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二〇一六年某日。現地時間八時十三分。
深く、深く、空気を吸い込む。嗅ぎ慣れた硝煙の匂いが鼻腔を突き、精神が戦闘態勢へとシフトしていくのを私は感じた。こころなしか、視界の隅を流れる車両の列の速度が緩やかになっていくのが感じられる。
どうやら今日の私は冴えているようだった。これなら、と、待機中の土気色の集落上空をひっきりなしに通過する偵察ヘリを砂漠の陽光に目を細めながら仰ぎ見る。この調子ならざっと十人くらいの敵兵の脳天に風穴を開けてやれるのではないか。兵士として長年アメリカ大統領のため引き金を引き続けてきた身体がそんなことを呟いた。
まだ見ぬ戦いの情景が目に浮かぶようで、戦士としての本能がくすぐられ、自然と口角が上がっていく。
私にとって今回のシリア派遣は三度目の従軍である。いつの間に、自分は人を殺すことに対して無感情になっていたのだろうか。こんな思考を巡らせていては、お前は残忍なテロリスト同然だと言われかねないが、少なくとも私には国際条約で定められた軍人としての常軌と、守るべきものがある。私はこうやっていつも引き金を引くことを、消化し、自分のなかで正当化していた。そんな私をよそに。
「ねえダンカン軍曹、本当にテロリストたちは動くんでしょうか。確証もないのに、待機し始めてからもう三時間ですよ。いい加減集中力が途切れてきました」
そう言いながら《Mk18》カービンを脇へほっぽり出してこちらを振り向いた、軍人より看護師の肩書の方がよっぽど似合う女性兵士の顔が凍りつく。
かなり残忍なものなのであろう笑みを浮かべる私は、砂色にペイントされた銃身上のレールにマウントされたバカでかいスコープを覗き込んだまま言う。
「馬鹿いえ。三時間くらいが何だと言うんだ。私が参加した戦闘での待機時間最長記録は一週間と五時間だぞ。これくらいで集中力が切れていてはまだまだ一流兵士には程遠いな、メアリ」
メアリことメアリ=クラーク上等兵は「一週間」の部分に気圧されてピュウと口笛を吹くも、まだ納得いかない様子で空を見上げる。
「どうしてクリスマスイブに雨のなか銃なんて構えていないといけないんでしょう。アメリカ海兵がいうようなことじゃないでしょうが、大統領が嫌いになちゃいますよ」
「なんだい、メアリ。君は選挙で民主党に入れたんじゃなかったのかい。今更大統領を嫌いになるなんて、後出しジャンケンみたいなことはやめにしようぜ」
分隊支援火器を二脚で支えた黒人海兵のジェームズ=マクミラン少尉は面白おかしく茶化して見せたが、私は返す言葉が見つからずに押黙る。
そう、今日は派遣地シリアで迎えた初めてのクリスマスイブだ。なのに、私は一時帰国を許されないばかりか家族の顔を見ることもできず、冷たいトリガーガードにただ人差し指を添えている。バージニアの自宅に四才になったばかりの娘をおいてきたというのに――
「こんなことを言うのは無頓着なのかもしれないが、敵はもうどこかで臨戦態勢に入っていて、じき動くだろうさ……見ろ。あの襲撃してくださいと言わんばかりの輸送車の列。私たちの敵はこんな獲物を見逃すような奴らじゃないさ。私たちは奴らが顔を出すのを待っているだけでいい」
と、半分は雑念を浮かべかけた自分に言い聞かせる。
スコープの十字線上では、イラク民主軍とアメリカ籍の兵員輸送車両が、道というより荒野に刻まれた轍といったほうが形容しやすい場所を一列になって慎重に走行していた。車両の隊列は、肉眼ではまだひよこ豆ほどの大きさにしか見えないくらいの距離にある。我々ネイビーシールズ・ウィンド分隊スナイパーチームの任務は、これから前線に送られる彼らの護衛である。それからついでに自分たちも前線投入されるというおまけ付きの任務なのだが、私としてはこのルートを兵員の補充ルートに選んだことは得策ではないと考えていた。
周囲の地形は岩や小規模な集落で入り組んでおり、強襲部隊の潜伏にはもってこいの地形である。私が連中ならば、間違いなく今我々が占拠している高台の村から機銃やらロケットランチャーやらで蜂の巣にしてやるところだが、幸運にも、防弾ジャケットから《Tac338》狙撃銃の銃床兼グリップに伸びた私の腕には誇り高き星条旗がたなびいている。上層部が、危険を承知で最短距離を駆け抜け、ゲリラとテロによって疲弊した前線を一刻でも早く救出することを選択したのなら、我々はかつて伝説的狙撃手クリス=カイルを擁した《チーム3》の一員として、彼らを無傷で前線に届けなければならない。
「それはそうなんですけどね、なぜよりによってイブに移動するんです? 当初の予定だとキャンプ地でのクリスマス前夜パーティーが予定されてたそうじゃないですか。あれやりたかったのに」
心底うらめしそうな後輩女性兵士に、お前の不満は七面鳥が食べられないことかよと苦笑する。
「まあ、なにせ味方はイスラム教徒が大多数のシリア民主軍で、敵はゴテゴテのイスラム過激派たちだ。イエス・キリストの誕生日を考慮して作戦実行日を決めろといっても無理な相談だからな」
「そりゃ良いな、分隊長。前線に着いたときのネタに丁度いいや」
「おふざけは程々にしろよ。ジェームズ。こっちは真面目なんだ。減らず口叩く暇があったら《ミニミ》の点検でもしてろ」
「ウーラー!」
素直に残弾とセーフティの確認を始めたジェームズは、戦士としても戦場のムードメーカーとしても実に有能である。
「ダンカン大尉とジェームズ少尉って、よくもこんな状況で冗談を言い合えますよね」
乾燥地帯の風景に溶け込む色の双眼鏡で周囲をくまなく探りながらメアリは呆れた声を出す。
「なあに。お前も五年後には必ずこうなっているさ。そうやって待機時間中までガチガチになっていては、シリアじゃあ一ヶ月と体が持たんぞ」
「そんなものでしょうか? 大尉と少尉の二人だけがおかしいなんてことないんですかね」
「ないな」
「ないね」
口を合わせて否定した私たちに、メアリはあからさまに首を横に振る。双眼鏡の内側ではさぞかし視界が揺れたことだろう。
そうこうしているうちに、我々の前方二百メートルほどの地点を重機関銃を搭載した汎用軍用車両《ハンヴィー》が星条旗をなびかせて通り過ぎていく。耳元の無線機からノイズ混じりの英語が流れてきた。
『こちらネイビーシールズのイエロー・アルファ・ファイアチーム。同じくネイビーシールズのウィンド分隊長に告ぐ。もうすぐお前が危険地帯と意見した地点に差し掛かる。安全が確認できるまで、進行を中断したほうがいいか。オーヴァー』
私はすぐさまスコープから目を離して襟元のマイクに向けて応じる。
「こちらウィンド分隊長。否だ。機関手をつけ、警戒を解かずに速度を上げて一気に走り抜けるんだ。止まっている車両は格好の的になる。オーヴァー」
『了解。今、速度上限を引き上げる許可をとる。クリアリングは任せた。アウト』
「……了解した、出来るだけ早くしろ。アウト。…………ああ、クソ!」
黙りこくった無線を睨みつけ、私は盛大に悪態をついた。
アメリカ軍では、いち兵卒が何かを提案しても、それがどんなに優れた案であれ、必ず上層に許可をとってから初めて実行するのが普通である。このシステムは戦場でアドレナリンが過剰分泌されて正常な判断を失った分隊には絶大な効果を発揮するものの、多くの場合、死の瀬戸際のようなシチュエーションでは行動を遅らせ、ときに多大な犠牲を払ってしまう。今度は、そうならないことを祈る他ない。
輸送車両も汎用車両も、皆が皆とろとろとナメクジの如き速度で直進している。あれでも時速三十キロメートルは出ているのだろうが、狙撃手である私からすれば、ナメクジはナメクジである。万が一敵に腕利きのスナイパーがいれば、これほど運転手を狙い撃つのに好都合な状況はない。
そうしてテロリストたちもおおよそ私と同じことを考えた様子だった。
「こちらウィンド分隊観測手。進行方向、オールクリアです。オーヴァー」
『了解。これより速度を――』
メアリの無線報告にイエロー・アルファ・ファイアチームが応答しかけた、その時だった。
「ちょっ、あれは……何か、岩陰で光りました。二時の方向!」
「なんだと⁉」
私は慌ててメアリがゆび指す方向に銃身を向ける。そこには、長く風雨に吹きさらされ続けて形の歪んだ岩がゴロゴロと転がっている小高い丘があるのみで――
いや、見つけた。一瞬だけ太陽光を跳ね返して紛れることなく光ったそれは、まさしく私の愛銃に取り付いているものと違わない、スコープの鏡面のものだ。つまり――
「ノットクリア、ノットクリア! 岩山にスナイパーです‼」
『しゃがめええ‼』
イエロー・アルファ・ファイアチームの絶叫とほぼ同時に防弾ガラスが破られる凄まじい音が無線越しに聞こえた。人体が折り重なって倒れるのがわかった。少し遅れて、大口径ライフルによるものと思われる爆発的な銃声が窪地全体に反響した。その間隔から判断するに、こちらからの距離七百メートル。イエロー・ファイアチームからはざっと五百メートルも隔たりがない。これだけの銃声を発する火器だ。近距離から撃ち抜かれれば、食らったのが身体のどこであろうと、動くこともままならない状態になるのは必至だ。
「イエロー、応答しろ! こちらウィンド分隊長! 状況がわからない。応答しろ!」
『あ、うう……大丈夫だ。幸い、負傷者はなし。狙撃された模様』
「やれやれ、戦闘開始だな」
ジェームズは渋々といった塩梅の表情でトリガーに指をかけた。
深く、深く、空気を吸い込む。嗅ぎ慣れた硝煙の匂いが鼻腔を突き、精神が戦闘態勢へとシフトしていくのを私は感じた。こころなしか、視界の隅を流れる車両の列の速度が緩やかになっていくのが感じられる。
どうやら今日の私は冴えているようだった。これなら、と、待機中の土気色の集落上空をひっきりなしに通過する偵察ヘリを砂漠の陽光に目を細めながら仰ぎ見る。この調子ならざっと十人くらいの敵兵の脳天に風穴を開けてやれるのではないか。兵士として長年アメリカ大統領のため引き金を引き続けてきた身体がそんなことを呟いた。
まだ見ぬ戦いの情景が目に浮かぶようで、戦士としての本能がくすぐられ、自然と口角が上がっていく。
私にとって今回のシリア派遣は三度目の従軍である。いつの間に、自分は人を殺すことに対して無感情になっていたのだろうか。こんな思考を巡らせていては、お前は残忍なテロリスト同然だと言われかねないが、少なくとも私には国際条約で定められた軍人としての常軌と、守るべきものがある。私はこうやっていつも引き金を引くことを、消化し、自分のなかで正当化していた。そんな私をよそに。
「ねえダンカン軍曹、本当にテロリストたちは動くんでしょうか。確証もないのに、待機し始めてからもう三時間ですよ。いい加減集中力が途切れてきました」
そう言いながら《Mk18》カービンを脇へほっぽり出してこちらを振り向いた、軍人より看護師の肩書の方がよっぽど似合う女性兵士の顔が凍りつく。
かなり残忍なものなのであろう笑みを浮かべる私は、砂色にペイントされた銃身上のレールにマウントされたバカでかいスコープを覗き込んだまま言う。
「馬鹿いえ。三時間くらいが何だと言うんだ。私が参加した戦闘での待機時間最長記録は一週間と五時間だぞ。これくらいで集中力が切れていてはまだまだ一流兵士には程遠いな、メアリ」
メアリことメアリ=クラーク上等兵は「一週間」の部分に気圧されてピュウと口笛を吹くも、まだ納得いかない様子で空を見上げる。
「どうしてクリスマスイブに雨のなか銃なんて構えていないといけないんでしょう。アメリカ海兵がいうようなことじゃないでしょうが、大統領が嫌いになちゃいますよ」
「なんだい、メアリ。君は選挙で民主党に入れたんじゃなかったのかい。今更大統領を嫌いになるなんて、後出しジャンケンみたいなことはやめにしようぜ」
分隊支援火器を二脚で支えた黒人海兵のジェームズ=マクミラン少尉は面白おかしく茶化して見せたが、私は返す言葉が見つからずに押黙る。
そう、今日は派遣地シリアで迎えた初めてのクリスマスイブだ。なのに、私は一時帰国を許されないばかりか家族の顔を見ることもできず、冷たいトリガーガードにただ人差し指を添えている。バージニアの自宅に四才になったばかりの娘をおいてきたというのに――
「こんなことを言うのは無頓着なのかもしれないが、敵はもうどこかで臨戦態勢に入っていて、じき動くだろうさ……見ろ。あの襲撃してくださいと言わんばかりの輸送車の列。私たちの敵はこんな獲物を見逃すような奴らじゃないさ。私たちは奴らが顔を出すのを待っているだけでいい」
と、半分は雑念を浮かべかけた自分に言い聞かせる。
スコープの十字線上では、イラク民主軍とアメリカ籍の兵員輸送車両が、道というより荒野に刻まれた轍といったほうが形容しやすい場所を一列になって慎重に走行していた。車両の隊列は、肉眼ではまだひよこ豆ほどの大きさにしか見えないくらいの距離にある。我々ネイビーシールズ・ウィンド分隊スナイパーチームの任務は、これから前線に送られる彼らの護衛である。それからついでに自分たちも前線投入されるというおまけ付きの任務なのだが、私としてはこのルートを兵員の補充ルートに選んだことは得策ではないと考えていた。
周囲の地形は岩や小規模な集落で入り組んでおり、強襲部隊の潜伏にはもってこいの地形である。私が連中ならば、間違いなく今我々が占拠している高台の村から機銃やらロケットランチャーやらで蜂の巣にしてやるところだが、幸運にも、防弾ジャケットから《Tac338》狙撃銃の銃床兼グリップに伸びた私の腕には誇り高き星条旗がたなびいている。上層部が、危険を承知で最短距離を駆け抜け、ゲリラとテロによって疲弊した前線を一刻でも早く救出することを選択したのなら、我々はかつて伝説的狙撃手クリス=カイルを擁した《チーム3》の一員として、彼らを無傷で前線に届けなければならない。
「それはそうなんですけどね、なぜよりによってイブに移動するんです? 当初の予定だとキャンプ地でのクリスマス前夜パーティーが予定されてたそうじゃないですか。あれやりたかったのに」
心底うらめしそうな後輩女性兵士に、お前の不満は七面鳥が食べられないことかよと苦笑する。
「まあ、なにせ味方はイスラム教徒が大多数のシリア民主軍で、敵はゴテゴテのイスラム過激派たちだ。イエス・キリストの誕生日を考慮して作戦実行日を決めろといっても無理な相談だからな」
「そりゃ良いな、分隊長。前線に着いたときのネタに丁度いいや」
「おふざけは程々にしろよ。ジェームズ。こっちは真面目なんだ。減らず口叩く暇があったら《ミニミ》の点検でもしてろ」
「ウーラー!」
素直に残弾とセーフティの確認を始めたジェームズは、戦士としても戦場のムードメーカーとしても実に有能である。
「ダンカン大尉とジェームズ少尉って、よくもこんな状況で冗談を言い合えますよね」
乾燥地帯の風景に溶け込む色の双眼鏡で周囲をくまなく探りながらメアリは呆れた声を出す。
「なあに。お前も五年後には必ずこうなっているさ。そうやって待機時間中までガチガチになっていては、シリアじゃあ一ヶ月と体が持たんぞ」
「そんなものでしょうか? 大尉と少尉の二人だけがおかしいなんてことないんですかね」
「ないな」
「ないね」
口を合わせて否定した私たちに、メアリはあからさまに首を横に振る。双眼鏡の内側ではさぞかし視界が揺れたことだろう。
そうこうしているうちに、我々の前方二百メートルほどの地点を重機関銃を搭載した汎用軍用車両《ハンヴィー》が星条旗をなびかせて通り過ぎていく。耳元の無線機からノイズ混じりの英語が流れてきた。
『こちらネイビーシールズのイエロー・アルファ・ファイアチーム。同じくネイビーシールズのウィンド分隊長に告ぐ。もうすぐお前が危険地帯と意見した地点に差し掛かる。安全が確認できるまで、進行を中断したほうがいいか。オーヴァー』
私はすぐさまスコープから目を離して襟元のマイクに向けて応じる。
「こちらウィンド分隊長。否だ。機関手をつけ、警戒を解かずに速度を上げて一気に走り抜けるんだ。止まっている車両は格好の的になる。オーヴァー」
『了解。今、速度上限を引き上げる許可をとる。クリアリングは任せた。アウト』
「……了解した、出来るだけ早くしろ。アウト。…………ああ、クソ!」
黙りこくった無線を睨みつけ、私は盛大に悪態をついた。
アメリカ軍では、いち兵卒が何かを提案しても、それがどんなに優れた案であれ、必ず上層に許可をとってから初めて実行するのが普通である。このシステムは戦場でアドレナリンが過剰分泌されて正常な判断を失った分隊には絶大な効果を発揮するものの、多くの場合、死の瀬戸際のようなシチュエーションでは行動を遅らせ、ときに多大な犠牲を払ってしまう。今度は、そうならないことを祈る他ない。
輸送車両も汎用車両も、皆が皆とろとろとナメクジの如き速度で直進している。あれでも時速三十キロメートルは出ているのだろうが、狙撃手である私からすれば、ナメクジはナメクジである。万が一敵に腕利きのスナイパーがいれば、これほど運転手を狙い撃つのに好都合な状況はない。
そうしてテロリストたちもおおよそ私と同じことを考えた様子だった。
「こちらウィンド分隊観測手。進行方向、オールクリアです。オーヴァー」
『了解。これより速度を――』
メアリの無線報告にイエロー・アルファ・ファイアチームが応答しかけた、その時だった。
「ちょっ、あれは……何か、岩陰で光りました。二時の方向!」
「なんだと⁉」
私は慌ててメアリがゆび指す方向に銃身を向ける。そこには、長く風雨に吹きさらされ続けて形の歪んだ岩がゴロゴロと転がっている小高い丘があるのみで――
いや、見つけた。一瞬だけ太陽光を跳ね返して紛れることなく光ったそれは、まさしく私の愛銃に取り付いているものと違わない、スコープの鏡面のものだ。つまり――
「ノットクリア、ノットクリア! 岩山にスナイパーです‼」
『しゃがめええ‼』
イエロー・アルファ・ファイアチームの絶叫とほぼ同時に防弾ガラスが破られる凄まじい音が無線越しに聞こえた。人体が折り重なって倒れるのがわかった。少し遅れて、大口径ライフルによるものと思われる爆発的な銃声が窪地全体に反響した。その間隔から判断するに、こちらからの距離七百メートル。イエロー・ファイアチームからはざっと五百メートルも隔たりがない。これだけの銃声を発する火器だ。近距離から撃ち抜かれれば、食らったのが身体のどこであろうと、動くこともままならない状態になるのは必至だ。
「イエロー、応答しろ! こちらウィンド分隊長! 状況がわからない。応答しろ!」
『あ、うう……大丈夫だ。幸い、負傷者はなし。狙撃された模様』
「やれやれ、戦闘開始だな」
ジェームズは渋々といった塩梅の表情でトリガーに指をかけた。
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