婚約破棄された氷の令嬢 ~偽りの聖女を暴き、炎の公爵エクウスに溺愛される~

ふわふわ

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第7話:荒廃したフロスト領

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第7話:荒廃したフロスト領

フロスト領の村は、雪に埋もれた廃墟のようだった。  
古い木造の家々が並び、屋根は雪で崩れかけている。  
道は凍りつき、歩くたびに足音が響く。  
住民たちは家の中から、怯えた目で私を見ていた。  
子供の泣き声が、風に混じって聞こえる。

私は村の中央広場へ向かった。  
そこに、エクウスが立っていた。  
彼の周囲だけ、雪が溶け、地面が露わになっている。  
炎の魔法で暖を取っているのだろう。  
「領民を集めろ」  
エクウスが低く言った。  
私は頷き、声を張った。  
「皆さん、集まってください!  
私は新しい領主、アイシスです」  

ゆっくりと、住民たちが集まってきた。  
老若男女、皆やつれていた。  
顔は青白く、服は薄く、凍傷を負った者もいる。  
一人の老婆が、震える声で言った。  
「領主様……本当に、助けてくれるのか?」  
私は静かに頷いた。  
「はい。  
これからは、私がこの領地を立て直します」  

周囲から、ため息のようなものが漏れた。  
誰も信じていない。  
当然だ。  
過去の領主は、税だけ取り立てて去っていった。  
フロスト領は、忘れられた土地だった。

私は深呼吸し、前世の知識を思い浮かべた。  
「まず、食糧です。  
温室を作れば、冬でも野菜が育ちます」  
住民たちが顔を見合わせる。  
「温室……?」  
「ガラスと暖房で、雪を防ぎます。  
トマト、ジャガイモ、キャベツ……すぐに収穫できます」  

老婆が目を丸くした。  
「そんなものが、冬に育つのか?」  
「はい。  
私が魔法で暖を取ります」  
私は手を広げ、氷魔法を制御して小さな氷の結晶を浮かべた。  
それらは光を反射し、暖かい輝きを放つ。  
住民たちの目が、輝き始めた。

エクウスが静かに言った。  
「俺の炎で、暖房を補う。  
協力すれば、可能だ」  
彼の言葉に、住民たちが少しずつ頷く。  
「炎の公爵様が……?」  
「本当に、助けてくれるのか?」  

私は一歩前に出た。  
「信じてください。  
まずは、村の中心に温室を作ります。  
材料は、近くの森から木材を切り出して。  
明日から始めましょう」  

住民の一人が、勇気を出して言った。  
「領主様……私たちに、何をすればいい?」  
私は微笑んだ。  
「皆で力を合わせて。  
木材を集め、土を運び、種を植える。  
皆が生きるために、です」  

その言葉が、村に小さな火を灯した。  
住民たちが、互いに顔を見合わせる。  
希望の光が、わずかに見えた。

エクウスが私のそばに寄り、囁いた。  
「よくやった。  
君は、領主の素質がある」  
私は彼を睨んだ。  
「褒められても、嬉しくない。  
これは、私の領地です」  
彼は小さく笑った。  
「わかっている。  
だが、君の力だけでは足りない。  
俺も、力を貸す」  

私は無言で頷いた。  
この男は、危険だが、必要だ。  
領地を救うために。

その夜、私は村はずれの古い館に落ち着いた。  
埃だらけの部屋を、氷魔法で掃除し、暖を取る。  
窓から外を見ると、住民たちが火を囲んで話している。  
笑い声が、聞こえた。  
久しぶりの、温かい笑い声。

胸の氷魔法が、静かに脈打つ。  
「ここから、始まる」  
私は呟き、目を閉じた。  
明日から、本当の戦いが始まる。

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