婚約破棄された地味伯爵令嬢は、隠れ錬金術師でした~追放された辺境でスローライフを始めたら、隣国の冷徹魔導公爵に溺愛されて最強です~

ふわふわ

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第2話: 聖女の輝きと影

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第2話: 聖女の輝きと影

舞踏会の空気は、いつになく熱を帯びていた。

中央のステージに、ソルスティス・レインズが立っている。  
可憐な白いドレスを纏い、金色のツインテールが優しく揺れる。大きな青い瞳を輝かせて、彼女は両手を広げた。

「皆さま、どうかご覧ください。この力は、神より賜ったものですわ!」

柔らかな声が大広間に響く。  
次の瞬間、ソルスティスの手から眩い光が溢れ出した。純白の聖なる光が、まるで花びらのように舞い上がり、会場全体を包み込む。

「これは……!」

「なんて美しい……」

貴族たちが息を呑み、感嘆の声が上がる。  
光は優しく人々の体を撫で、疲れや小さな傷を癒やしていく。デモンストレーションとして用意された負傷した騎士の傷が、目に見えて塞がっていくのだ。

(ふん、派手ね)

エルカミーノは、壁際から静かにその光景を眺めていた。  
前世の知識がある彼女には、すぐにわかった。ソルスティスの魔法は確かに「聖魔法」だが、効果は限定的。表面的な癒やしで、深い傷や病には効きにくいタイプだ。

それに――

(あの言い回し、前世のアニメやゲームの知識丸出しじゃない)

「皆さまを癒やし、幸せをお届けするのが私の使命ですわ!」

ソルスティスが微笑みながら言うセリフに、エルカミーノは内心で苦笑した。  
まさに「転生ヒロイン」お決まりの台詞。きっと前世で読んだライトノベルや乙女ゲームの影響だろう。

そして、その隣に立つカイロン王子。

金髪を優雅に流し、碧い瞳を細めてソルスティスを見つめる彼の表情は、明らかに今まで見たことのないものだった。  
――心底、魅了されている。

(……あれ? 殿下、完全に落ちてるわね)

エルカミーノはグラスを傾けながら、冷静に観察する。  
カイロンはこれまで、エルカミーノに対しては義務的な笑顔しか見せなかった。政略結婚の道具としてしか、見ていなかったのだ。

なのに今は、ソルスティスに向ける視線が熱い。  
まるで「運命の出会い」を信じているかのように。

拍手が鳴り響く中、ソルスティスがステージから降りてくる。  
カイロンが自然と手を差し伸べ、彼女をエスコートする。二人が並ぶ姿は、絵本から飛び出してきた王子と聖女のようだった。

周囲の令嬢たちが羨望の溜息を漏らす。

「なんてお似合いなの……」

「聖女様こそ、王太子殿下に相応しいのでは?」

そんな囁きが、エルカミーノの耳にも届いた。

(ふふ、始まったわね)

彼女は静かに微笑んだ。  
内心では、少し胸がざわついていたが――それ以上に、別の感情が芽生えていた。

(このままいけば、婚約破棄も時間の問題かしら。……それ、悪くないかも)

聖女の輝きが会場を照らす中、  
エルカミーノの影は、静かに、深くなっていくのだった。










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