白雪に被さる紅い月

的射 梓

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 待ち遠しかった社交の席でようやく見つけた。
 心に余韻の残る甘い往来と苦々しい想いとに揺れる目に映るのは、侯爵令嬢アストリッドだ。
 気位の高い彼女は、彼に気づいてもただ眠たげに目配せをするだけだった。
 はやる気もちを隠して、静かに歩み寄る。

「――ずいぶんと、久しぶりではありませんこと?」
 先に言葉を発したのは、アストリッドだった。
「なかなか会えなくてすまない」
 言わなければならない。そう決意して重い口を割るトマスも、伯爵家の令息だった。
 虫も殺せないような性格ではいささか頼りない、というのが妹の評だ。
「君のお父様に、結婚を断られた」

「そうですの」
 アストリッドはただ、涼しそうに答えた。
 なまめかしく扇を開き、そして閉じると、彼女はトマスにそっと耳打ちをした。
 その内容にトマスは困惑を隠せなかった。アストリッドはさらに追い打ちをかけた。

 刹那の微笑みだけを残して迷いなく去っていくアストリッドの姿を、今のトマスはただ苦しげに見送るほかなかった。

   * * *

 窓の外に、しんしんと降り積もる雪。
 アストリッドの衣とそして雪のように白い肌とに映る、暖炉の炎。
 寝台に横たえられた令嬢の手は、頭上にて黄色い麻縄で一つにされていた。

 猛禽にも似た褐色の瞳は、トマスを捉えて離れない。
 艷やかな唇がトマスを糾弾している。彼はもうアストリッドの体に倒れこむほかに選ぶべき道はなかった。

「アストリッド……愛している」
 ついばむように短く唇を奪う。アストリッドは息を詰めた。
 ドレス越しでもその肌は丸く柔らかい。コルセットを着けていなかった。
 その、首元から出ている処にも口づけをして味わう。
 鎖骨。頸動脈。ほおを通って耳をなぶっても、白い吐息が色づいた気がする。ただ、今トマスはアストリッドへの接吻に夢中だった。

 アストリッドの双眸はトマスを睥睨したままだ。
 その美しい目を愛おしげに見つめて、脇腹の曲り目に指を這わせる。
 胸のふくらみは頂点を外しながら、首にたどりつけばクイと顎を引き上げる。
 瞳を閉じたアストリッドの息は、長い長い口づけで塞がれてしまう。

 キスの間にも、豊かに実った果実の柔らかさを開いている手で味わう。
 気高さに比例した巨乳と上質の生地のおかげで、ドレス越しでも心地よい。
 その柔らかさに味をしめると、両の手で心のままに揉みしだいた。
 アストリッドの頂きがくりかえし下着にこすれる。彼女はその頬に、暖炉とは別の炎を浮かび上がらせていった。

 やがてキスをやめたトマスは、アストリッドの双丘に今度はその頭を埋めた。
 その胸は甘く、心地よい。夢の海に沈んでしまいそうになる。
 なのに、アストリッドの非難に目を覚ませられる。
 口に収まりきらない果実に服の上からしゃぶりつくと、彼女の息はまた不規則になった。

 包みの上からアストリッドを含味しているうち、トマスの肉棒は限界まで熱い血をたぎらせていた。
 トラウザースの上からでも分かるその膨らみが、彼女の太もものあたりに突き刺ささった。
 その硬さに、アストリッドは無意識に脚を避ける。トマス自身は開放されたが、 むしろ彼女に一層の気を惹かれる。

 節くれだった指をドレスのすそから忍ばせると、アストリッドの蜜園を撫ぜる。
 ぴちりと閉じた割れ目を柔らかくなぞった。美丘を通り過ぎてしかし突起を外す。その周囲を、何度も愛でる。
 口づけを通じて感じるアストリッドの体温が、心持ち上がったように感じる。
 そのつばも甘い。唇を舌で貫いて、歯茎に溜まっているのを舐めとる。

 おおよそ冷静で、つららのような美しさをたたえるアストリッドだ。
 なのに、今は小さく切なげな声をとめどなく漏らしている。
 それが何よりも美味だった。

 膣口を浅く静かに指で犯せば、トマスの指はしとどに濡れた。
 愛液をすくってクリトリスを湿らせ、柔らかげにアストリッドの突起を愛でる。
 彼女は一段と甘美な声を響かせた。

 アストリッドの淫蜜にその指を潜りこませて、膣口のもっと深くへと突き入れる。
 その美貌に苦痛の色が滲んでいて。
 前孔から指を引き抜くと、小さくそっとキスをする。
 あくまで強気なアストリッドは、ふるふると横に首を振った。
 それを見たトマスは、割れ目の周りを遊ばせていた指をまた彼女の中へと進ませる。

 固く締め付けてくる狭穴を、アストリッドの呼吸を感じながら和らげていく。
 遊んでいる手で揉みしだいている、彼女の豊胸がとても柔らかく感じる。
 凛とした瞳の奥に隠しているのが、痛苦から嬌声に変わったら、沈み込ませる指の数を増やして。
 やがて三本の指を受け入れるようになったアストリッドは、侵入者をきゅうと締め付けて愛蜜を浴びせていた。

 くぐもった切なげな声で未知の感覚に揺られるアストリッドが、とても愛おしい。
 両手をまわして固く抱きしめる。
 角度を変え、また幾度か唇を奪った。
 薄い香に隠されたアストリッドの薫りも、愛くるしかった。

「できれば、アストリッドとはしっかりとした関係で初夜を迎えたかった」
 そういう彼を、アストリッドは細く睨みつける。
 不意に彼女の中を愛でていたのとは別の手で、彼女の髪をすくう。
 さらさらとした感触が指に快い。何度も何度も絡ませる。
 アストリッドの不服は収まらないが、まんざらでもない様子だ。

 そして、彼女の訴えをトラウザースから抜き出した赤黒い欲望をか細い膣口に呑ませることで塞いだ。
 その中は、圧倒的だった。
 力の抜けない膣道は痛みさえ感じさせ得るほど締め付けてきた。
 暖かく蜜に塗れた感覚に、持って行かれそうになる。
「う……く……」
 早々と達しそうな肉棒を、トマスは一度抜いてしまった。
 アストリッドは熱情に浮かされながらも不服そうに見ていて。

「まだ、だ」
 息を荒げるトマスは、再び肉棒をアストリッドにつなごうとはしないで、その入り口を撫ぜりはじめた。
 再度膣口からすくった蜜をなすりつけて、親指でクリトリスを圧迫する。
 きゅうと目を結んだアストリッドに、気づいた時にはそれ以上の熱と質量を持った塊が押し付けられていて。

 空いた両の手で、アストリッドの豊かな双丘を存分に味わう。
 3つの尖り目からの快感に悶える彼女のゆらぎが、一層の弾力とそして征服感を加えていた。
 されど、アストリッドの目から見てもトマスにも余裕はなかった。
 荒々しく唇が結ばれると、上下の歯茎やほおをなぞって。

 トマスの肉棒がアストリッドの肉芽に何十度か触れたとき、アストリッドはひときわ大きな嬌声を上げて震えた。
 それに呼応するように、トマスも白い欲望を吐き出す。
 虚脱感に襲われて彼女の身に深く沈み込む。
 しかし、肉棒は未だ静まらなかった。

 確かめるように、静かな口づけを長く交わす。
「アストリッドを、もらうよ」
 その一方通行の道に、肉棒を今度こそ深く突き入れる。
 よりきつい壁を穿つと、凛としていたアストリッドに苦痛の色が滲んでいて。

 愛しい彼女の最奥まで貫いたら、小さくキスをしてやんわりと髪を撫でる。
 それはアストリッドの気を紛らわすためだったが、強気な彼女の頭に触れる行為はトマスの征服欲も満たした。

 少しずつ広げるように、アストリッドの孔の中心を何度も往復して。
 はやる気持ちは、彼女の口に割り入り舌を絡まらせて代償する。
 柔らかい胸も良いが、うなじや耳、果ては尻肉も彼の感触を楽しませた。
 ドレスの上質な生地も、直に触るのとはまた違った味わいがあった。

 やがて膣道にかかっていた無駄な圧力が抜けて、トマスに程よい圧迫感を与えるようになった。
 その頃にはアストリッドも、異物感こそ残るものの、潤んだ瞳の奥に悦楽を映し出していた。

「トマス……もっと……ですの……」
 その言葉に、トマスは全身が沸き立つような感覚を覚える。
 アストリッドの膣がきゅんと狭くなる。
 いや、アストリッドではなくて。
 トマスの肉棒が、アストリッドの中で一層大きくなった。

 風の音が雪に吸われる静寂の中、暖炉の火の燃える音と、そして二人の交わる音だけがその部屋を満たしていた。
 アストリッドは常日頃の彼女からは考えられない甘い声で鳴いた。
 トマスも乱れた吐息の中に声が混じるのを隠せないでいた。
 それは時折キスで途切れても、結ばれ合ったお互いには深く聞こえていて。
 その舌で、肉棒が膣を穿つ水音が淫らな伴奏を添えた。

 愛蜜をかき出しながら浅くに引き上げると、奥深くを突き上げながらなお恥骨でクリトリスを刺激する。
 その度に、アストリッドも小さく震えて。

 しかし今度は、彼女の足がトマスに蜘蛛のように絡みついた。
「アストリッド?くあ……」
 抗いがたい快楽を声に出して表したら、彼女の体がより大きく痙攣した。
 肉棒に感じるそのゆらぎに身を引こうとするも、アストリッドに絡め取られて。
 暖かくたおやかな膣壁に抱かれたまま、その欲望を吐精した。
 その快感に我を忘れ、深く突き入れて全てを放ってしまった。

 気がついたら、トマスは弛緩しきった彼女にそっと触れるようなキスをする。
 それにアストリッドも応えて、最中に薄く彼の唇を舐めた。
「レイプしてくれて、ありがとう。これで、ずっと一緒ね」
 アストリッドは年相応のあどけない表情で、うれしそうに笑う。
 その奥に企みを秘めながら、うれしそうに笑う。
 
「レイプではない……が、これからは一緒に暮らそう」
 トマスは苦々しそうに返す。
 だが、どこからどう見てもレイプになるはずだった。
 それがアストリッドの望みだからだ。

 アストリッドの家は、かつては英華を誇った侯爵家だった。
 しかし先の遠征に失敗して勢力をそがれてからは、その英華にすがるだけの貧乏貴族だ。
 それに対してトマスの家は、侯爵位が制定される前から続いている伯爵家。王家との縁も深い。
 諸侯の中でもトップクラスの名家だった。

 持参金を出し渋る父が結婚に反対することは、アストリッドには予想できた。
 というよりも、トマスと出会う前から分かっていたことだ。
 だから、トマスの口から伝えられた時にもふうんとしか思わなかった。
 むしろ、彼の便りがなかなか返ってこない理由が分かって安堵したほどだ。

 それだから、アストリッドはトマスに突きつけたのだ。
「わたくしのことを愛しているなら、さらいに来てくださいませ」と。
 その言葉だけなら王子様を夢見る少女のようだが、彼女の計画は一味違った。
「わたくしと結ばれて、純潔を奪って欲しいと存じますの」と、アストリッドは続けた。

 どこかおっとりしているトマスと違い、彼の父は生き馬の目を抜くようなやり手だ。
 一人息子に醜聞が生じたなら、ありとあらゆる手を使って揉み消すだろう。
 それに対抗する手は、きっとアストリッドの父にはない。

 ただ、アストリッド自身の身も危ういのだけれど。
「アストリッドだけは、僕がこの身をかけて守ろう」
 トマスの太い指が、彼女の赤毛をすいた。
 彼もあの父の血を引いているのだ。
 かつて少し頼りなさげに見えたのは、それだけ彼を本気にさせるものがなかったのだろう、とアストリッドは思う。
 付け直したリボンカチューシャで持ち上がったアストリッドの髪は、まるで紅い三日月のようだった。

 睦み合いながらこれからの話をしていると、コツコツと足音が近づいてきた。
「そろそろ、メイドが告げに来る時間だったな」
 その言葉に、アストリッドは素の不安げな表情を浮かべる。
 だが、そこから先は示し合わせた通りだ。

「いや……トマス様、後生ですから中には出さないでくださいませ、いやああああああ!」
 作られた悲鳴と、こちらに走ってくる音を聞きながら、とらわれているのは自分だな、とトマスは思った。
 アストリッドの恥部からは、その純潔を散らした証と二人の愛液とがどろりと垂れていた。
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