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第1章-4:聖女失格の烙印と、追放通告
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第1章-4:聖女失格の烙印と、追放通告
「……やはり、“偽聖女”だったのだな」
国王グラディウスの言葉は、広い謁見の間に冷たく響き渡った。
雪月風花は、静かに視線を落としながら拳を握りしめた。否定も抗議も、もうしたくなかった。だって、この世界は“自分に都合のいいもの”しか見ようとしない。何度否定しても、それが届くことはなかった。
「魔力ゼロ、治癒能力ゼロ、聖印反応なし。もはや疑う余地はあるまい。黒髪であることのみが唯一の根拠であったが、それも先入観にすぎなかったのだ」
神官長が冷静な口調で語り、廷臣たちはざわめきもしない。ただ静かに、風花の価値を見限った目で見ていた。
「……偽聖女、か」
ぽつりと誰かがそう呟いたのが聞こえた瞬間、風花の中で何かがプツンと切れた。
「――偽聖女って、なに?」
その声は震えていた。けれど怒りで、それを押しとどめることはできなかった。
「最初から違うって言ってたよね!? 私、何度も“力なんてありません”って、言ったよね!? “私、ただの高校生なんです”って、ちゃんと説明したよね!? それなのに勝手に持ち上げて、“聖女様”“救世の乙女”って騒いで――それで、違うってわかった途端、“偽聖女”!? なにそれ、どういう理屈!?」
謁見の間に、沈黙が走る。誰もが、風花の怒りを予想していなかったのだ。
「“違う”って言った! 何度も、何度も言ったのに! 信じようとしなかったのは、あなたたちでしょ!?」
それは爆発だった。あまりに静かで、あまりに従順だった少女が、ようやく感情をあらわにした瞬間だった。
王も神官も、誰も言葉を返せなかった。自分たちの非を認める気などない彼らにとって、“偽聖女”という言葉は“責任転嫁”そのものだった。
「余は貴様に時間と資源を割いた。無駄だったとわかった以上、それを取り戻す必要がある」
国王が言い放つ。いつの間にかそれが“彼らの正義”になっていた。
風花は静かに言った。
「わかってます。だから、追放でも何でも、どうぞ。こっちだって、あなたたちと関わってると疲れるんで」
静かに、しかしはっきりと宣告された追放。
これで終わりなのだと、風花は思った。
――けれど、そのときだった。
「……君は、本当に、何もできないのか?」
その声だけは、優しかった。レオンハルト。騎士団長。彼だけが最初から「聖女様」とは呼ばなかった。ずっと“君”と呼んでくれた。
「何度言えばわかるの? 私は“聖女”なんかじゃない。ただの女子高生。特別な力なんて何一つない。掃除、洗濯、料理が得意なだけの、女子力高めの庶民ですよ」
「……女子力、か」
「バカにしてるでしょ?」
「いや。むしろ、そういう力こそ、この国にはなかったものだ」
レオンの目は冗談ではなかった。だからこそ、風花は思わず目をそらしてしまった。
「……変な人」
そう呟いたのは、自分のほうだというのに。
* * *
翌朝、まだ霧が立ち込める時間。王都の裏門には馬と、風花の小さな荷物袋が一つ。
宿も、食堂も、侍女たちの笑顔も――昨日すべて消えた。
今日からは、“追放された異世界人”。モブ中のモブ。
「……はぁ、普通の暮らしに戻れると思えば、気は楽だけど……」
そこに聞こえてきた蹄の音。現れたのは、やっぱりレオンだった。
「来てくれたんだ」
「護衛を命じられた。……いや、自分で志願した」
「……ありがと。女子力で護られる自信はなかったから」
風花は馬にまたがり、霧の中の道へと目を向けた。
その向こうに広がるのは、どんな未来だろう。
だけど、あの場所よりは、きっと呼吸しやすい。
そして彼女は、心のなかでそっと言った。
――さようなら、“偽聖女”。
――こんにちは、“ただの私”。
「……やはり、“偽聖女”だったのだな」
国王グラディウスの言葉は、広い謁見の間に冷たく響き渡った。
雪月風花は、静かに視線を落としながら拳を握りしめた。否定も抗議も、もうしたくなかった。だって、この世界は“自分に都合のいいもの”しか見ようとしない。何度否定しても、それが届くことはなかった。
「魔力ゼロ、治癒能力ゼロ、聖印反応なし。もはや疑う余地はあるまい。黒髪であることのみが唯一の根拠であったが、それも先入観にすぎなかったのだ」
神官長が冷静な口調で語り、廷臣たちはざわめきもしない。ただ静かに、風花の価値を見限った目で見ていた。
「……偽聖女、か」
ぽつりと誰かがそう呟いたのが聞こえた瞬間、風花の中で何かがプツンと切れた。
「――偽聖女って、なに?」
その声は震えていた。けれど怒りで、それを押しとどめることはできなかった。
「最初から違うって言ってたよね!? 私、何度も“力なんてありません”って、言ったよね!? “私、ただの高校生なんです”って、ちゃんと説明したよね!? それなのに勝手に持ち上げて、“聖女様”“救世の乙女”って騒いで――それで、違うってわかった途端、“偽聖女”!? なにそれ、どういう理屈!?」
謁見の間に、沈黙が走る。誰もが、風花の怒りを予想していなかったのだ。
「“違う”って言った! 何度も、何度も言ったのに! 信じようとしなかったのは、あなたたちでしょ!?」
それは爆発だった。あまりに静かで、あまりに従順だった少女が、ようやく感情をあらわにした瞬間だった。
王も神官も、誰も言葉を返せなかった。自分たちの非を認める気などない彼らにとって、“偽聖女”という言葉は“責任転嫁”そのものだった。
「余は貴様に時間と資源を割いた。無駄だったとわかった以上、それを取り戻す必要がある」
国王が言い放つ。いつの間にかそれが“彼らの正義”になっていた。
風花は静かに言った。
「わかってます。だから、追放でも何でも、どうぞ。こっちだって、あなたたちと関わってると疲れるんで」
静かに、しかしはっきりと宣告された追放。
これで終わりなのだと、風花は思った。
――けれど、そのときだった。
「……君は、本当に、何もできないのか?」
その声だけは、優しかった。レオンハルト。騎士団長。彼だけが最初から「聖女様」とは呼ばなかった。ずっと“君”と呼んでくれた。
「何度言えばわかるの? 私は“聖女”なんかじゃない。ただの女子高生。特別な力なんて何一つない。掃除、洗濯、料理が得意なだけの、女子力高めの庶民ですよ」
「……女子力、か」
「バカにしてるでしょ?」
「いや。むしろ、そういう力こそ、この国にはなかったものだ」
レオンの目は冗談ではなかった。だからこそ、風花は思わず目をそらしてしまった。
「……変な人」
そう呟いたのは、自分のほうだというのに。
* * *
翌朝、まだ霧が立ち込める時間。王都の裏門には馬と、風花の小さな荷物袋が一つ。
宿も、食堂も、侍女たちの笑顔も――昨日すべて消えた。
今日からは、“追放された異世界人”。モブ中のモブ。
「……はぁ、普通の暮らしに戻れると思えば、気は楽だけど……」
そこに聞こえてきた蹄の音。現れたのは、やっぱりレオンだった。
「来てくれたんだ」
「護衛を命じられた。……いや、自分で志願した」
「……ありがと。女子力で護られる自信はなかったから」
風花は馬にまたがり、霧の中の道へと目を向けた。
その向こうに広がるのは、どんな未来だろう。
だけど、あの場所よりは、きっと呼吸しやすい。
そして彼女は、心のなかでそっと言った。
――さようなら、“偽聖女”。
――こんにちは、“ただの私”。
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