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第55話 墨に染まる
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体が軽い。
オリジンの時とは比にならない能力向上効果を感じる。
万能感が脳を貫く。脳汁が出る……ってのはこういう感覚のことを言うのかな?
「木刀? そんな棒切れで、俺に勝てると思ってんのかよぉ!!」
飯塚が斧を振るう。俺はそれを、左手に持った墨刀で受ける。
「あぁっ!?」
「これで全力か?」
俺は墨刀で飯塚の腹を殴り飛ばす。
飯塚の腹は抉れるが、すぐさま再生する。
「――ははっ!! なんかよくわからねぇが、強くなったみたいだな~凄い凄い! でもなぁ、そんな攻撃何度受けても俺を殺すことはできねえ!!」
「だったら何度も受けてみろよ」
俺と飯塚は激しく打ち合う。
墨刀を振る度、墨で描いたような斬跡が生まれる。
そして墨刀が相手にぶつかる、もしくはオーパーツとぶつかると、斬撃に乗った墨が弾ける。墨が弾ける度、飯塚のオーパーツである斧が徐々に黒く変色していく。
「ちっ! うぜぇな!! 避けんじゃねぇ――よぉ!!!」
飯塚は体と斧を可変させ、変幻自在に攻撃を繰り出してくるが、その全てを避け、いなし、カウンターをぶつけていく。
「うぐっ!?」
「……」
全部視える。全部わかる。
この万能感……オーパーツで能力が向上しているからだけではない。
窮地、後に引けない状況が生み出す集中力、さらに1度臨死体験のようなモノを経験したからか死を客観的に捉え死に対する恐怖感が薄くなっている。臆せず前に出れる。
雪が吹き荒れているのに、肉体が熱い。決して風邪を引いているわけではない。気持ちよく汗をかけている。神経もいつもより鋭い。全身を流れる汗の一滴一滴まで把握できる。
「なんなんだ……なんなんだよお前!!!」
「さぁな。俺もこんな俺は知らねぇよ……!」
今ならなんだって出来そうだ。
「飯塚、最後に教えてやる」
「あぁ!?」
「俺のオーパーツは相手に攻撃を加える度、もしくは相手のオーパーツに触れる度、その相手のオーパーツを墨色に染めていく」
飯塚のオーパーツの8割が、墨で塗ったように黒く染まる。
「そしてオーパーツが完全に墨色に染まった時、オーパーツはその全機能を失う」
飯塚はそこでようやく、自身のオーパーツが黒く染まっていることに気づく。
「これで詰みだ」
俺は渾身の一撃を飯塚の腹に喰らわす。同時に、飯塚のオーパーツが真っ黒に染まる。
「【墨化】――そうなったらもう、可変機能も、退魔能力も、身体補助効果も失われる」
オーパーツの完全な無力化、それが俺のオーパーツの能力。
「俺のオーパーツは、オーパーツをねじ伏せることに特化した兵器なんだ」
「ははは! 負け惜しみに出まかせ言ってんじゃ……」
飯塚の膝が、落ちる。
「なんだよ……コレ」
まるで糸の切れた人形のように、飯塚の全身が脱力する。
「あ、ありえねぇ! ち、力が……抜けていく……!?」
この魔物化、詳しい理屈は知らないが、オーパーツを核に成り立っていることは確実だ。そのオーパーツが腐れば、姿を保てない。
「退魔属性は一応あるけど、対シーカー用のオーパーツとはな……まったく、俺はとことんシーカーという職に嫌われているみたいだ」
通常の探索では対シーカー、対オーパーツの能力なんて無用の長物だからな。
「あ……なんで……なんでなんでなんでぇ!!?」
飯塚はドンドン縮んでいき、オーパーツ・グランマは元の姿に戻っていく。
飯塚は半身人間に、半身化物の姿になる。
「やだ……やだ……!! 死にたくない! た、助けて……!」
手を伸ばしてくる飯塚。
飯塚は足元から徐々に、塵になっていく。足を失い、地面に倒れ込む。
俺は飯塚を見下ろし、
「……悪いな……お前を元に戻す方法を知らなければ、お前を元に戻す気もない」
「な……んで……」
「飯塚、お前は俺に教えてくれた。世の中には救いようのない人間もいるとな。悪党だろうが何だろうが全て救う……そんなヒーローに憧れもしたが、俺には無理だ。お前のようなクズを生かす意味を、俺は見いだせない」
「そん……な……! ひど、い……! あく、まぁ……くずぅ…………!!」
飯塚は体を塵にしていって……最終的に消滅した。
俺はそっと息を吐き、墨刀に供給していた魔力を止める。すると墨刀は消滅し、代わりに義手が復活した。
「……魔力の供給を止めると義手に戻るのか」
俺はその場で膝を崩し、座り込む。
「葉村さん!!」
如月が【万迦快煙】をかけてくれるが――
「い、いま傷を癒します!」
「無駄だ如月……傷の問題じゃないんだ」
「まさか……魔力欠乏症!?」
俺は頷く。
魔力を使い過ぎた。体が怠い。今度はダメな方向で体が熱い。
飯塚と会ってからはずっと全開で動いていたからな。こうなって当然か。
「ちっ。やべぇな」
足音が複数聞こえる。
俺達を囲むように、魔物達が現れる。
飯塚というこのテリトリーの覇者がいなくなったことで、ドンドン魔物が溢れてくる。
「っ!!」
如月が、俺の前で両腕を広げる。
「如月……いいんだ。お前だけでも逃げろ」
「逃げません! サポーターとして、最後まで葉村さんを守りますっ!!」
そう強気で言いつつも、体は震えている。
せっかくオーパーツに目覚めて、飯塚も倒したってのに……これじゃあ台無しだ。
「グゥ……ガァアアアアアッ!!!!」
一斉に襲い掛かってくる魔物達。だが――魔物達は黒い弾丸を浴び、一斉に地面に伏せる。
「間に合ったね」
俺達と魔物達の間に、多数の人影が落ちる。
現れたのは――10人のオッドキャットのメンバー達。全員、顔を知っている。A級上位ランカーの4人のシーカーとそのサポーター、そしてS級シーカーのアビスとそのサポーターである一色さんだ。
「アビス……」
「君達が飛ばされたと聞いてね。ギルド協会に掛け合ってゲートを開いてもらったんだ。後はもう僕達に任せて」
凛空が俺を担ぐ。
「凛空……」
「どうやら大分と無茶をしたみたいだな。軽いぜ」
一色さんはチラチラと心配そうな視線を送ってくる。
「……無理し過ぎ……バカ」
「すみません一色さん。後は頼みます」
その言葉を最後に、俺は気を失った。
―――――――
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万能感が脳を貫く。脳汁が出る……ってのはこういう感覚のことを言うのかな?
「木刀? そんな棒切れで、俺に勝てると思ってんのかよぉ!!」
飯塚が斧を振るう。俺はそれを、左手に持った墨刀で受ける。
「あぁっ!?」
「これで全力か?」
俺は墨刀で飯塚の腹を殴り飛ばす。
飯塚の腹は抉れるが、すぐさま再生する。
「――ははっ!! なんかよくわからねぇが、強くなったみたいだな~凄い凄い! でもなぁ、そんな攻撃何度受けても俺を殺すことはできねえ!!」
「だったら何度も受けてみろよ」
俺と飯塚は激しく打ち合う。
墨刀を振る度、墨で描いたような斬跡が生まれる。
そして墨刀が相手にぶつかる、もしくはオーパーツとぶつかると、斬撃に乗った墨が弾ける。墨が弾ける度、飯塚のオーパーツである斧が徐々に黒く変色していく。
「ちっ! うぜぇな!! 避けんじゃねぇ――よぉ!!!」
飯塚は体と斧を可変させ、変幻自在に攻撃を繰り出してくるが、その全てを避け、いなし、カウンターをぶつけていく。
「うぐっ!?」
「……」
全部視える。全部わかる。
この万能感……オーパーツで能力が向上しているからだけではない。
窮地、後に引けない状況が生み出す集中力、さらに1度臨死体験のようなモノを経験したからか死を客観的に捉え死に対する恐怖感が薄くなっている。臆せず前に出れる。
雪が吹き荒れているのに、肉体が熱い。決して風邪を引いているわけではない。気持ちよく汗をかけている。神経もいつもより鋭い。全身を流れる汗の一滴一滴まで把握できる。
「なんなんだ……なんなんだよお前!!!」
「さぁな。俺もこんな俺は知らねぇよ……!」
今ならなんだって出来そうだ。
「飯塚、最後に教えてやる」
「あぁ!?」
「俺のオーパーツは相手に攻撃を加える度、もしくは相手のオーパーツに触れる度、その相手のオーパーツを墨色に染めていく」
飯塚のオーパーツの8割が、墨で塗ったように黒く染まる。
「そしてオーパーツが完全に墨色に染まった時、オーパーツはその全機能を失う」
飯塚はそこでようやく、自身のオーパーツが黒く染まっていることに気づく。
「これで詰みだ」
俺は渾身の一撃を飯塚の腹に喰らわす。同時に、飯塚のオーパーツが真っ黒に染まる。
「【墨化】――そうなったらもう、可変機能も、退魔能力も、身体補助効果も失われる」
オーパーツの完全な無力化、それが俺のオーパーツの能力。
「俺のオーパーツは、オーパーツをねじ伏せることに特化した兵器なんだ」
「ははは! 負け惜しみに出まかせ言ってんじゃ……」
飯塚の膝が、落ちる。
「なんだよ……コレ」
まるで糸の切れた人形のように、飯塚の全身が脱力する。
「あ、ありえねぇ! ち、力が……抜けていく……!?」
この魔物化、詳しい理屈は知らないが、オーパーツを核に成り立っていることは確実だ。そのオーパーツが腐れば、姿を保てない。
「退魔属性は一応あるけど、対シーカー用のオーパーツとはな……まったく、俺はとことんシーカーという職に嫌われているみたいだ」
通常の探索では対シーカー、対オーパーツの能力なんて無用の長物だからな。
「あ……なんで……なんでなんでなんでぇ!!?」
飯塚はドンドン縮んでいき、オーパーツ・グランマは元の姿に戻っていく。
飯塚は半身人間に、半身化物の姿になる。
「やだ……やだ……!! 死にたくない! た、助けて……!」
手を伸ばしてくる飯塚。
飯塚は足元から徐々に、塵になっていく。足を失い、地面に倒れ込む。
俺は飯塚を見下ろし、
「……悪いな……お前を元に戻す方法を知らなければ、お前を元に戻す気もない」
「な……んで……」
「飯塚、お前は俺に教えてくれた。世の中には救いようのない人間もいるとな。悪党だろうが何だろうが全て救う……そんなヒーローに憧れもしたが、俺には無理だ。お前のようなクズを生かす意味を、俺は見いだせない」
「そん……な……! ひど、い……! あく、まぁ……くずぅ…………!!」
飯塚は体を塵にしていって……最終的に消滅した。
俺はそっと息を吐き、墨刀に供給していた魔力を止める。すると墨刀は消滅し、代わりに義手が復活した。
「……魔力の供給を止めると義手に戻るのか」
俺はその場で膝を崩し、座り込む。
「葉村さん!!」
如月が【万迦快煙】をかけてくれるが――
「い、いま傷を癒します!」
「無駄だ如月……傷の問題じゃないんだ」
「まさか……魔力欠乏症!?」
俺は頷く。
魔力を使い過ぎた。体が怠い。今度はダメな方向で体が熱い。
飯塚と会ってからはずっと全開で動いていたからな。こうなって当然か。
「ちっ。やべぇな」
足音が複数聞こえる。
俺達を囲むように、魔物達が現れる。
飯塚というこのテリトリーの覇者がいなくなったことで、ドンドン魔物が溢れてくる。
「っ!!」
如月が、俺の前で両腕を広げる。
「如月……いいんだ。お前だけでも逃げろ」
「逃げません! サポーターとして、最後まで葉村さんを守りますっ!!」
そう強気で言いつつも、体は震えている。
せっかくオーパーツに目覚めて、飯塚も倒したってのに……これじゃあ台無しだ。
「グゥ……ガァアアアアアッ!!!!」
一斉に襲い掛かってくる魔物達。だが――魔物達は黒い弾丸を浴び、一斉に地面に伏せる。
「間に合ったね」
俺達と魔物達の間に、多数の人影が落ちる。
現れたのは――10人のオッドキャットのメンバー達。全員、顔を知っている。A級上位ランカーの4人のシーカーとそのサポーター、そしてS級シーカーのアビスとそのサポーターである一色さんだ。
「アビス……」
「君達が飛ばされたと聞いてね。ギルド協会に掛け合ってゲートを開いてもらったんだ。後はもう僕達に任せて」
凛空が俺を担ぐ。
「凛空……」
「どうやら大分と無茶をしたみたいだな。軽いぜ」
一色さんはチラチラと心配そうな視線を送ってくる。
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