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第三話 天使な筋肉
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夢を見た。
まだ両親をパパ、ママと呼んでいて、普通の家庭だった時の夢。
多分小学生になるより前、初めてショートケーキを食べた。
二人共笑顔で……
「――ろ、起きろお嬢ちゃん!」
「……あ」
目を開くと真っ白な光が突き刺さり痛い。
火にも炙られていないところを見ると、地獄ではなさそうだ。
死んだ私はどうやら、天国にいったらしい。
光になれれば、目の前にいたのは筋肉。
なんてことだ、天使というのは凄い美女やイケメンではなく、筋肉ムキムキのハゲゴリラだった。
衝撃の事実に口を開ける。
「天使は筋肉ハゲゴリラだった、これは小説の一文になるかもしれない」
「誰が筋肉ハゲゴリラだコラ……その様子じゃ体調に何か問題はなさそうだな」
どうやら私は別に死んでいないようだ。
筋肉曰く私は落葉ダンジョンで倒れていたところを、偶然通りかかった探索者によって救出、教会へと運び出されたそうな。
ここは教会に併設されている無料の医療施設、探索者が強力な存在なので国が金を払っているのだ。
どうしてあんなところに潜ったんだ、筋肉は私に怒るが、私だって本当は入りたくなかった。
事情を説明したが、パーティの正式な登録をしていないなら、その証明は難しいと渋い顔で告げられた。
そんな気はしていた、でなきゃあまりに躊躇が無さすぎる。
ああ、人間なんて信じるんじゃなかった。
「これからどうするんだ? ……お前がその気なら、協会の職員として推薦状を書くのもやぶさかじゃないが……」
「いや、探索者としてこれからは一人でやっていく」
筋肉の話はあまりにありがたすぎる申し出だったが、私だってクマムシくらいのプライドはある。
ゴミみたいな扱いをされて、少し、いや結構傷付いたし、あいつらは絶対に許せない。
でも今の私だと雑魚だ、多分切り掛かったらその場で肉袋になる。
だから頑張る。
今までは体力をつけるだけが目的だったけど、強くなる。強くなってあいつらをボコす。
えーっと強い奴が偉いってのは……焼肉定食? そう、焼肉定食の摂理に従って、私は己の欲望のままに奴らを喰らってみせるのだ。
「そうか……ほら、これお前の武器だろ?」
「おお、愛しの金属バット」
「悪くない選択肢だ。遠心力を利用すれば弱くてもそこそこの威力が出るからな」
筋肉にも褒められた。
人に褒められたの久しぶりかも、えへへ。
◇
まだ体調も完璧じゃない、ここで休んでろ。
筋肉はそう言ってこの部屋から去っていった、協会の支部長らしく忙しいのだろう。
さて、人が居なくなったところで確認することがある。
死ぬ直前か直後か知らないが、聞こえたあの音とスキルについてだ。
「ステータスオープン」
―――――――――――
結城 フォリア 15歳
LV 3
HP 10 MP 15
物攻 11 魔攻 0
耐久 23 俊敏 29
知力 3 運 0
SP 0
スキル
スキル累乗 LV1
悪食 LV5
口下手 LV11
経験値上昇 lv1
称号
生と死の逆転
―――――――――――
やはりというべきか、あれは夢ではなかったらしい。
気になるのは当然『スキル累乗』『経験値上昇』『生と死の逆転』だろう。
目の前に出たウィンドウを突けば、各々スキルの詳細も確認できる。
―――――――――――
経験値上昇 LV1
パッシブスキル
経験値を獲得する時、その量を×2倍
スキル累乗 LV1
パッシブ、アクティブスキルに関わらず、任意のスキルを重ね掛けすることが出来る
現在重ね掛け可能回数 1
生と死の逆転
死を乗り越え、運命を切り開いた証
称号獲得者に『経験値上昇』と『ユニークスキル』を付与
―――――――――――
成程、このへんてこなスキルや称号たちは、私が死んで生き返ったから手に入ったようだ。
確か希望の実でLV10以下復活判定だとか言っていたから、そのおかげだろう。
しかし希望の実で生き返るとは、今まで聞いたことがない。
いったいどれほどの低確率なのか、一個や二個食べたから大丈夫です、という物でもないだろうし、LV10以下でないと判定も出ないとなれば、今まで誰も知らなかったのも当然だ。
要するに私は、最後の最後に悪運があったという訳らしい。
累乗、るいじょー……ぎりぎり覚えている。
学校で学んだ、同じ数字を掛け合わせると凄い大きい数になる奴だ。
序盤は足し算が上でも、続けていけば足し算なんか足元にも及ばない桁になるらしい。
……もしかして
「『スキル累乗』発動、対象『経験値上昇』」
もしかして、もしかしてだ。
例えばこの『スキル累乗』を発動して、経験値上昇が『×4倍』になったとしたら……
『スキル累乗』のLVが上がって、重ね掛けの回数が三回、四回と増えていく時、二倍が四倍、四倍が八倍、八倍が十六倍……ちょっとその先は計算できない。
算数は苦手なのだ、そもそも勉強できないけど。
―――――――――――
経験値上昇 LV1
パッシブスキル
経験値を獲得する時、その量を【×4倍】
現在『スキル累乗』発動中
―――――――――――
「は、はは……!」
心臓が、震えた。
涙がとめどなく溢れ、全身に力が漲る、
私は今、銀杏塩辛に覆われた現実を払拭する、とんでもない力を手に入れてしまったかもしれない。
まだ両親をパパ、ママと呼んでいて、普通の家庭だった時の夢。
多分小学生になるより前、初めてショートケーキを食べた。
二人共笑顔で……
「――ろ、起きろお嬢ちゃん!」
「……あ」
目を開くと真っ白な光が突き刺さり痛い。
火にも炙られていないところを見ると、地獄ではなさそうだ。
死んだ私はどうやら、天国にいったらしい。
光になれれば、目の前にいたのは筋肉。
なんてことだ、天使というのは凄い美女やイケメンではなく、筋肉ムキムキのハゲゴリラだった。
衝撃の事実に口を開ける。
「天使は筋肉ハゲゴリラだった、これは小説の一文になるかもしれない」
「誰が筋肉ハゲゴリラだコラ……その様子じゃ体調に何か問題はなさそうだな」
どうやら私は別に死んでいないようだ。
筋肉曰く私は落葉ダンジョンで倒れていたところを、偶然通りかかった探索者によって救出、教会へと運び出されたそうな。
ここは教会に併設されている無料の医療施設、探索者が強力な存在なので国が金を払っているのだ。
どうしてあんなところに潜ったんだ、筋肉は私に怒るが、私だって本当は入りたくなかった。
事情を説明したが、パーティの正式な登録をしていないなら、その証明は難しいと渋い顔で告げられた。
そんな気はしていた、でなきゃあまりに躊躇が無さすぎる。
ああ、人間なんて信じるんじゃなかった。
「これからどうするんだ? ……お前がその気なら、協会の職員として推薦状を書くのもやぶさかじゃないが……」
「いや、探索者としてこれからは一人でやっていく」
筋肉の話はあまりにありがたすぎる申し出だったが、私だってクマムシくらいのプライドはある。
ゴミみたいな扱いをされて、少し、いや結構傷付いたし、あいつらは絶対に許せない。
でも今の私だと雑魚だ、多分切り掛かったらその場で肉袋になる。
だから頑張る。
今までは体力をつけるだけが目的だったけど、強くなる。強くなってあいつらをボコす。
えーっと強い奴が偉いってのは……焼肉定食? そう、焼肉定食の摂理に従って、私は己の欲望のままに奴らを喰らってみせるのだ。
「そうか……ほら、これお前の武器だろ?」
「おお、愛しの金属バット」
「悪くない選択肢だ。遠心力を利用すれば弱くてもそこそこの威力が出るからな」
筋肉にも褒められた。
人に褒められたの久しぶりかも、えへへ。
◇
まだ体調も完璧じゃない、ここで休んでろ。
筋肉はそう言ってこの部屋から去っていった、協会の支部長らしく忙しいのだろう。
さて、人が居なくなったところで確認することがある。
死ぬ直前か直後か知らないが、聞こえたあの音とスキルについてだ。
「ステータスオープン」
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結城 フォリア 15歳
LV 3
HP 10 MP 15
物攻 11 魔攻 0
耐久 23 俊敏 29
知力 3 運 0
SP 0
スキル
スキル累乗 LV1
悪食 LV5
口下手 LV11
経験値上昇 lv1
称号
生と死の逆転
―――――――――――
やはりというべきか、あれは夢ではなかったらしい。
気になるのは当然『スキル累乗』『経験値上昇』『生と死の逆転』だろう。
目の前に出たウィンドウを突けば、各々スキルの詳細も確認できる。
―――――――――――
経験値上昇 LV1
パッシブスキル
経験値を獲得する時、その量を×2倍
スキル累乗 LV1
パッシブ、アクティブスキルに関わらず、任意のスキルを重ね掛けすることが出来る
現在重ね掛け可能回数 1
生と死の逆転
死を乗り越え、運命を切り開いた証
称号獲得者に『経験値上昇』と『ユニークスキル』を付与
―――――――――――
成程、このへんてこなスキルや称号たちは、私が死んで生き返ったから手に入ったようだ。
確か希望の実でLV10以下復活判定だとか言っていたから、そのおかげだろう。
しかし希望の実で生き返るとは、今まで聞いたことがない。
いったいどれほどの低確率なのか、一個や二個食べたから大丈夫です、という物でもないだろうし、LV10以下でないと判定も出ないとなれば、今まで誰も知らなかったのも当然だ。
要するに私は、最後の最後に悪運があったという訳らしい。
累乗、るいじょー……ぎりぎり覚えている。
学校で学んだ、同じ数字を掛け合わせると凄い大きい数になる奴だ。
序盤は足し算が上でも、続けていけば足し算なんか足元にも及ばない桁になるらしい。
……もしかして
「『スキル累乗』発動、対象『経験値上昇』」
もしかして、もしかしてだ。
例えばこの『スキル累乗』を発動して、経験値上昇が『×4倍』になったとしたら……
『スキル累乗』のLVが上がって、重ね掛けの回数が三回、四回と増えていく時、二倍が四倍、四倍が八倍、八倍が十六倍……ちょっとその先は計算できない。
算数は苦手なのだ、そもそも勉強できないけど。
―――――――――――
経験値上昇 LV1
パッシブスキル
経験値を獲得する時、その量を【×4倍】
現在『スキル累乗』発動中
―――――――――――
「は、はは……!」
心臓が、震えた。
涙がとめどなく溢れ、全身に力が漲る、
私は今、銀杏塩辛に覆われた現実を払拭する、とんでもない力を手に入れてしまったかもしれない。
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