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第一部
第4章
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第4章
---
「西の国境砦に、古代種のドラゴンが現れたとのことです!」
報せが屋敷に届いたのは、昼下がり。わたくしがティータイムの用意をしていたときのことだった。
急ぎ足で報告に現れた騎士の顔は青ざめていた。
「古代種……まさか、王都に近づいてくるのでは?」
クラウス様の表情が険しくなる。
「すでに進軍中の報せもあります。王都へ至る前に迎撃せねばなりません」
「……出陣の準備を整えろ。私も向かう」
「かしこまりました!」
わたくしは、お盆に乗せたティーカップをそっとテーブルに置いた。
「……クラウス様」
「シオン。屋敷の警備を強化するよう、メイド長に指示しておいてくれ」
「……はい」
わたくしは頷きながらも、胸がざわついていた。
クラウス様は、どんな相手にも正面から向き合う。だからこそ、彼は尊敬され、慕われている。
けれど。
(相手は……ドラゴン。しかも、古代種ですのよ……!?)
危険すぎる。いくらクラウス様でも、無事では済まないかもしれない。
じりじりと胸の奥が熱くなる。
「……わたくし、見送っているだけなんてできませんわ」
---
その夜。屋敷の片隅、厩舎に向かったわたくしは、そこにいた“相棒”を見上げて言った。
「ロシナンテ、出番ですわよ」
“ヒヒーン”と返事のような鳴き声。
ロシナンテは、わたくしの特別な魔法生物。見た目はロバ、性格はマイペース。だが、ひとたび命じれば――
「飛行モード、お願いできますか?」
すると、背中からにゅっと白く美しい羽が生え、パタパタと風を巻き起こす。
「ふふ……ペガサス風ロバですわね」
――童話のような光景。
でも、この姿はわたくしにとっての“戦装備”でもある。
わたくしはマントを翻し、ロシナンテの背にまたがった。
「空へ、お願い、ロシナンテ!」
---
風を切って、夜空を飛ぶ。
星空の下、わたくしとロシナンテは雲の間をすり抜けて、国境方面へ向かっていた。
胸には“ベータ・ペンダント”――これが、わたくしの魔法の力の鍵。
「クラウス様が、無茶をなさらないうちに……!」
願いはひとつだけ。
――夫を、家族を、守ること。
---
やがて、地平線の向こうに、砦の炎と赤い影が見えた。
――ドラゴン。
その姿はまさに、災厄の化身。巨大な翼、尾を振るうたびに建物が吹き飛び、兵士たちの防衛線をなぎ払っていた。
「まずいっ……!」
わたくしは上空から状況を見渡し、クラウス様の姿を探した。
――いた!
前線で、兵を守りながら剣を振るうクラウス様の姿。その姿に、胸が高鳴る。
「……旦那様を、いじめるなんて、絶対に許しませんわよ!」
---
ロシナンテを急降下させ、戦場の上空から叫ぶ。
「――ドラゴン! わたくしの愛する旦那様をいじめるなど、許しませんわ!」
兵士たちが空を見上げる。
そこには、空飛ぶロバと、銀髪の小さな少女の姿。
「お、おい、あれは!? 飛んでるのはロバ……?」
「いや、あれは……リーデン公爵夫人……!?」
混乱と驚きの中、わたくしは魔法を発動する。
ペンダントに手を当て、詠唱を口にする。
「理性の鍵をもって、力の檻を結び――収束せよ、対象に!」
魔力が収束し、ぽよよーんと謎の音が鳴り響く。
「――縮小魔法《ちっちゃくなーれ》!」
光がドラゴンを包み込む。
その巨体が……みるみるうちに小さく、まるでぬいぐるみのように縮んでいく。
翼は丸まり、牙は丸くなり、鋭い爪もふわふわに。
「ク……クァ?」
最後には、ちょこんと地面に座る、手のひらサイズのミニドラゴンに。
---
「……やったのか?」
「し、縮んだ!? ドラゴンがぬいぐるみに!?」
「なんだあの魔法……すごすぎる……」
兵士たちが歓声を上げる中、ミニドラゴンがちょこちょこと、わたくしの方へ走ってきた。
「え、なついてる?」
「きゃ、きゃわいい……!」
小さくなったドラゴンは、足元にすり寄って体をすりすり。
「……な、懐かれてしまいましたわ。ど、どうしましょう……」
地上では、クラウス様がぽかんとわたくしを見上げている。
わたくしは小さく手を振って、笑った。
---
「――旦那様、飼ってもいいですか?」
戦場の片隅。ぬいぐるみのようになったミニドラゴンが、わたくしの足元で「キュー」と可愛く鳴く。
その瞳はつぶらで、ぱたぱたと羽を揺らして甘えるように体を擦り寄せてくる。
完全に、わたくしに懐いてしまったようですわ。
そんな様子を見ていたクラウス様は、険しかった表情を少しだけ緩め、困ったように言った。
「……いや、しかし、犬や猫じゃあるまいし。これは、ドラゴンだぞ?」
「でも、見てください、こんなに大人しくなりましたわ」
わたくしは、ミニドラゴンをそっと抱き上げて見せた。
ふわふわで温かく、まるでぬいぐるみを抱いているような軽さと柔らかさ。
「“キュッ”」
「可愛いでしょう? それに、吠えたり暴れたりもせず、お利口ですわよ?」
「……たしかに、見た目はぬいぐるみだが……」
「おまけに魔力を感知する警戒能力まであるらしいですの。見張りにもなります」
「……なるほど。番犬ならぬ、番ドラゴンか」
「そうですわ。立派な戦力ですわよ?」
クラウス様はしばし沈黙し、そして――小さくため息をついた。
「……カワイイのは、お前だ。シオン」
「や、や、やめてくださいませ! 戦場でのろけは――」
「――将軍、のろけるのは家でやってください!」
近くにいた副官の鋭いツッコミに、クラウス様がわずかに顔を赤らめた。
わたくしも、思わず吹き出してしまった。
---
帰り道。ロシナンテの背にわたくし、クラウス様の馬車、そして後方をてこてこ飛ぶようについてくるミニドラゴン。
まさかの隊列に、町の人々も目を丸くしていた。
「あ、あれ……リーデン公爵家の奥様?」
「背中に乗ってるのは、まさか……ロバ?」
「いや、飛んでる……飛んでるよ!? ロバが!」
「ていうか、あの奥様の足元にいるの、ミニサイズのドラゴンじゃない!?」
「ぬいぐるみ!? 本物!? わからん……けどかわいい……!」
ざわめく中、わたくしは優雅に手を振ってみせた。
「どうも、ごきげんようですわー」
---
そして、屋敷に帰ると――
「……ママ、それ……なに?」
最初に反応したのは、ユリウス様だった。
「ただいま戻りました。こちらは、ミニドラゴンですの。戦場で出会いました」
「拾ってきたの……? って、ドラゴンって拾うもんなの!?」
「元は暴れん坊でしたけれど、“ちっちゃくなーれ”でこの通り。今はすっかりおとなしいですわ」
「キュッ」
ミニドラゴンは、ユリウス様の足元でくるりと回ってから、ごろんとお腹を見せる。
「……くそ、可愛いじゃん……」
「でしょ?」
「え、ママ、それ飼うつもりなの?」
ルティア様が眉をひそめる。
「生き物を飼うって責任が伴うのよ? 大丈夫なの?」
「もちろん、わたくしが責任をもってお世話いたしますわ。エサやお風呂、お昼寝もきちんと管理します」
「お昼寝……?」
「はい、ミニドラゴンのお昼寝は大切ですの。特に魔力安定のためには」
「なんだそれ、初耳なんだけど……?」
「今、わたくしが考えました」
「考えたのかよ!?」
---
その夜。
ミニドラゴンは、わたくしの部屋のソファで丸くなって寝ていた。
スースーと寝息を立てて、まるでぬいぐるみのように丸まりながら。
その姿を見て、わたくしは小さく息を吐く。
「……守るものが、また増えてしまいましたわね」
ドラゴン、家族、ロバ……そして屋敷の人々。
たくさんの“大切な存在”に囲まれて、わたくしはママとして生きている。
「だけど、それが幸せ、ですわ」
---
クラウス様がそっと部屋をノックして入ってきた。
「……寝たか?」
「ええ。可愛い寝顔ですわよ。見てください」
クラウス様もそっと覗き込んで、肩の力を抜いたように笑った。
「不思議なものだな。あれが、かつて我々を苦しめた存在とは」
「ふふ。魔法の力って、時にこんな奇跡も起こせますのね」
「それを起こしたのは魔法じゃない。“君”だ、シオン」
「……また甘いことを……」
「本心だよ。君がいてくれて、良かったと思っている」
「……わたくしも、クラウス様の妻で良かったと思っておりますわ」
穏やかな夜。
眠るミニドラゴンと、微笑み合うふたりの姿に、静かで暖かな時間が流れていた。
---
「――ミニドラゴン、強いなあ」
屋敷の門番がそう呟いたのは、ある晴れた午後のことだった。
リーデン公爵邸の正門前。
平和そのものの風景に、だが“異物”がひとつ。
門の横にちょこんと座る、ふわふわのミニドラゴン――通称“ドラちゃん”が、通行人をじっと見張っていた。
「ねえ、お兄ちゃん。あのぬいぐるみ、誰の?」
「……公爵夫人のペットらしいよ。“番犬”ならぬ“番ドラゴン”なんだってさ」
「へえ……可愛い……」
子どもたちが「キュー!」と鳴くドラちゃんに手を振る。するとドラちゃんは、控えめに羽をぴょこんと広げて応える。
「おお、ちゃんと返事するぞ!」
「やっぱり賢いんだなあ……」
---
ドラちゃんの活躍は、門番だけにとどまらなかった。
「奥様、お届け物にございます」
「ありがとう。あら? メモがついていますわね……」
差出人は、隣町のパン屋。
内容はこうだった。
> 『この前、店に入ろうとした不審な男がいましたが、
屋敷の“ミニドラゴン”に見つかって飛びかかられ、逃げていきました。
感謝を込めて、焼き立てパンをお届けします』
「……なにそれ、素敵すぎますわ」
どうやら、わたくしが散歩のときに連れていたドラちゃんが、
ほんの“お散歩ついで”に街の平和を守っていたようです。
「まるで童話の世界ですわね……“公爵夫人と空飛ぶロバと番ドラゴン”……ふふっ」
---
一方、屋敷でも“守護獣”としての立場が確立されつつあった。
「おーい、ママ、見てよ! ドラちゃん、ちゃんと“お手”できるようになった!」
「まぁ、それは素晴らしいですわね!」
ユリウス様がドラちゃんと“お手”をしている様子を、わたくしは微笑ましく眺めていた。
「次は“おすわり”! ……ほら、ママ見て!」
「おすわりですの! きゃー、可愛らしい!」
「ママが一番テンション上がってるよね……」
ルティア様が小さく笑っている。
「……まあ、気持ちはわかりますけど。あれは本当に可愛いですし、なんかこう……癒やされるのよね」
「癒し系ドラゴン……ありですわね!」
わたくしはドラちゃんの頭をなでなでしながら、ふふんと得意げに微笑んだ。
「ちなみに、ドラちゃんは不審者には飛びかかる訓練もしておりますの。魔力にも反応しますし、防衛能力は侮れませんのよ?」
「見た目ふわふわで、実は超優秀なガードマン……ギャップで人気出そう」
「ママ、まさかドラちゃんで商売を考えてたり……?」
「それはまた別の話として、ドラちゃんTシャツとぬいぐるみは作っておきたいと思いますの」
「完全にビジネスじゃん!!」
---
その夜。
夕食後、居間で子どもたちと一緒に過ごしていると、クラウス様が帰宅した。
「ただいま戻った」
「おかえりなさいませ、旦那様」
玄関まで出迎えると、クラウス様の腕には、見慣れぬ包みが。
「これ、街の子どもたちからドラちゃんへって」
「えっ、なにそれ、手紙……?」
中には、小さな折り紙と、色とりどりの短冊が。
> 『ドラちゃん、いつもまもってくれてありがとう!』 『ドラちゃん、かわいい!』 『ママといっしょにまたきてね』
わたくしは思わず、目頭を押さえた。
「……こんなにも、誰かに“ありがとう”を言ってもらえるなんて」
「君が、そうなる道を選んだからだ。守る者として」
「旦那様……」
「……だが、」
クラウス様はわたくしの頭をぽんと撫でる。
「時には、守られる側になってもいい。無理はするな」
「……ええ。でも、ママはがんばりますの。家族のために」
そのとき。
「キュッ」
ドラちゃんが、わたくしたちの間に割って入るようにジャンプして、両前足でぴょこぴょこと“お手”。
それがなんだか、「家族の真ん中にいるのは自分だよ!」と言っているようで、思わずふたりで顔を見合わせて笑ってしまった。
---
その晩。
ベッドに入る前、窓辺で月を見上げながら、わたくしはひとりつぶやいた。
「家族を守る――それは、わたくしにとって最も大切な“魔法”ですの」
そして、ふわふわの毛布にくるまっているミニドラゴンをそっと抱き上げた。
「これからも、よろしくお願いいたしますわね。わたくしの番ドラゴンさん」
ミニドラゴンは、満足そうに喉を鳴らした。
---
リーデン公爵邸の中庭には、やさしい陽光が降り注ぎ、草花がゆるやかに風に揺れていた。
春の陽気に包まれながら、わたくし――シオン・ヴァン・リーデンは、テーブルの上に紅茶とマフィンを並べ、小さなティーパーティを準備していた。
客人は、ふわふわの番ドラゴン“ドラちゃん”。
「はい、今日のマフィンはかぼちゃとハチミツですわよ」
「キュ~」
ドラちゃんはくるんと尻尾を巻き、まるで“いただきます”のご挨拶でもするように頭を下げる。
……見れば見るほど、本当にぬいぐるみのように愛らしい存在。
「あなたが来てからというもの……わたくしの毎日も、ますますにぎやかになりましたわ」
---
つい数週間前まで、わたくしは“政略結婚で突然母となった少女”だった。
正直、家族のことも、自分の立場も、どう振る舞えばよいのか分からなかった。
でも――
「ママ、ただいま!」
庭に駆け込んできたユリウス様が、ドカッとベンチに座る。
「授業で先生に褒められたよ。“最近落ち着いて勉強してる”って!」
「まあ、それは素晴らしいですわ! きっと努力の賜物ですわね」
「えへへー、ママに褒められると、なんか嬉しいな」
そう言って、くしゃりと笑うユリウス様。
その隣にはルティア様とマリーベル様も歩いてきて、さりげなくテーブルの空席に座った。
「ティータイム? いい香りね」
「わたくしもマフィンいただいても?」
「もちろんですわ」
「ママ特製ってだけで、どんなお菓子も高級品になるのがすごいよねー」
「ふふ……光栄ですわ」
---
わたくしは、ふと目を上げて、笑い合う子どもたちの姿を見つめた。
――家族。
政略結婚で得たはずの“仮の家族”が、今ではわたくしの宝物となっている。
「ただいま戻った」
声の主は、もちろんクラウス様。
軍服を脱ぎ、柔らかな表情で中庭に歩いてくる姿は、どこか家庭的なぬくもりを帯びていて。
「お帰りなさいませ、旦那様」
「随分楽しそうだな。今日は何の集まりだ?」
「番ドラゴン様主催のティーパーティですの」
「……お前が主催したのでは?」
「……細かいことは、気にしませんのよ?」
クラウス様がわたくしの頭にぽんと手を置く。
昔は“子ども扱い”のつもりだったその手も、今ではわたくしを“等しい妻”として労う手となっていた。
---
午後の陽が傾き始めたころ。
皆が席を立ち、日常へ戻っていったあと、わたくしはひとり、中庭に残った。
手には、ドラちゃん用の小さなブラシ。
その背中をとんとん、優しく撫でながら、そっと語りかける。
「ねえ、ドラちゃん。わたくし、最近思うんですの」
「キュ?」
「この家に来たとき、守らなければと思ったのは、ただ“与えられた役目”としての家族でしたの」
「キュ?」
「でも、今は違いますわ。これは義務でも責任でもなくて――」
わたくしは、自分の胸に手を当てた。
「――大切にしたい、愛おしい、かけがえのない“守りたいもの”なのですわ」
クラウス様、子どもたち、屋敷の使用人たち、そしてドラちゃん。
政略結婚で始まったわたくしの人生は、思っていたよりもずっと――やさしくて、温かかった。
「……守りたいものが、また増えましたわね」
---
夕日が沈み、夜の帳が降りるころ。
屋敷の明かりが灯り、今日も静かに一日が終わろうとしていた。
その光景を眺めながら、わたくしは静かに微笑む。
いつか、この平和を乱すものが現れても。
わたくしはきっと――
「“ママ”として、この手で守りますわ」
ロシナンテが“ヒヒン”と、空気を読んだように鳴いた。
「もちろん、あなたも一緒ですわよ?」
“キュ~”
ドラちゃんも満足げに鳴いて、丸くなってわたくしの膝で眠り始めた。
こんな穏やかで、かけがえのない日々を――
これからも、ずっと、ずっと守っていくために。
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「西の国境砦に、古代種のドラゴンが現れたとのことです!」
報せが屋敷に届いたのは、昼下がり。わたくしがティータイムの用意をしていたときのことだった。
急ぎ足で報告に現れた騎士の顔は青ざめていた。
「古代種……まさか、王都に近づいてくるのでは?」
クラウス様の表情が険しくなる。
「すでに進軍中の報せもあります。王都へ至る前に迎撃せねばなりません」
「……出陣の準備を整えろ。私も向かう」
「かしこまりました!」
わたくしは、お盆に乗せたティーカップをそっとテーブルに置いた。
「……クラウス様」
「シオン。屋敷の警備を強化するよう、メイド長に指示しておいてくれ」
「……はい」
わたくしは頷きながらも、胸がざわついていた。
クラウス様は、どんな相手にも正面から向き合う。だからこそ、彼は尊敬され、慕われている。
けれど。
(相手は……ドラゴン。しかも、古代種ですのよ……!?)
危険すぎる。いくらクラウス様でも、無事では済まないかもしれない。
じりじりと胸の奥が熱くなる。
「……わたくし、見送っているだけなんてできませんわ」
---
その夜。屋敷の片隅、厩舎に向かったわたくしは、そこにいた“相棒”を見上げて言った。
「ロシナンテ、出番ですわよ」
“ヒヒーン”と返事のような鳴き声。
ロシナンテは、わたくしの特別な魔法生物。見た目はロバ、性格はマイペース。だが、ひとたび命じれば――
「飛行モード、お願いできますか?」
すると、背中からにゅっと白く美しい羽が生え、パタパタと風を巻き起こす。
「ふふ……ペガサス風ロバですわね」
――童話のような光景。
でも、この姿はわたくしにとっての“戦装備”でもある。
わたくしはマントを翻し、ロシナンテの背にまたがった。
「空へ、お願い、ロシナンテ!」
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風を切って、夜空を飛ぶ。
星空の下、わたくしとロシナンテは雲の間をすり抜けて、国境方面へ向かっていた。
胸には“ベータ・ペンダント”――これが、わたくしの魔法の力の鍵。
「クラウス様が、無茶をなさらないうちに……!」
願いはひとつだけ。
――夫を、家族を、守ること。
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やがて、地平線の向こうに、砦の炎と赤い影が見えた。
――ドラゴン。
その姿はまさに、災厄の化身。巨大な翼、尾を振るうたびに建物が吹き飛び、兵士たちの防衛線をなぎ払っていた。
「まずいっ……!」
わたくしは上空から状況を見渡し、クラウス様の姿を探した。
――いた!
前線で、兵を守りながら剣を振るうクラウス様の姿。その姿に、胸が高鳴る。
「……旦那様を、いじめるなんて、絶対に許しませんわよ!」
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ロシナンテを急降下させ、戦場の上空から叫ぶ。
「――ドラゴン! わたくしの愛する旦那様をいじめるなど、許しませんわ!」
兵士たちが空を見上げる。
そこには、空飛ぶロバと、銀髪の小さな少女の姿。
「お、おい、あれは!? 飛んでるのはロバ……?」
「いや、あれは……リーデン公爵夫人……!?」
混乱と驚きの中、わたくしは魔法を発動する。
ペンダントに手を当て、詠唱を口にする。
「理性の鍵をもって、力の檻を結び――収束せよ、対象に!」
魔力が収束し、ぽよよーんと謎の音が鳴り響く。
「――縮小魔法《ちっちゃくなーれ》!」
光がドラゴンを包み込む。
その巨体が……みるみるうちに小さく、まるでぬいぐるみのように縮んでいく。
翼は丸まり、牙は丸くなり、鋭い爪もふわふわに。
「ク……クァ?」
最後には、ちょこんと地面に座る、手のひらサイズのミニドラゴンに。
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「……やったのか?」
「し、縮んだ!? ドラゴンがぬいぐるみに!?」
「なんだあの魔法……すごすぎる……」
兵士たちが歓声を上げる中、ミニドラゴンがちょこちょこと、わたくしの方へ走ってきた。
「え、なついてる?」
「きゃ、きゃわいい……!」
小さくなったドラゴンは、足元にすり寄って体をすりすり。
「……な、懐かれてしまいましたわ。ど、どうしましょう……」
地上では、クラウス様がぽかんとわたくしを見上げている。
わたくしは小さく手を振って、笑った。
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「――旦那様、飼ってもいいですか?」
戦場の片隅。ぬいぐるみのようになったミニドラゴンが、わたくしの足元で「キュー」と可愛く鳴く。
その瞳はつぶらで、ぱたぱたと羽を揺らして甘えるように体を擦り寄せてくる。
完全に、わたくしに懐いてしまったようですわ。
そんな様子を見ていたクラウス様は、険しかった表情を少しだけ緩め、困ったように言った。
「……いや、しかし、犬や猫じゃあるまいし。これは、ドラゴンだぞ?」
「でも、見てください、こんなに大人しくなりましたわ」
わたくしは、ミニドラゴンをそっと抱き上げて見せた。
ふわふわで温かく、まるでぬいぐるみを抱いているような軽さと柔らかさ。
「“キュッ”」
「可愛いでしょう? それに、吠えたり暴れたりもせず、お利口ですわよ?」
「……たしかに、見た目はぬいぐるみだが……」
「おまけに魔力を感知する警戒能力まであるらしいですの。見張りにもなります」
「……なるほど。番犬ならぬ、番ドラゴンか」
「そうですわ。立派な戦力ですわよ?」
クラウス様はしばし沈黙し、そして――小さくため息をついた。
「……カワイイのは、お前だ。シオン」
「や、や、やめてくださいませ! 戦場でのろけは――」
「――将軍、のろけるのは家でやってください!」
近くにいた副官の鋭いツッコミに、クラウス様がわずかに顔を赤らめた。
わたくしも、思わず吹き出してしまった。
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帰り道。ロシナンテの背にわたくし、クラウス様の馬車、そして後方をてこてこ飛ぶようについてくるミニドラゴン。
まさかの隊列に、町の人々も目を丸くしていた。
「あ、あれ……リーデン公爵家の奥様?」
「背中に乗ってるのは、まさか……ロバ?」
「いや、飛んでる……飛んでるよ!? ロバが!」
「ていうか、あの奥様の足元にいるの、ミニサイズのドラゴンじゃない!?」
「ぬいぐるみ!? 本物!? わからん……けどかわいい……!」
ざわめく中、わたくしは優雅に手を振ってみせた。
「どうも、ごきげんようですわー」
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そして、屋敷に帰ると――
「……ママ、それ……なに?」
最初に反応したのは、ユリウス様だった。
「ただいま戻りました。こちらは、ミニドラゴンですの。戦場で出会いました」
「拾ってきたの……? って、ドラゴンって拾うもんなの!?」
「元は暴れん坊でしたけれど、“ちっちゃくなーれ”でこの通り。今はすっかりおとなしいですわ」
「キュッ」
ミニドラゴンは、ユリウス様の足元でくるりと回ってから、ごろんとお腹を見せる。
「……くそ、可愛いじゃん……」
「でしょ?」
「え、ママ、それ飼うつもりなの?」
ルティア様が眉をひそめる。
「生き物を飼うって責任が伴うのよ? 大丈夫なの?」
「もちろん、わたくしが責任をもってお世話いたしますわ。エサやお風呂、お昼寝もきちんと管理します」
「お昼寝……?」
「はい、ミニドラゴンのお昼寝は大切ですの。特に魔力安定のためには」
「なんだそれ、初耳なんだけど……?」
「今、わたくしが考えました」
「考えたのかよ!?」
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その夜。
ミニドラゴンは、わたくしの部屋のソファで丸くなって寝ていた。
スースーと寝息を立てて、まるでぬいぐるみのように丸まりながら。
その姿を見て、わたくしは小さく息を吐く。
「……守るものが、また増えてしまいましたわね」
ドラゴン、家族、ロバ……そして屋敷の人々。
たくさんの“大切な存在”に囲まれて、わたくしはママとして生きている。
「だけど、それが幸せ、ですわ」
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クラウス様がそっと部屋をノックして入ってきた。
「……寝たか?」
「ええ。可愛い寝顔ですわよ。見てください」
クラウス様もそっと覗き込んで、肩の力を抜いたように笑った。
「不思議なものだな。あれが、かつて我々を苦しめた存在とは」
「ふふ。魔法の力って、時にこんな奇跡も起こせますのね」
「それを起こしたのは魔法じゃない。“君”だ、シオン」
「……また甘いことを……」
「本心だよ。君がいてくれて、良かったと思っている」
「……わたくしも、クラウス様の妻で良かったと思っておりますわ」
穏やかな夜。
眠るミニドラゴンと、微笑み合うふたりの姿に、静かで暖かな時間が流れていた。
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「――ミニドラゴン、強いなあ」
屋敷の門番がそう呟いたのは、ある晴れた午後のことだった。
リーデン公爵邸の正門前。
平和そのものの風景に、だが“異物”がひとつ。
門の横にちょこんと座る、ふわふわのミニドラゴン――通称“ドラちゃん”が、通行人をじっと見張っていた。
「ねえ、お兄ちゃん。あのぬいぐるみ、誰の?」
「……公爵夫人のペットらしいよ。“番犬”ならぬ“番ドラゴン”なんだってさ」
「へえ……可愛い……」
子どもたちが「キュー!」と鳴くドラちゃんに手を振る。するとドラちゃんは、控えめに羽をぴょこんと広げて応える。
「おお、ちゃんと返事するぞ!」
「やっぱり賢いんだなあ……」
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ドラちゃんの活躍は、門番だけにとどまらなかった。
「奥様、お届け物にございます」
「ありがとう。あら? メモがついていますわね……」
差出人は、隣町のパン屋。
内容はこうだった。
> 『この前、店に入ろうとした不審な男がいましたが、
屋敷の“ミニドラゴン”に見つかって飛びかかられ、逃げていきました。
感謝を込めて、焼き立てパンをお届けします』
「……なにそれ、素敵すぎますわ」
どうやら、わたくしが散歩のときに連れていたドラちゃんが、
ほんの“お散歩ついで”に街の平和を守っていたようです。
「まるで童話の世界ですわね……“公爵夫人と空飛ぶロバと番ドラゴン”……ふふっ」
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一方、屋敷でも“守護獣”としての立場が確立されつつあった。
「おーい、ママ、見てよ! ドラちゃん、ちゃんと“お手”できるようになった!」
「まぁ、それは素晴らしいですわね!」
ユリウス様がドラちゃんと“お手”をしている様子を、わたくしは微笑ましく眺めていた。
「次は“おすわり”! ……ほら、ママ見て!」
「おすわりですの! きゃー、可愛らしい!」
「ママが一番テンション上がってるよね……」
ルティア様が小さく笑っている。
「……まあ、気持ちはわかりますけど。あれは本当に可愛いですし、なんかこう……癒やされるのよね」
「癒し系ドラゴン……ありですわね!」
わたくしはドラちゃんの頭をなでなでしながら、ふふんと得意げに微笑んだ。
「ちなみに、ドラちゃんは不審者には飛びかかる訓練もしておりますの。魔力にも反応しますし、防衛能力は侮れませんのよ?」
「見た目ふわふわで、実は超優秀なガードマン……ギャップで人気出そう」
「ママ、まさかドラちゃんで商売を考えてたり……?」
「それはまた別の話として、ドラちゃんTシャツとぬいぐるみは作っておきたいと思いますの」
「完全にビジネスじゃん!!」
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その夜。
夕食後、居間で子どもたちと一緒に過ごしていると、クラウス様が帰宅した。
「ただいま戻った」
「おかえりなさいませ、旦那様」
玄関まで出迎えると、クラウス様の腕には、見慣れぬ包みが。
「これ、街の子どもたちからドラちゃんへって」
「えっ、なにそれ、手紙……?」
中には、小さな折り紙と、色とりどりの短冊が。
> 『ドラちゃん、いつもまもってくれてありがとう!』 『ドラちゃん、かわいい!』 『ママといっしょにまたきてね』
わたくしは思わず、目頭を押さえた。
「……こんなにも、誰かに“ありがとう”を言ってもらえるなんて」
「君が、そうなる道を選んだからだ。守る者として」
「旦那様……」
「……だが、」
クラウス様はわたくしの頭をぽんと撫でる。
「時には、守られる側になってもいい。無理はするな」
「……ええ。でも、ママはがんばりますの。家族のために」
そのとき。
「キュッ」
ドラちゃんが、わたくしたちの間に割って入るようにジャンプして、両前足でぴょこぴょこと“お手”。
それがなんだか、「家族の真ん中にいるのは自分だよ!」と言っているようで、思わずふたりで顔を見合わせて笑ってしまった。
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その晩。
ベッドに入る前、窓辺で月を見上げながら、わたくしはひとりつぶやいた。
「家族を守る――それは、わたくしにとって最も大切な“魔法”ですの」
そして、ふわふわの毛布にくるまっているミニドラゴンをそっと抱き上げた。
「これからも、よろしくお願いいたしますわね。わたくしの番ドラゴンさん」
ミニドラゴンは、満足そうに喉を鳴らした。
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リーデン公爵邸の中庭には、やさしい陽光が降り注ぎ、草花がゆるやかに風に揺れていた。
春の陽気に包まれながら、わたくし――シオン・ヴァン・リーデンは、テーブルの上に紅茶とマフィンを並べ、小さなティーパーティを準備していた。
客人は、ふわふわの番ドラゴン“ドラちゃん”。
「はい、今日のマフィンはかぼちゃとハチミツですわよ」
「キュ~」
ドラちゃんはくるんと尻尾を巻き、まるで“いただきます”のご挨拶でもするように頭を下げる。
……見れば見るほど、本当にぬいぐるみのように愛らしい存在。
「あなたが来てからというもの……わたくしの毎日も、ますますにぎやかになりましたわ」
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つい数週間前まで、わたくしは“政略結婚で突然母となった少女”だった。
正直、家族のことも、自分の立場も、どう振る舞えばよいのか分からなかった。
でも――
「ママ、ただいま!」
庭に駆け込んできたユリウス様が、ドカッとベンチに座る。
「授業で先生に褒められたよ。“最近落ち着いて勉強してる”って!」
「まあ、それは素晴らしいですわ! きっと努力の賜物ですわね」
「えへへー、ママに褒められると、なんか嬉しいな」
そう言って、くしゃりと笑うユリウス様。
その隣にはルティア様とマリーベル様も歩いてきて、さりげなくテーブルの空席に座った。
「ティータイム? いい香りね」
「わたくしもマフィンいただいても?」
「もちろんですわ」
「ママ特製ってだけで、どんなお菓子も高級品になるのがすごいよねー」
「ふふ……光栄ですわ」
---
わたくしは、ふと目を上げて、笑い合う子どもたちの姿を見つめた。
――家族。
政略結婚で得たはずの“仮の家族”が、今ではわたくしの宝物となっている。
「ただいま戻った」
声の主は、もちろんクラウス様。
軍服を脱ぎ、柔らかな表情で中庭に歩いてくる姿は、どこか家庭的なぬくもりを帯びていて。
「お帰りなさいませ、旦那様」
「随分楽しそうだな。今日は何の集まりだ?」
「番ドラゴン様主催のティーパーティですの」
「……お前が主催したのでは?」
「……細かいことは、気にしませんのよ?」
クラウス様がわたくしの頭にぽんと手を置く。
昔は“子ども扱い”のつもりだったその手も、今ではわたくしを“等しい妻”として労う手となっていた。
---
午後の陽が傾き始めたころ。
皆が席を立ち、日常へ戻っていったあと、わたくしはひとり、中庭に残った。
手には、ドラちゃん用の小さなブラシ。
その背中をとんとん、優しく撫でながら、そっと語りかける。
「ねえ、ドラちゃん。わたくし、最近思うんですの」
「キュ?」
「この家に来たとき、守らなければと思ったのは、ただ“与えられた役目”としての家族でしたの」
「キュ?」
「でも、今は違いますわ。これは義務でも責任でもなくて――」
わたくしは、自分の胸に手を当てた。
「――大切にしたい、愛おしい、かけがえのない“守りたいもの”なのですわ」
クラウス様、子どもたち、屋敷の使用人たち、そしてドラちゃん。
政略結婚で始まったわたくしの人生は、思っていたよりもずっと――やさしくて、温かかった。
「……守りたいものが、また増えましたわね」
---
夕日が沈み、夜の帳が降りるころ。
屋敷の明かりが灯り、今日も静かに一日が終わろうとしていた。
その光景を眺めながら、わたくしは静かに微笑む。
いつか、この平和を乱すものが現れても。
わたくしはきっと――
「“ママ”として、この手で守りますわ」
ロシナンテが“ヒヒン”と、空気を読んだように鳴いた。
「もちろん、あなたも一緒ですわよ?」
“キュ~”
ドラちゃんも満足げに鳴いて、丸くなってわたくしの膝で眠り始めた。
こんな穏やかで、かけがえのない日々を――
これからも、ずっと、ずっと守っていくために。
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