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第二部《転生者VS転生者》編
第91話【二人目の転生者】
しおりを挟む目を覚ますと、そこはどこか天界じみた場所だった。
ふわふわの雲と金色の空、そして遠くに伸びる白い階段。
どこを見ても、現実とは思えない光景だった。
そんな中、目の前に現れたのは――やたらと露出の多い女神。
「……うわ、エッロ」
思ったことがそのまま口に出ていた。
「あなたは、脳梗塞……で、合ってるかな。ともかく亡くなりました」
女神アリアは発言を受け流して涼やかな笑みを浮かべて告げた。
「え、なにその適当な死亡報告。ていうか俺、死んだの? 脳梗塞?」
「はい。そんなあなたに素敵な第二の人生を差し上げます。異世界転生です!」
両腕を大きく広げ、天使のようなポーズを取る。
「え?! マジ?! ついに俺も異世界デビュー!」
歓喜のあまり、その場を歩き回る。
「そう、この反応が普通……あいつがおかしいのよ……」
アリアが小さくつぶやいた。
「なんか言いました? 詳しく聞きたいなぁ。転生先選べたり?」
「残念ながらあなたの転生先は決まっています」
「そっかぁ。ま、仕方ない。どんな世界かな」
「なんと……剣と魔法のファンタジー世界です!」
アリアは再び誇らしげに両腕を広げる。
「来た! ド定番! え……まさかとは思うけど勇者だったり?」
「はい、そのまさかですね」
「うおおお! ついに俺の時代が来た! いやー死んだみたいだけど前より全然いいじゃん……」
アリアは浮かび上がった半透明の画面を操作し始める。
「スッゲー……ホロ? ARじゃないっぽいし。あ、名前聞いちゃって大丈夫かな? 神様なんですよね?」
「はい、私は女神アリアです」
女神のような微笑みで名乗る。
「アリアさんかぁ。よろしくお願いします。初めて見たなぁこんな綺麗な人。あ、やば、セクハラだな」
「大丈夫ですよ。それと私は人ではなく女神です」
「ははっ、女神様も冗談とか言うんだ」
「冗談のつもりでは……さて、あなたの勇者としての使命ですが、もちろん魔王を倒すことです」
「やっぱり魔王もいるのか。勇者と魔王ならRPG系かな。自分はRPGはほとんどやったことないですけどゲーム全般結構自信あるんでいけると思います」
「ゲームと違って痛覚もありますし、死んだら終わりですから十分気をつけて下さいね」
「マジかー……痛いのは嫌だな。でも、仮に死んでもアリアさんがまた転生させてくれそうだし」
一瞬、彼女の瞳に冷ややかな光が差したが、すぐに微笑みに戻る。
「さて、それではお楽しみのスキル選択です! 画面をご覧ください」
次の瞬間、アリアと同じような半透明の画面が目の前に浮かび上がった。
「待ってました! えっと……スキルは3つかぁ。あれ、なんか2つほど確定してるような」
「残念ながら『超魔力』と『視覚超強化』は勇者に必須のスキルです。あと1つお好きなものを選んでください」
「1つかぁ、超迷う……でもこれだけで魔王とか倒せるのかな。魔法もあるんですよね? 初期魔法とかあります?」
「初期魔法の一覧ですね。はい、構いませんよ」
アリアが指先を滑らせると、ずらりと魔法リストが並んだ。
《ファイア》 《ファイアバースト》 《フレイムキャノン》 《アイス》 《アイスブラスト》 《アイスバースト》 《ライトニング》 《ライトニングバースト》 《アース》 《アースブラスト》 《ストーンバースト》 《ディバインソード》 《ディバインスフィア》 《ディバインアロー》 《カオスディバイン》 《ディバインバースト》 《ディバインフルバースト》 《ディバインヒール》 《インパクト》 《アクセル》 《プロテクト》
「うお?! 多いな! これだけあればいけそう。ディバインっていうのが多いけどこれは?」
「それは勇者専用魔法です。どれもかなり強力ですが《超魔力》スキルがあるので安心です。《ディバインフルバースト》だけは魔力消費が大きいので気をつけて下さい」
「勇者専用……なんかめちゃくちゃテンション上がってきた。サクッと魔王倒しちゃったりして」
「あなたの能力なら十分可能だと思います。転生先の世界は現在、勇者が魔王に倒され、暗黒時代になっています。あなたは新たな勇者として誕生します」
「勇者倒されちゃったんだ」
「はい。魔王に対する無敵仕様があるにも関わらず命を落としました」
アリアが小さくため息をつく。
「まぁ自分に任せて下さい。って……無敵仕様ってなに? 俺にもあるの?」
「もちろんです。魔王からの攻撃が全て無効化されます」
「え……それはちょっと……ただのチートじゃ……ワンサイドでやりたい放題なのに負ける勇者って……」
「勇者の仕様ですので。それでは……え? なに? 今面談中なんだけど」
アリアが突然、誰かと会話を始めた。
(勇者の仕様って……もう完全にゲームじゃん。っていうか誰と話してるんだ? 他の女神?)
「はぁ?! 転生者の貴族令嬢が女神を名乗って暴れてる? またあいつか……すぐ行くから」
そう吐き捨てると、アリアは再び女神らしい落ち着いた雰囲気に戻った。
「失礼しました。スキルを選びながらしばらくここで待っていてください」
白い階段の方へと駆け出し、その姿はすぐに霞んで消えていく。
「行っちゃったよ……他にも転生してる人っているんだな……」
画面を見ながらスキル一覧を確認していく。
「定番のアイテムボックス……ないな。鑑定スキルも……なさそう。パン1年分って、こんなの選ぶ奴いるのか」
――― 10分後 ―――
「やっぱ選ぶなら《伝説の剣》かなぁ。それにしても暇だ。景色いいし散歩でもするか」
ふと思いつき、辺りを見回す。
「魔法使えるのかな? えっと、画面押してもダメか。どうすんだ……出でよ! 魔法!」
大げさに手を突き出すと頭の中に魔法リストが浮かび上がった。
「おっ! じゃあ《フレイムキャノン》!」
次の瞬間、突き出した手から莫大な炎の奔流が生まれ、空の彼方までそびえ立つ巨大な樹に直撃し、轟音と共に激しく燃え上がった。
「おわっ?! やっちまった! 燃えてる燃えてる! 早く連絡しないと……って、スマホないんだ。画面のどっかにないかな」
慌てて画面を探し回るが、大樹を襲った炎は燃え盛っていった。
――― 20分後 ―――
「これは一体どういうことでしょうか」
アリアがぷるぷる震えていた。
《アイス》の連発でどうにか鎮火できたものの、大樹は無惨に氷と黒焦げに覆われ、辺りには煙が立ち込めている。
「いや、ホントにすいません。魔法の練習してたらついやっちゃって。火はなんとか消したんで」
「どいつもこいつも私の残業を増やさないと気が済まないようですね」
アリアの声は低く、呪詛のように響いた。
(やべー……女神様めちゃくちゃ怒ってるよ。残業ってこの人も社畜なのか?)
「はぁ……もういいです。先ほどの続きですがあなたには武器と特殊アイテムが1つずつ与えられます」
「さすが女神様、気前がいいですね! それも残業で頑張った成果だったりして」
「当然そうです。新しく作ったのでありがたく受け取って下さい。まずはこの《アリアン・ライフル》です。どれほど離れていてもロックした対象に攻撃が当たります」
「ライフル? 剣と魔法の世界なのに?」
「なにか言いましたか?」
「あ、いや……異世界なら銃ぐらいありますよね!」
アリアが睨みながら操作すると、SF映画に出てきそうな流線型のライフルが姿を現した。
「『視覚超強化』と併用することで上空にいる対象も簡単に撃ち落とすことができます。ちなみにこの武器は勇者以外は触れることができません」
「上空……それにしても、ただでさえ無敵仕様あるのにこんなチート武器ってバランス大丈夫なんですか?」
「問題ありません……え、今度はなに? 不具合で猫耳メイドが大量発生? もう少しで終わるから対応しといて」
再びアリアが誰かと会話を始めた。
(また誰かとしゃべってるよ。無双はしてみたいけどチートまみれってのは微妙だなぁ……その猫耳メイドの異世界に変えてくれないかな)
「失礼しました。続けますね。もうひとつが《アリアン・オーブ》です。これを使うと街や軍を丸ごと覆う強力な結界が張れます」
「えー……そこまでいくとさすがにやりすぎでは……しかも両方とも女神様の名前ついてるし……あ、なんでもないです」
すると突如、空間から別の男が現れる。
「え? 誰?」
男はアリアのところに早足で歩み寄ると、その腕を掴んで引っ張っていった。
「ちょ、ちょっと! なんで来たの! 引っ張らないで!」
「通信切ってるからです。緊急って言いましたよね? こちらの対応は後でも大丈夫です」
そのまま二人の姿が掻き消える。
「行っちゃったよ。ちょっと感じ悪いなぁ……早く異世界行かせて欲しいんだけど。勇者ってことはテンプレ通りなら可愛い子といっぱい出会えたりして……ん?」
アリアが立っていた場所の空間が点滅しているのに気付く。
「なんだろ? 触ってみるか。なんか出た、これ女神様の画面か?」
そこには自分のものとは異なる設定画面が広がっていた。
「すげぇ……いじって大丈夫かな。画面はこうやって消してまた表示か。これが俺の設定……」
項目を眺めていると『対魔王補正』という文字が目に入る。
「これが無敵仕様かな。うーん……なんだかなぁ……さすがになぁ……でも勝手に変えたらまた怒られそうだし」
しばらく悩んだ末、階段の方を何度か振り返ると決心したように操作を始めた。
「よし、変えよう。えっと明らかにチートっぽいのじゃなく良さげな……これいいな、『ソウル……」
「あぁもう!」
スキルを選択すると同時にアリアが姿を現す。慌てて画面を消し、平静を装った。
「い、いやー今回は早かったですね」
「すみませんが時間がないので早く進めますね。スキルは決まりましたか?」
アリアは画面を開いて急いで操作を進めていく。
「伝説の剣がいいと思ってたんですが、銃もらったんでもうなんでもいいです」
「そうですか? では『Sランク火魔法』にしますね。最後になりますが、名前はどうされますか?」
「名前……」
少し考えてから口にする。
「”スルト”で。神話由来なんですけど、よくネームで使ってたんで」
アリアが怪訝そうに眉を寄せながら設定を終える。
「準備が整いました。それでは転生を始めますので深呼吸して立っていて下さい」
アリアが詠唱を始めると、足元に魔法陣が浮かび上がる。
「転生者の魂、契約のもとに新たなる器へと導かん……」
まばゆい光が全身を包み込んでいく。
「今から勇者が行くからな。待ってろよ、異世界」
――― 第二部・転生者VS転生者編 開幕 ―――
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