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一年生編

幼馴染妹とゲーム

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「ねぇお兄ちゃん」
「なんだい美優ちゃん」

 僕は画面越しに声のする美優ちゃんに向かって言葉を返す。
 今、僕達はオンラインゲームをしている。

「お姉ちゃんの事はいいの?」
「あぁ、知り合いが途中までいてくれるから降りる時に連絡入れてもらう事になっている」
「ならいいか」

 美優ちゃんも心配なのだろう。
 中学三年の傷が少しは癒えたとはいえ、僕と海斗以外と話すのはまだ少し怖いらしい。
 だから、部活の人にも入部の際しっかりと伝えている。
 本来ならそんな面倒事を持っている子を受け入れるわけがないのに、その部活は紅羽の事情を分かってくれた。
 なんていうか、いい部活だと思う。

「あ~、死んじゃった~」

 ゲージを見ると、彼女のキャラのHPが0になっていた

「突っ走りすぎだよ」

 そう言って近くのモンスターを倒して彼女を蘇生する。
 相手も残りHP少なかったので、楽々と倒せた。

「ありがとう~」
「それにしても四体目って」
「お兄ちゃんと一緒にやるために新しく作りました」
 
 美優ちゃんは新しく魔導士を選択していた。
 
「魔導士で近接戦って」
「この武器、魔力量に応じて物理攻撃力が上がるんだよね~」

 美優ちゃんはそう言って誰も使わないというか、使いたくないマイナー武器マナソードという武器を装備していた。
 この武器は対象の魔力量に応じて攻撃力を上げるというものだが、魔導士は基本詠唱係なので近接になれていないと使えない武器だし、何より魔導士は物理防御力が低いので一撃喰らえば死んでしまうのだ。

「よくそんなの使うな」

 くそ武器と言われている代物だが、彼女が使うと何でも凄く見えてくる。
 絶対使わんけど。

 そう思っていると、着信音が鳴る。
 紅羽の部活仲間の柊 千冬ちゃんだ。

「紅羽ちゃん、もうすぐ着くから迎えに行ってあげて」
「了解、いつもありがとうね」
「うんうん、それじゃあね」

 そう言って僕は通話を切る。

「っという事だから、僕は行ってくるよ」
「行ってら~」

 そう言って僕は電源を切り、ログアウトする。
 そして僕は支度を済ませ、紅羽の元へ向かう。
 ここから駅までそう遠くない。
 せいぜい徒歩十分くらいだ。
 まぁ、彼女が乗り過ごした場合、戻らないといけないが。

 この駅は改札が一つしかないので、改札口で彼女を待っているとしばらくして彼女が出てくる。

「ごめんね、夜遅くに」
「何度も言うが、謝る事じゃないって」

 そう言って紅羽と歩き出す。
 
「ねぇ、公園の方寄っていかない?」

 階段を上がり終えると、彼女は立ち止まりそう提案してきた。

「ちょっと、行きたいところがあって」

 僕にそういう彼女は少し落ち込んでいるように見えた。


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