後退と、日本にも自分にとっても良いことはほとんどなかったと言える。
当時子供もまだ小さくて仕事が忙しく、子育ては嫁まかせでクタクタになるまで毎日働きづめの日々だった。
年に1度ゴールデンウィークに行くこの泊りがけの登山旅行が楽しみであった。
あの日も五月晴れの気持ちの良い日だった。
大阪から来た同期を迎えてから車で高速で高山まで飛ばした。
2時間半ほどで、登山口のスキー場まで着いて登山を始めた。
登山口には、鳥居がありその向こうには何故か神社ではなくて、なんだかUFOのような丸い銀色の円盤型のものがある。
大きさでいうと小さめの家くらいあり、銀色に光るまん丸の円盤。
その円盤の手前両側には狛犬ならぬ人間の顔を持つ緑色の龍が両側に鎮座している。
摩訶不思議でこんな神社は見た事がないなあと話しながら、みんなで写真を撮ってから登山開始することにした。
山自体は大した勾配もなく途中にある大きな名前のついた岩を見ながら登ると、1時間半ほどで頂上に着いた。
ここは分水嶺となっており、水上神社の奥の院であり、また竹内宿禰の古文書にも出てくる日本最古のパワースポットとも言われている。
頂上付近にて途中のSAで買ってきたお握りで昼食を取り、そのまま早めに本日の宿まで行こうと下山しかけた時だった。
神聖な山で不謹慎ではあったが、小用を催してしまい、下山途中の薮の中に入って用を足した。
で、降ろしたズボンを上げたその時 目の前をトンボが横切り、それを見てた俺は迂闊にも浮石に載せた右足を滑らせてしまった。
そしてそのまま谷に落ちた。
はずだった。 しかし。
目眩がする。
ぐるぐると回って、落ちていく感覚はあった。
そして意識がなくなった。
ちょっとお前さん
大丈夫かい?
しっかりおし
近くで声が聞こえてきた。
目を開けてみたら、眩しい夕陽が飛び込んできて、気が付いたら草むらに横たわっていた。
肩を揺すられた方を見ると、若い女子 着物を着た女性に声をかけられていた。
別段体に怪我をした様子もなくホッとした。
しかし、それも一瞬であり直ぐに信じられない現実を知ることになるのだった。
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