追放された令嬢ですが、隣国公爵と白い結婚したら溺愛が止まりませんでした ~元婚約者? 今さら返り咲きは無理ですわ~

ふわふわ

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第8話 「優しさがしみ渡る――領民が惚れた公爵夫人?」

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第8話 「優しさがしみ渡る――領民が惚れた公爵夫人?」

白い結婚が成立してから数日後。

エテルナは、庭園をゆっくり歩きながら深呼吸をした。
体力もほぼ戻り、散策ができるほど回復している。

(公爵家って……こんなにも静かで、暖かい場所なのね)

そのとき――

「エテルナ様ーっ!!」

ミーナが屋敷から転がるように飛び出してきた。

「ま、またエテルナ様が庭に出るって聞いたら……
 厨房の人たち全員が“スイーツ持たせろ!”って……!」

その手には、焼き立てのパイやクッキーが山のように盛られたバスケット。

「え……こんなに……?」

「みんなエテルナ様のこと大好きなんですよ!
 優しくて、礼儀正しくて、話しやすくて……
 “公爵様にはもったいない”って何人も言ってました!」

「えっ!? そ、それは……」

(公爵様……に、もったいない……?)

顔が熱くなる。

ミーナは誇らしげに胸を張った。

「それにですね!
 今日、領民の方からお手紙が来たんですよ!」

「領民の方から……私に?」

「はい! “エテルナ様に助けられた”って……!」

***

話を聞くと――
どうやら昨日のことらしい。

屋敷に野菜を届けに来た農家の老夫婦が、
帰り道に転んで怪我をしてしまった。

偶然その場を通りかかったエテルナは、
慌てて駆け寄り、ハンカチと魔法の応急処置で手当てしたそうだ。

「“あんなに優しい方は初めてです、公爵様はいいお嫁さんをもらいましたね”
 って書いてありましたっ!」

「お、お嫁さん……!」

エテルナは思わず胸元を押さえた。

(白い結婚なのに……でも、なんだか、悪い気はしない……)

そのときだった。

背後から足音が近づいてくる。

「エテルナ」

アレストの低い声に振り返ると、
彼は庭園の陽光を受けながら静かに歩いてきていた。

「領民から手紙が何通か届いた。
 君に渡すべきだろう」

アレストは数通の封筒を差し出した。

エテルナが受け取ると、
アレストは少しだけ視線を落とした。

「……あの日、領民を助けたそうだな」

「あっ、あれは……偶然で……」

「違うな」

アレストは言葉を遮るように続けた。

「偶然でも、誰でも、
 君のような行動は簡単にできるものではない。
 君の優しさは、本物だ」

エテルナの頬が熱くなる。

(こ、こんなふうに褒められたこと……あったかしら?)

ミーナが後ろで大きくガッツポーズをしているのが見える。
しかしアレストは気づかないふりをして続けた。

「……エテルナ。
 君がこの家に来てから、屋敷の空気が変わった」

「変わった……?」

「皆が明るくなった。
 俺も……話しかけやすくなったと、ルシアンが言っていた」

(ルシアンさん、それ本人に言うの!?)

エテルナは心の中で突っ込んだが、
アレストは真剣そのものだった。

「君は……良い影響を与えている。
 ここにいてくれて、助かっている」

“助かっている”

その言葉の重さに、
エテルナの胸がじんと温かくなる。

噛みしめるように返した。

「私……必要とされているんでしょうか」

アレストの目が、わずかに揺れた。

「当然だ」

短いのに、不思議と心強い声だった。

エテルナは胸に手を当てて微笑む。

(あぁ……この人の隣にいること……
 嫌じゃないどころか、あたたかい……)

アレストは、ふと視線を逸らし、

「……昼食は済ませたか?」

「いえ、まだです」

「では、一緒に食べよう。
 庭での食事も悪くない」

「えっ……?」

アレストの唐突な誘いにエテルナは目を丸くする。
ミーナは背後で“きゃーーーっ”と声にならぬ悲鳴を上げて飛び跳ねた。

アレストは照れ隠しのように咳払いし、

「……別に深い意味はない。ただの食事だ」

「は、はい……!」

エテルナは胸を押さえながら立ち上がった。

干渉しないはずの結婚なのに……
ふたりの距離は、確実に近づいていた。

そしてこの“距離の変化”が、
後に大きな波乱を呼ぶことを――
まだ誰も知らない。
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