102 / 113
第102話 白衣の監視者
しおりを挟む
「やれやれ。ギリギリ先手を取れたな」
モニターで宝物庫を監視しながら白衣の女性――ロゼッタは言う。
「ナドラ君に感謝だねぇ。彼女の残したレポートのおかげで砂漠の探索が容易に終わった。実に簡単な仕事だったろ? 99」
モニター室に1人のプレイヤーが入ってくる。『99』と書かれたマスクをしたボーイッシュな女性だ。
彼女はプレイヤーネーム・99。宝物庫から宝を盗んだ張本人だ。
「まぁね。あんなセキュリティ余裕。ほら、約束の品だよ」
「ありがと」
99はトライアドを2個入れた袋をロゼッタに投げる。
ロゼッタが袋をキャッチすると、99はロゼッタに詰め寄り、白衣の胸倉を掴み上げた。
「おやおや、どうしたのかな。反抗期?」
「……わざわざ他ゲームのチャンピオン集めてやることが、こんなコソ泥紛いのことかよ。あぁ?」
ボソボソとした声に強い怒気を混ぜて99は言う。
「あたし達は他のゲームで敵を、情熱を無くした人間……ゲームに飽きちまった人間だ。そのあたし達に再び火を灯すとお前は約束した。なのになんだこりゃ? このゲームに来てから半月、ロクな仕事がありゃしない」
「モニターを見てごらんよ。アレが君たちに火を灯す人間だよ」
99はモニターを、そこに映る狙撃手を見る。
「名はシキ。吾輩がいま、オケアノスにおいて最も警戒する人間だ。オケアノスを落とすにあたって、彼女は最大の障害になるだろう」
「へぇ」
99は胸倉を放し、モニターに集中する。
「まったくの覇気を感じないけどね」
「見てればわかるさ。懸賞金をかけて大量の賞金稼ぎを動員したが、結局実力の一端すら見せてはくれなかった。ボイコットするのは、彼女の強さを見てからでも遅くは無いと思うよ」
ロゼッタは椅子に座り直し、99の横顔を見る。
戦いが進むにつれ99はモニターに釘付けになり、マスク越しでもわかるぐらい口角を上げていた。
(格ゲーの世界チャンピオン、RTA走者、そしてFPS界の女王。この3人はすでにこの組織でトップクラスのプレイヤーになった。グリーンアイスとして活動して2年、ようやくここまで駒が揃った)
ロゼッタはグリーンアイスとして活動し、テロ組織を拡大する上である問題に直面した。それは実力者の不足。数は揃えられても、質は揃えられなかった。
すでに名を馳せたプレイヤーはいずれかの組織に所属しており、ロゼッタの組織には属さなかった。
インフェニティ・スペースはプレイヤースキルで数の利を壊すことができるゲーム。強力なプレイヤーがいないことには始まらない。
そこで彼女はこのゲーム内ではなく、他ゲームから実力者を引っ張り込んだ。
格ゲー界の皇帝・神堂カムイ。
FPS界の魔女・99。
RTA界の覇者・ソニック。
SNSで直接呼びかけ、巧みな話術と交渉で彼女たちを引き入れた。
(バスケットボールの神様と呼ばれたマイケル・ジョーダンはベースボールでもプロになることができた。ボー・ジャクソンはベースボールとアメリカンフットボールで一流の成績を残した。1つのスポーツで結果を残した人間が他のスポーツに挑戦し、好成績を残した例は多くある)
いわゆるマルチアスリート。
ベースとなる身体能力が高いため、僅かな経験値でも他分野のトッププレイヤーと張り合える人間はいる。ロゼッタはこの例を参考に、他ゲームから有力プレイヤーを引っ張る策を思いついた。
(ゲームも同じ。1つのゲームを極めた人間は他のゲームもそれなりにこなせる。それが世界チャンピオンレベルなら尚更だ)
ロゼッタは莫大な資産・資材を持つため、彼女たちの鍛錬に必要な物は全て用意できた。自らが教官となり、彼女たちに教育を施すこともあった。半月という僅かな時間で彼女たちのレベルは120まで上がり、その技術もレベルに恥じぬ所まで成長させることができた。
(カムイ、99、ソニック。加えて彼女たちのアビリティデータをベースに量産したヒューマノイド。オケアノス各地にいる部下たち。白い流星のコピー。そしてトライアド。戦力は整った……落とすぞオケアノス。このコロニーは、この私が頂く)
モニターで宝物庫を監視しながら白衣の女性――ロゼッタは言う。
「ナドラ君に感謝だねぇ。彼女の残したレポートのおかげで砂漠の探索が容易に終わった。実に簡単な仕事だったろ? 99」
モニター室に1人のプレイヤーが入ってくる。『99』と書かれたマスクをしたボーイッシュな女性だ。
彼女はプレイヤーネーム・99。宝物庫から宝を盗んだ張本人だ。
「まぁね。あんなセキュリティ余裕。ほら、約束の品だよ」
「ありがと」
99はトライアドを2個入れた袋をロゼッタに投げる。
ロゼッタが袋をキャッチすると、99はロゼッタに詰め寄り、白衣の胸倉を掴み上げた。
「おやおや、どうしたのかな。反抗期?」
「……わざわざ他ゲームのチャンピオン集めてやることが、こんなコソ泥紛いのことかよ。あぁ?」
ボソボソとした声に強い怒気を混ぜて99は言う。
「あたし達は他のゲームで敵を、情熱を無くした人間……ゲームに飽きちまった人間だ。そのあたし達に再び火を灯すとお前は約束した。なのになんだこりゃ? このゲームに来てから半月、ロクな仕事がありゃしない」
「モニターを見てごらんよ。アレが君たちに火を灯す人間だよ」
99はモニターを、そこに映る狙撃手を見る。
「名はシキ。吾輩がいま、オケアノスにおいて最も警戒する人間だ。オケアノスを落とすにあたって、彼女は最大の障害になるだろう」
「へぇ」
99は胸倉を放し、モニターに集中する。
「まったくの覇気を感じないけどね」
「見てればわかるさ。懸賞金をかけて大量の賞金稼ぎを動員したが、結局実力の一端すら見せてはくれなかった。ボイコットするのは、彼女の強さを見てからでも遅くは無いと思うよ」
ロゼッタは椅子に座り直し、99の横顔を見る。
戦いが進むにつれ99はモニターに釘付けになり、マスク越しでもわかるぐらい口角を上げていた。
(格ゲーの世界チャンピオン、RTA走者、そしてFPS界の女王。この3人はすでにこの組織でトップクラスのプレイヤーになった。グリーンアイスとして活動して2年、ようやくここまで駒が揃った)
ロゼッタはグリーンアイスとして活動し、テロ組織を拡大する上である問題に直面した。それは実力者の不足。数は揃えられても、質は揃えられなかった。
すでに名を馳せたプレイヤーはいずれかの組織に所属しており、ロゼッタの組織には属さなかった。
インフェニティ・スペースはプレイヤースキルで数の利を壊すことができるゲーム。強力なプレイヤーがいないことには始まらない。
そこで彼女はこのゲーム内ではなく、他ゲームから実力者を引っ張り込んだ。
格ゲー界の皇帝・神堂カムイ。
FPS界の魔女・99。
RTA界の覇者・ソニック。
SNSで直接呼びかけ、巧みな話術と交渉で彼女たちを引き入れた。
(バスケットボールの神様と呼ばれたマイケル・ジョーダンはベースボールでもプロになることができた。ボー・ジャクソンはベースボールとアメリカンフットボールで一流の成績を残した。1つのスポーツで結果を残した人間が他のスポーツに挑戦し、好成績を残した例は多くある)
いわゆるマルチアスリート。
ベースとなる身体能力が高いため、僅かな経験値でも他分野のトッププレイヤーと張り合える人間はいる。ロゼッタはこの例を参考に、他ゲームから有力プレイヤーを引っ張る策を思いついた。
(ゲームも同じ。1つのゲームを極めた人間は他のゲームもそれなりにこなせる。それが世界チャンピオンレベルなら尚更だ)
ロゼッタは莫大な資産・資材を持つため、彼女たちの鍛錬に必要な物は全て用意できた。自らが教官となり、彼女たちに教育を施すこともあった。半月という僅かな時間で彼女たちのレベルは120まで上がり、その技術もレベルに恥じぬ所まで成長させることができた。
(カムイ、99、ソニック。加えて彼女たちのアビリティデータをベースに量産したヒューマノイド。オケアノス各地にいる部下たち。白い流星のコピー。そしてトライアド。戦力は整った……落とすぞオケアノス。このコロニーは、この私が頂く)
10
あなたにおすすめの小説
親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します
miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。
そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。
軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。
誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。
毎日22時投稿します。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
無表情ドールマスター
けんはる
ファンタジー
無表情少女香月 ゆずが姉に誘われて始めたVRMMO〈Only Fantasy〉で十天聖の一人に選ばれてしまうが
そんなことは関係なく自由に行動していく物語
良ければ
誤字・脱字があれば指摘してください
感想もあれば嬉しいです
小説を書こうでも書いてます
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
兄貴のお嫁さんは異世界のセクシー・エルフ! 巨乳の兄嫁にひと目惚れ!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
ファンタジー
夏休み前、友朗は祖父の屋敷の留守を預かっていた。
その屋敷に兄貴と共に兄嫁が現れた。シェリーと言う名の巨乳の美少女エルフだった。
友朗はシェリーにひと目惚れしたが、もちろん兄嫁だ。好きだと告白する事は出来ない。
兄貴とシェリーが仲良くしているのを見ると友朗は嫉妬心が芽生えた。
そして兄貴が事故に遭い、両足を骨折し入院してしまった。
当分の間、友朗はセクシー・エルフのシェリーとふたりっきりで暮らすことになった。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる