大人気ダンジョン配信者のサポーターをやっていたけど、あまりにパワハラが酷いから辞めることにする。ん? なんか再生数激オチしているけど大丈夫?

空松蓮司

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第72話 敵の狙い

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 オッドキャット本部に帰還。
 夜猫をメディカルルームに送った後、俺はアビスの部屋を訪れた。部屋にはアビスペアが揃っている。
 本部へ帰還する道中にすでに概要は伝えてある。細かい部分は直接俺の口から補足する。

「如月ちゃんが攫われたが、その代わり敵のアジトがわかったか。上出来だ」
「……」
「――と言うと君は怒るよね。ごめんごめん」

 アビスは本の山に座り、膝に置いたノートパソコンを操作する。

「ピラミットタイプの迷宮は実は少なくない。け、れ、ど、君が割り出した大体の座標と照らし合わせるに、ここで確定だな」

 アビスはピラミッドの形をした迷宮の画像を見せる。

「C級迷宮アロゴ。全10階。アマツガハラと違って空間拡張は無し。つまり見たまんまの内面積というわけだ」

 俺が【忍者蜂】越しに見た物とまったく同じだ。

「担当ギルドはどこだ!?」
「急かすな。すぐわか――マジか……」

 アビスは口を開けたまま、静止した。

「? どうしたアビス」
「……まったく、驚くよ。いやはや本当に驚く。僕はどうやらのことを低く見ていたらしい。いやいや本当に驚いた」
「なんだよ。もったいぶってないで早く教えろ」
「いやだって君、これはもったいぶりたくもなるだろう」

 アビスはノートパソコンの画面をこちらに向ける。

「げっ!?」

 C級迷宮アロゴ――担当ギルド・フェンリル。

「嘘だろ……!」

 担当シーカー……成瀬美亜。

「ありえねぇ!! だ、だってフェンリルは時限迷宮なんざ持ってなかったし、飯塚の一件でギルドランキングも大きく落としたはずだ! ギルド協会から時限迷宮を任せられるはずがない。なのになんで……」
「A級シーカーの鮫淵さめぶち心惨しんざんがフェンリルに加入したらしいよ。ほら」

 ギザギザの歯で、鮫のタトゥーを腕に彫った人相の悪い男の画像をアビスは見せてくる。画像の横にはそいつについての記事が載っている。

「オーパーツは“アラザメ”。ギザギザの刃が付いたブーメランだね。配信活動はあまりしてないみたいだ。おかげで詳細な情報はないね」
「そいつの加入でまたギルドランキングを上げて、時限迷宮を任せられるまでになったって言うのか……」
「アビス様、その時限迷宮の期限はいつなのですか?」

 一色さんが質問する。

「10日後だね。迷宮自体は20日前からある。うん、本拠地ではないな。時限迷宮を本拠地にするのはコスト面から考えてあり得ない。どれだけ資源を積んでも大体数か月で消失してしまうからね」
「臨時の拠点ってことかな」
「中継点、ですね。ワープ系のオーパーツは距離に制限があるはず。恐らくその迷宮から本拠地にワープを繋ぎ、資源を運んでいるのでしょう」
「……もしかしたら如月の身柄はすでに別の場所に運ばれているかもしれないな」

 たとえ如月が居なくても行くしかない。そこにしか、如月の居場所についての情報は無いのだから。

「ともかく敵の全戦力が集まっているわけじゃなさそうだ。好都合だね。氷山の一角ならばオッドキャットだけでも対応できる。人工オーパーツの集団も大した戦力じゃないんだろ?」
「ああ。卑怯な手でも使われない限り、B級以上のシーカーが手間取ることは無いだろう」
「OK。それなら蒼鍔君と空木さんも招集すれば余裕で――」
「あ……」

 一色さんが不意に声を漏らす。

「一色さん?」

 恐怖を感じている表情だ。確実に、良い閃きではなく悪い閃きをしてしまった顔。

「どうしたんだい?」
「いえ……人工オーパーツ、それだけではアビス様の脅威にはならないかもしれません。だけど……」

 まさに悪魔の方程式を、一色さんは口にする。

「もしも人工オーパーツでも魔物化ができたら、まずくないですか?」
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