追放された令嬢ですが、隣国公爵と白い結婚したら溺愛が止まりませんでした ~元婚約者? 今さら返り咲きは無理ですわ~

ふわふわ

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37話 帰り道、揺れる心と近づく距離

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◆37話 帰り道、揺れる心と近づく距離

ヘレナとの対面を終え、公爵本邸を後にした。

馬車の中には――
沈黙。

気まずい、でも甘いような、どうにも説明できない空気が満ちていた。

エテルナは窓の外を眺めながら、胸の鼓動を必死に抑えている。

(旦那様が……あんなふうに……私のことを“目で追っていた”なんて……!
考えただけで顔が熱くなりますわ……!)

しかし横を見る勇気は出ない。

アイオンの方も同じだった。

無表情に見えるが、ほんの少し耳が赤い。
ヘレナに暴露された直後なのだから、無理もない。


---

■アイオン、沈黙を破る

しばらくして。

「……エテルナ」

突然名前を呼ばれ、エテルナは肩を跳ねさせた。

「は、はいっ!」

「さきほどの……姉の言葉だが」

アイオンは珍しく、なかなか言葉を続けない。

それでも、ようやく絞り出すように言った。

「……嫌だったか?」

エテルナの心臓が跳ねる。

(嫌……? そんなわけ……)

「い、いえ……別に、その……嫌では、ありませんわ」

「そうか」

それだけで、アイオンの表情がわずかに緩んだ。

ほんの少し。
でも確かに。


---

■アイオンの不器用な気遣い

「エテルナ。今日のことは……驚かせて済まなかった」

「いいえ……旦那様が謝ることでは……」

「姉上は、他人を見る目が鋭い。
だから……君が無理をしていないか、心配だった」

(……心配、してくださっていたのね)

胸の奥がふわっと温かくなる。

「私は……大丈夫ですわ。
むしろ、義姉様に歓迎していただけて嬉しかったくらいで」

「そうか。……それなら良い」

アイオンは少しだけ息を吐き、肩の力を抜いた。

その様子に、エテルナも胸がきゅっとなる。

(こんな表情を見せてくださるの……私の前だけ、ですわよね?)


---

■そして、距離が――

馬車が石畳の段差を越えた拍子に、揺れが大きくなった。

「きゃっ……!」

エテルナの身体が傾き――
アイオンの胸元へ倒れ込んだ。

「……っ」

アイオンは反射的にエテルナの肩を支えた。
手がしっかりと、優しく添えられている。

近い。

息が触れそうなほど、近い。

二人とも一瞬固まったまま、動けなかった。

エテルナ(ち、近い……!
心臓の音聞こえてしまいますわ……!)

アイオン(離れたいのに……なぜか、離れられない……)

そして——

アイオンの指が、ほんの少し震えた。

「……エテルナ。怪我は?」

「だ、大丈夫ですわ……!」

エテルナは慌てて姿勢を戻す。
だが、頬は真っ赤。
触れられた肩が、じんじんと熱い。


---

■アイオンの小さな本音

沈黙のあと。

アイオンが横を向いたまま、ぽつりと言う。

「……君が怪我をすると、心臓が落ち着かない」

「え……?」

「理由は……まだ自分でも分からないが」

「…………」

エテルナは胸がぎゅっとなるのを感じた。

(それは……理由、分かっていますわ、旦那様……)

でも、言葉にはしない。
まだその時ではないと思ったから。

ただ――

「……ありがとうございます。心配してくださって」

そっと微笑むと、アイオンは一瞬固まり、目をそらした。

「……礼を言うことではない」

だが耳は、完全に真っ赤だった。


--
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