婚約破棄された氷の令嬢 ~偽りの聖女を暴き、炎の公爵エクウスに溺愛される~

ふわふわ

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第21話:契約結婚の儀式

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第21話:契約結婚の儀式

フロスト領の村は、雪に覆われた静かな朝を迎えていた。  
温室の灯りが優しく揺れ、住民たちは広場に集まっていた。  
今日は、アイシスとエクウスの結婚儀式の日。  
形式だけの契約結婚――と二人とも思っていたはずだったが、村全体が祝福ムードに包まれていた。  
住民たちが手作りの飾り付けをし、温室から採れた新鮮なトマトやハーブでテーブルを飾る。  
子供たちが花びらを撒き、笑い声が響く。  
「領主様と公爵様、おめでとう!」  
老婆が涙を拭きながら言う。  
「これで、領地はもっと強くなるわね」  

私は村の中央に設けられた祭壇の前に立っていた。  
銀色のドレスを纏い、銀髪を結い上げ、胸に小さな氷の花を飾る。  
エクウスは黒い礼装に赤いマントを羽織り、炎の気配を抑えて立っている。  
彼の赤い瞳が、私を優しく見つめる。  
「緊張しているか?」  
私は小さく首を振り、微笑んだ。  
「少し……でも、嬉しいわ」  

ルークスとセナが脇に立ち、証人として見守る。  
ルークスは少し寂しげに、セナは穏やかに微笑む。  
住民たちが輪になって囲み、静かに儀式が始まった。  
村の長老が前に出て、言葉を紡ぐ。  
「今日、ここに集う者たちは、アイシス・ヴァレンティンとエクウス・ドラゴンの結びつきを祝福する。  
二人は互いの力を補い合い、フロスト領を守る。  
永遠の絆を誓うか?」  

私はエクウスを見つめ、静かに答えた。  
「誓います。  
私の氷で、あなたの炎を守る」  
エクウスは私の手を握り、低く言った。  
「誓う。  
俺の炎で、君を守る」  

長老が頷き、二人に指輪を差し出した。  
氷の結晶と炎のルビーが嵌まった、特別な指輪。  
エクウスが私の左薬指に指輪を滑らせ、優しくキスをした。  
「アイシス……俺の妻だ」  
その瞬間、胸の氷魔法が熱く脈打った。  
氷と炎が完全に共鳴し、周囲に青と赤の光が広がる。  
住民たちが歓声を上げ、雪が舞う中、花びらが降り注ぐ。  

儀式が終わると、祭りが始まった。  
温室の野菜を使った料理が並び、酒が振る舞われる。  
住民たちが二人を囲み、祝福の言葉を浴びせる。  
「領主様、公爵様、幸せになってください!」  
私はエクウスと手をつなぎ、皆に頭を下げた。  
「ありがとう。  
これからも、フロスト領を守りましょう」  

夜、館に戻った私たちは、暖炉の前に座った。  
エクウスが私の腰を抱き寄せ、耳元で囁く。  
「形式だけ……と言ったが、今は違う」  
私は彼の胸に顔を埋めた。  
「ええ……私もよ」  
彼の唇が、私の唇に重なる。  
優しく、熱いキス。  
炎の熱さと氷の冷たさが混じり合い、甘い吐息が漏れる。  
「アイシス……愛している」  
エクウスの声は低く、溺愛に満ちていた。  
私は彼の首に腕を回し、応えた。  
「私も……エクウス」  

部屋の灯りが揺れ、雪が窓を叩く。  
結婚の夜は、静かに、しかし熱く過ぎていった。  
胸の氷魔法が、彼の炎と完全に一つになる。  
呪いは完全に解け、二人の力は新たな領域に達した。  
氷炎の魔法が、館を優しく包む。  

翌朝、窓から見える村は、雪に輝いていた。  
温室の芽が、さらに伸びている。  
私はエクウスの胸で目を覚まし、微笑んだ。  
「これから、王都へ行くわ」  
彼は私の髪を撫で、頷いた。  
「俺たちで、エマを倒す」  
溺愛の始まりは、逆転の始まりでもあった。  
フロスト領の女王は、夫とともに、王国を変える。
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