『婚約破棄されたので玉座から降りました。――理で王国をざまあします

ふわふわ

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第四十話 均衡の王国

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第四十話 均衡の王国

 冬の訪れは静かだった。

 王都の屋根に薄く雪が積もり、王宮の尖塔が白く縁取られる。

 婚約破棄から始まった一連の揺らぎは、いまや歴史の一頁になりつつあった。

 王は理を選び続け、王妃は責任を担い続けた。

 制度は根を張り、均衡は揺れながらも保たれている。

 王宮・大広間。

 新年度の施政方針が発表される日。

 レオニードは玉座の前に立ち、静かに言葉を紡ぐ。

「王国は、武威ではなく理によって守られる」

 かつての彼なら選ばなかった言葉。

 だが、いまは迷いがない。

「対話を恐れず、透明性を保ち、決断を急がない」

 その横で、ミレーヌが穏やかに立つ。

 彼女の視線はまっすぐだ。

 孤独を受け入れ、疲労を知り、それでも選び続けた者の目。

「王妃は、制度の守り手である」

 その言葉に、会場が静まる。

 称賛ではない。

 信頼の静寂。

 一方、私は貴族席の後方からその光景を見ていた。

 選ばれなかった未来。

 だが、選んだ未来。

 私は王妃ではない。

 だが、制度は生きている。

 王宮の回廊。

 式典後、三人だけの短い時間。

「ここまで来られた」

 レオニードが言う。

「ええ」

 ミレーヌが頷く。

 そして、彼は私を見る。

「あなたが退いたからだ」

「退いたのではありません」

 私は微笑む。

「位置を変えただけです」

 王は笑った。

「均衡の外側に立つ者が必要だった」

「均衡は、内と外で成り立ちます」

 窓の外、王都の白い景色が広がる。

 戦も暴動もない。

 派手なざまあもない。

 だが、確かな変化がある。

 かつて婚約破棄で嘲笑った者たちは、いまは沈黙している。

 王国は崩れなかった。

 むしろ、成熟した。

 それこそが、最大のざまあ。

 夜。

 私は塔に上る。

 王都の灯りが雪に反射し、柔らかく輝く。

 均衡は続く。

 火種はまた生まれるだろう。

 王はまた迷うだろう。

 王妃はまた孤独を知るだろう。

 だが、いまは違う。

 理を選ぶ力がある。

 制度がある。

 学びがある。

 それは、一度壊れかけたからこそ手に入れたもの。

 私は静かに呟く。

「婚約破棄は、終わりではありませんでしたわね」

 それは始まりだった。

 王は理の王となり。

 王妃は責任の象徴となり。

 私は均衡の設計者となった。

 誰も破滅しない。

 誰も血を流さない。

 それでも、価値観は覆された。

 それが、この物語のざまあ。

 王都の鐘が鳴る。

 新しい一年が始まる。

 均衡の王国は、静かに、そして確かに歩み続ける。

 物語は終わる。

 だが、均衡は終わらない。

 王国は、理と共に在る。
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