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第99話 仙閥蛟竜
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あれよあれよと僕用の個室(牢屋)が用意され、僕用の衣装が次々と運ばれてきた。
「六仙様。準備完了です」
「ナイスだネス君! 撮影は任せたよ。後で僕のPCに写真を送ることも忘れずに!」
「もちろんです」
「待ってぇ!! こんなのおかしいです!」
夏祭りの浴衣の時といい、最近なんでこんな着替えさせられるの!?
「オケアノスの国王として、オケアノス軍の総統として命ずる! シキ君……スク水とメイド服とバニースーツと……あと僕が用意したあれやこれやを着たまえ!!」
「職・権・乱・用だぁーーーーーーーっっ!!!」
僕はオケアノス軍の兵士に囲まれ、着せ替え人形と化したのだった。
---
――中略。
スク水写真、バニー写真、メイド写真を手に入れた僕は、改めて六仙さんから指示を貰う。
「生憎、僕はこの街を離れることができなくてね。君にトライアドの回収をお願いしたい」
「うぅ……もうお嫁に行けない……」
「もしもの時は僕が貰ってあげるよ。ほら、機嫌直して。君の大好きな闘争の時間だよ」
六仙さんは急かすように手を叩く。
「君には軍艦でジョリーロジャーまで行ってもらって、そこからはイヴ君にピラミッドまで送ってもらう」
「イヴさんですか……いま手空いてるんですかね」
「先ほど連絡を取った所、問題ないそうです」
それは助かる。運転の技術において、イヴさんより信用できる人はいない。
「こっちで運転手を派遣するより、あの砂漠地帯を走り慣れている彼女の方が適役だろう。護衛はいくつ必要かな?」
「いりません。僕とイヴさんだけで十分です」
というか、人が多ければ多いほどやりにくい。
「それは頼もしい」
僕らは監獄を出て、城壁門から外に出る。
門の前には車が停まっていた。軍警の車だ。
「この車で港まで行くんだ」
「いけますかね……」
僕には賞金が賭けられているからね。街中も安全ではない。
来る時は先遣隊を殲滅した後だったから邪魔してくる賞金稼ぎも少なかったけど、今はもう彼女たちも復活しているだろうし、かなり待ち伏せが居てもおかしくない。
「安心したまえ。その懸念は僕が手ずから潰そう。たまには一肌脱ごうじゃないか」
六仙さんはどこか楽し気な表情をする。
「ネス君。運転は君に任せる」
「了解です」
ネスさんが運転席に座る。
「それでは、失礼します」
「待った。これを預けておく」
六仙さんからオケアノス軍の軍旗(海竜が描かれた旗)の絵が銃身にあるハンドガンを渡される。
「『クライムガン』。これでキルした人間は自動的にオケアノスの監獄に送られる。もしも途中、グリーンアイス傘下と思われるプレイヤーに会ったらできるだけこれで倒して欲しい」
通常は倒してもチップ半損とステータスの一定時間低下で終わりだ。だけどこれで倒せば監獄送りにできるわけだ。それって、一般人に渡していいものなのかな。
「六仙様、それは……」
ネスさんは焦りのある表情を見せる。
「本来軍警にのみ許された武器だ。もちろん、事が済んだら返してもらう」
やっぱり通常は持たせちゃいけないものなんだ。
「後は頼んだよ」
僕は車の後部座席に乗る。僕が乗ったのを確認して、運転手のネスさんは「出発します」と言い車を走らせた。
アシアの街を走っていく。
道路を走っている途中、やはりと言うか、レーダーに反応が出て来た。
大量のプレイヤーが、この車を追うように動いている。
「やっぱり僕狙いの賞金稼ぎが! あ、あの! このままでは包囲され――」
「問題ございません」
ネスさんは前を見たまま言う。
追手なんて眼中に入っていない様子だ。
「え……」
レーダーから、次々とプレイヤーアイコンが消えていく。
窓を開け、頭を出して後ろを見る。
白い制服を着た兵士が、次々と僕を狙う賊を打ち倒していく。
驚いたのは個々の能力ではなく、その連携。何十人と居るのに、その全てが繋がって動いている。
「『仙閥蛟竜』。六仙様の私設部隊です。構成員は六仙様含めて100人。この100人が余すことなく共に動き、連動し、敵を打ち倒す」
僕は双眼鏡をアイテムポーチから取り出し、さらに後方を見る。
時計塔。機械仕掛けの時計の前に、六仙さんは座り、スナイパーライフルを構えていた。その周囲には大量の白い兵士が立っている。
「特徴として、『仙閥蛟竜』は白い制服を着ています。その背広には青い海竜の紋章がある。旅人を喰らい、深海へと堕とす海竜の紋章が……」
六仙さんの狙撃は必中じゃない。外すことも多々ある。しかし、どれも意図して外したものだ。弾で相手を動かす、あるいは動きを抑制し、味方に取らせる。
六仙さんの狙撃1つで、部隊の動きが変わる。六仙さんの狙撃から六仙のやりたいこと、意図を汲んで陣形を変える。
――なんて洗練された部隊だ。感動すら覚える。
「あなたなら突破できますか?」
「……無理ですね。オーケストラを見てる気分です。1人の指揮者が、あらゆる楽器を統率している。クセの強いホルンを、内気なチェロを、お調子者のフルートを、完璧に操って1つの曲にしています」
六仙さんの狙撃銃はまるで指揮棒だ。
「これに独奏で対抗するのは……今の僕には無理ですね」
六仙さんと同じことをするのは一生不可能だろう。
まさに僕と対照的。群でこそ真価を発揮する狙撃手。アレがインフェニティ・スペース最強のスナイパーの姿か……!
六仙さんが持っているスナイパーライフルは強力だけど、決して∞アーツレベルじゃない。アレでまだ奥の手を残しているのだから恐ろしい。
「『今の』、ですか」
ネスさんは小さく笑う。
「あ、えっと、なにか変なこと言いました?」
「いいえ。あなたはそれでいい」
「?」
結局一切引き金を引かずに済んだ。
僕は港に入り、軍艦に乗る。目指すはジョリーロジャー近辺にあるピラミッド……ラビちゃんの宝物庫だ。
「六仙様。準備完了です」
「ナイスだネス君! 撮影は任せたよ。後で僕のPCに写真を送ることも忘れずに!」
「もちろんです」
「待ってぇ!! こんなのおかしいです!」
夏祭りの浴衣の時といい、最近なんでこんな着替えさせられるの!?
「オケアノスの国王として、オケアノス軍の総統として命ずる! シキ君……スク水とメイド服とバニースーツと……あと僕が用意したあれやこれやを着たまえ!!」
「職・権・乱・用だぁーーーーーーーっっ!!!」
僕はオケアノス軍の兵士に囲まれ、着せ替え人形と化したのだった。
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――中略。
スク水写真、バニー写真、メイド写真を手に入れた僕は、改めて六仙さんから指示を貰う。
「生憎、僕はこの街を離れることができなくてね。君にトライアドの回収をお願いしたい」
「うぅ……もうお嫁に行けない……」
「もしもの時は僕が貰ってあげるよ。ほら、機嫌直して。君の大好きな闘争の時間だよ」
六仙さんは急かすように手を叩く。
「君には軍艦でジョリーロジャーまで行ってもらって、そこからはイヴ君にピラミッドまで送ってもらう」
「イヴさんですか……いま手空いてるんですかね」
「先ほど連絡を取った所、問題ないそうです」
それは助かる。運転の技術において、イヴさんより信用できる人はいない。
「こっちで運転手を派遣するより、あの砂漠地帯を走り慣れている彼女の方が適役だろう。護衛はいくつ必要かな?」
「いりません。僕とイヴさんだけで十分です」
というか、人が多ければ多いほどやりにくい。
「それは頼もしい」
僕らは監獄を出て、城壁門から外に出る。
門の前には車が停まっていた。軍警の車だ。
「この車で港まで行くんだ」
「いけますかね……」
僕には賞金が賭けられているからね。街中も安全ではない。
来る時は先遣隊を殲滅した後だったから邪魔してくる賞金稼ぎも少なかったけど、今はもう彼女たちも復活しているだろうし、かなり待ち伏せが居てもおかしくない。
「安心したまえ。その懸念は僕が手ずから潰そう。たまには一肌脱ごうじゃないか」
六仙さんはどこか楽し気な表情をする。
「ネス君。運転は君に任せる」
「了解です」
ネスさんが運転席に座る。
「それでは、失礼します」
「待った。これを預けておく」
六仙さんからオケアノス軍の軍旗(海竜が描かれた旗)の絵が銃身にあるハンドガンを渡される。
「『クライムガン』。これでキルした人間は自動的にオケアノスの監獄に送られる。もしも途中、グリーンアイス傘下と思われるプレイヤーに会ったらできるだけこれで倒して欲しい」
通常は倒してもチップ半損とステータスの一定時間低下で終わりだ。だけどこれで倒せば監獄送りにできるわけだ。それって、一般人に渡していいものなのかな。
「六仙様、それは……」
ネスさんは焦りのある表情を見せる。
「本来軍警にのみ許された武器だ。もちろん、事が済んだら返してもらう」
やっぱり通常は持たせちゃいけないものなんだ。
「後は頼んだよ」
僕は車の後部座席に乗る。僕が乗ったのを確認して、運転手のネスさんは「出発します」と言い車を走らせた。
アシアの街を走っていく。
道路を走っている途中、やはりと言うか、レーダーに反応が出て来た。
大量のプレイヤーが、この車を追うように動いている。
「やっぱり僕狙いの賞金稼ぎが! あ、あの! このままでは包囲され――」
「問題ございません」
ネスさんは前を見たまま言う。
追手なんて眼中に入っていない様子だ。
「え……」
レーダーから、次々とプレイヤーアイコンが消えていく。
窓を開け、頭を出して後ろを見る。
白い制服を着た兵士が、次々と僕を狙う賊を打ち倒していく。
驚いたのは個々の能力ではなく、その連携。何十人と居るのに、その全てが繋がって動いている。
「『仙閥蛟竜』。六仙様の私設部隊です。構成員は六仙様含めて100人。この100人が余すことなく共に動き、連動し、敵を打ち倒す」
僕は双眼鏡をアイテムポーチから取り出し、さらに後方を見る。
時計塔。機械仕掛けの時計の前に、六仙さんは座り、スナイパーライフルを構えていた。その周囲には大量の白い兵士が立っている。
「特徴として、『仙閥蛟竜』は白い制服を着ています。その背広には青い海竜の紋章がある。旅人を喰らい、深海へと堕とす海竜の紋章が……」
六仙さんの狙撃は必中じゃない。外すことも多々ある。しかし、どれも意図して外したものだ。弾で相手を動かす、あるいは動きを抑制し、味方に取らせる。
六仙さんの狙撃1つで、部隊の動きが変わる。六仙さんの狙撃から六仙のやりたいこと、意図を汲んで陣形を変える。
――なんて洗練された部隊だ。感動すら覚える。
「あなたなら突破できますか?」
「……無理ですね。オーケストラを見てる気分です。1人の指揮者が、あらゆる楽器を統率している。クセの強いホルンを、内気なチェロを、お調子者のフルートを、完璧に操って1つの曲にしています」
六仙さんの狙撃銃はまるで指揮棒だ。
「これに独奏で対抗するのは……今の僕には無理ですね」
六仙さんと同じことをするのは一生不可能だろう。
まさに僕と対照的。群でこそ真価を発揮する狙撃手。アレがインフェニティ・スペース最強のスナイパーの姿か……!
六仙さんが持っているスナイパーライフルは強力だけど、決して∞アーツレベルじゃない。アレでまだ奥の手を残しているのだから恐ろしい。
「『今の』、ですか」
ネスさんは小さく笑う。
「あ、えっと、なにか変なこと言いました?」
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