婚約破棄された氷の令嬢 ~偽りの聖女を暴き、炎の公爵エクウスに溺愛される~

ふわふわ

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第13話:ルークスとセナの登場

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第13話:ルークスとセナの登場

フロスト領の村は、温室の完成とともに活気づいていた。  
雪の降る朝、住民たちは温室で芽吹いた新作物を眺め、笑顔で世話をしていた。  
私は村の広場で、氷魔法の結晶を浮かべて子供たちに遊ばせていた。  
「わあ、きれい!」  
子供の一人が手を伸ばすと、結晶が優しく光る。  
私の魔法は、村の象徴になりつつあった。

その時、村の入り口から馬の蹄の音が響いた。  
二人の騎士が雪道を駆けてくる。  
一人は銀の鎧を着た金髪の青年、もう一人は黒いローブの魔導師風の男。  
馬を止め、広場に降り立つ。  
「アイシス様!」  
金髪の青年が敬礼し、膝をついた。  
「騎士団ルークスと申します。  
王都から、忠誠を誓いに参りました」  

私は驚いて立ち上がった。  
「ルークス……?  
どうしてここに?」  
ルークスは真剣な瞳で私を見上げた。  
「王宮の婚約破棄の噂を聞き、ヴァレンティン家を離れた者として、アイシス様をお守りしたく存じます」  
彼の声は熱く、揺るぎない。  
幼い頃、王宮で何度か顔を合わせた記憶がある。  
忠実で、正義感の強い騎士だった。

隣の魔導師が静かに頭を下げた。  
「魔導師セナです。  
アイシス様の氷魔法の覚醒を感じ、参りました」  
セナの目は深い紫色で、謎めいている。  
彼はローブの袖から小さな魔導書を取り出し、微笑んだ。  
「私の魔法は、支援に特化しています。  
領地の防衛、魔法の研究……お役に立てます」  

私は二人を見回した。  
「ありがとう。  
フロスト領は、まだ貧しいけど……一緒に守ってくれるなら、嬉しいわ」  
ルークスは立ち上がり、胸に手を当てた。  
「命に代えても、お守りします!」  
セナは穏やかに頷く。  
「私も、アイシス様の力になりたい」  

住民たちが集まり、二人の登場にざわつく。  
「騎士様と魔導師様が……!」  
「領地が本格的に強くなるぞ!」  
子供たちが興奮して駆け寄る。  
ルークスは優しく頭を撫で、セナは小さな魔法の光で花火のように遊ばせた。  
村に、温かい空気が流れた。

夕方、館で四人で話した。  
エクウスも加わり、暖炉の前に座る。  
ルークスが熱く語る。  
「王都では、エマの聖女の噂が広がっています。  
アイシス様を悪女と貶める声も……」  
私は苦笑した。  
「予想通りね。  
でも、ここでは関係ないわ」  

セナが静かに言った。  
「王宮の魔導師ドミニクが、エマを支えています。  
偽りの力で、宮廷を操っている可能性が」  
エクウスが低く唸る。  
「俺の呪いも、ドミニクの仕業かもしれない」  
私は頷いた。  
「なら、もっと強くなりましょう。  
ルークス、セナ……あなたたちの力、貸して」  

ルークスは目を輝かせた。  
「もちろんです!  
アイシス様のためなら、何でもします」  
セナは微笑み、静かに言った。  
「私も、アイシス様の側にいたい」  
その言葉に、甘い緊張が流れた。  
ルークスとセナの視線が、私に注がれる。  
エクウスが小さく咳払いし、肩を抱いた。  
「俺の妻だぞ」  
ルークスは慌てて頭を下げ、セナはくすりと笑う。  
逆ハーレムのような空気。  
でも、私は微笑んだ。  
「みんなで、フロスト領を守りましょう」  

夜、館の窓から雪景色を見た。  
温室の灯りが、優しく輝く。  
ルークスとセナの加入で、領地はさらに強くなった。  
私の心も、少しずつ温かくなっていた。  
結婚儀式まで、あと数日。  
運命は、ゆっくりと動き始めている。
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