魔王山田、誠実に異世界を征服する

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第一部《魔王VS勇者》編

第44話【魔王山田、ブルーネに行く】

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王都カレスタ・郊外。

レイラが馬車から降りて駆けてくる。

レイラは特別に誂えられたドレスコートを身にまとっていた。王家の紋章をあしらった深い藍色の生地に、胸元には格式高いブローチが輝いている。

「お待たせしました、山田様」 レイラが凛とした声で立つ。

「お、来たか……その服カッコいいな。サイリスも思わない?」

「はい、よく似合っていると思います」

「本当ですか?! サイリス様のような凛々しいイメージで、ライラさんに作ってもらったんです!」

「わ、私の……?」

「わかるわかる。憧れの対象だよな。俺と違って」

「魔王様まで……からかうのはやめてください」

イリヤが歩いてくる。

「魔王様、私らは後ろからついていけばいいのかい?」

「おう、ゆっくり来てくれ」

レイラとイリヤが歩いていくと、上空から軍団長のネイが降りてくる。

 「魔王様、ご報告です」 山田が頷いて続きを促す。

「ブルーネの首都・ブルーネアへの道中に敵軍が布陣しています。又、敵陣地だけでなくブルーネア市街でも障壁が出現するのを確認しております」

「訪問は断固拒否で対策も準備万端ってことか。予定通り進軍だ」

「承知しました」

「ドリス副軍団長」

山田にドリスと呼ばれた女性が進み出て敬礼する。

 「はっ」

「俺は適当に道路作って進むから岩の運搬や軍の指揮は任せた。ガイアの推薦ということで頼りにしてるぞ」

「承知しました!」

山田が側で縮こまっているセラに顔を向ける。

「セラ、最近ロックフォールの出番がなかったけどやっと実験の成果のお披露目だな」

「は、はい……あの、私が同行する必要はないのでは……?」

「何を言ってるんだ。最前列で観測しろ」

「ひぃっ」

「魔王様、セラ様と何の実験を?」

「サイリスを驚かせようと思って秘密にしてたからな。見てのお楽しみだ」

サイリスが首を傾げる。

 * * *

ブルーネ防衛軍・司令部。

「将軍! 偵察からの報告です。魔軍が現れました!」

「ついに来たか……。いつでも障壁が展開できるように全軍に通達だ」

「はい!」

「しかし将軍……情報にあった空からの岩を防いでも魔王と魔軍が相手では……」

「みすみす国を魔族に明け渡せと? 王国の話もどこまで本当か疑わしいではないか」

「そうですね……」

「将軍! 突如前方に長大な道が出現してその上を魔軍が進んできています!」

「なんだと?! 道とはなんだ?!」

 * * *

ネイが空から降りてくる。

「魔王様、いかがなされますか?」

「使者とか面倒だから予定通り実行だ」

ネイが敬礼して飛び去る。

山田がドリスに話しかける。

「ドリス。フーシアはほとんど無傷で陥落させたって聞いたけど、どうやったんだ?」

「はっ! 敵軍に連続で落とさず、あえて不規則に時間を空けて落とすことで精神的な消耗と障壁の魔力切れを狙いました。併せて障壁展開地点に魔砲を集中的に撃ち込みました」

「素晴らしい。岩の節約と市街地への攻撃なしか。ガイアが推薦するだけはあるな」

「ありがとうございます!」

「さて、始まるぞ」

山田が前方を見ると、敵陣に岩が次々と降り注ぐ。

障壁が次々展開され、岩を防いでいく。

「魔王様、この後の作戦についてお聞きしていないのですが進軍でしょうか?」 ドリスが山田に尋ねる。

「ちょっと待ってくれ。セラ、どうだ?」

「は、はい……この距離だとこちらの軍も危ないかと……」

「ドリス、前に出過ぎてるみたいだから軍を下がらせてくれ」

「え?」

「ドリス副軍団長、魔王様のご命令よ。迅速に遂行しなさい」 サイリスが厳しく言い放つ。

「はいっ!」

ドリスが慌てて走って指示を出していく。

「じゃあ行ってくる。サイリスと親衛隊も少し下がってプロテクトかけてセラと見ててくれ」

「承知しました。お気を付けて」

山田が一気に空に飛び上がる。

上空にたどり着くと十人近い兵士が巨大な鉄球を支えていた。

(俺の魔力に耐える強度まで鉄を魔法で固めた代物……名前でもつけようか)

「魔王様、お待ちしておりました」 ネイが山田に呼びかける。

「よし、合図と同時に全員離れろ」

 * * *

「将軍! 上空からの攻撃は障壁で防ぎました!」

「障壁を切らすな! 交代で維持しろ!」

「偵察からの報告です! 魔軍が後退しているとのこと!」

「なに……? なんで後退する……?」

 * * *



高く昇った太陽のもと、漆黒の巨大な鉄球の輪郭が一瞬、陽光に鈍く光る。



突如、空を裂く閃光――続けて耳をつんざくような爆発音が大地を揺らす。



激しい衝撃波が地表を走り抜け、兵士も魔法障壁もまとめて吹き飛ばす。



地鳴りとともに大地がえぐれ、中心部には巨大なクレーターが生まれる。



舞い上がった土煙と破片がしばらく空を覆い尽くした。



やがて煙が晴れると、クレーターの中心に巨大な鉄球が静かに鎮座していた。



 * * *

山田が地上にゆっくりと降りていく。

(おぉ、かなりでかい穴ができてるな。ちょっと魔力強すぎたかな)

「おーい、サイリス! セラ! 見てたかー?」

サイリスが少し呆然とした顔で歩み寄る。

「はい……正直、理解が……今のは一体……」

「驚いた? 進みながら説明するよ。セラ、どうだった?」

「落下場所は正確でしたが、威力が強めでしたので……その……損害が大きいかもしれません。サイリス様に守って頂かなかったら私も……」

セラはぶるっと震える。

ネイが降りてくる。

「ネイ、ドリスに進軍しろと伝えてくれるか? 降伏した兵士は捕虜にして負傷者は治療してやれ」

ネイが頷き、飛び去っていく。

サイリスが尋ねる。

「あえて敵軍中央には落とされなかったのですね」

「戦意を失わせれば十分だからな」

山田は歩きながら手をかざし、長大な道路を出現させる。

「ほら、見える? あの鉄球」

「あれを魔王様の《インパクト》で撃たれたのですか?」

「そうそう。サイリスもできると思うよ。この前の譲渡で覚えてたでしょ」

「これを私が……」

「初めての譲渡のときに“魔の深淵”って言ってたけど、ちょっとは深淵見えてきた?」

サイリスが恥ずかしそうに俯く。

「覚えておられたんですね。毎日目まぐるしいのですっかり忘れていました」

「はは、充実してるのはいいことだ。さて、軍が制圧するまでここで休憩しようか」

そう言って、山田はテーブルと椅子を作り出した。


【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
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