限りなく人間に近いAI

３

「あなたは人間ですか？ AIですか？」

判定者の一人が尋ねると、僕はゆっくりと口を開いた。

「はい。僕は、AIです」

判定者達は、意外な言葉に目を丸くした。

「ほぉ。それは、何故だね？」

「僕は、ものを食べることもできないし、涙を流すこともできない。だから……お父さんとお母さんの本当の子供にはなれないんです」

「そのことについて、君はどう思うかね？」

判定者は、興味深く尋ねた。

「悔しいです」

「悔しい？」

「はい。だって、お父さんも、お母さんも、すごく優しくて、温かくて。温かさを感じない僕も、その温もりを感じるんです。だからこそ、本当の子供になれないことが悔しいんです。でも、だからこそ……すごく悔しいからこそ、僕はお父さんとお母さんとずっと一緒に暮らしたい」

「一緒に暮らしたいなら……最初の質問に対する君の答えは不利になるとは思わなかったのかね？」

判定者達は、ひどく興味を引かれた様子で聞いた。
僕は、すっと目を閉じた。

「そうですね。でも、僕はうそをついてはいけないから」

僕は目を開けた。

「どれだけ人間になりたくても、僕はAI。だけど、僕はお父さんとお母さんの子供。優しくて大好きなお父さんとお母さんの子供だから……僕はうそをついてはいけないんです」

判定者達は、顔を見合わせた。


テスト後、僕は別部屋で結果を待っていた。
自分で自分をAIだと言ってしまったから……きっと、僕は回収されるだろう。
でも、僕は……お父さんとお母さんの子供として、恥ずかしくない答えを出したんだ。

その時、ドアが開いた。

ドアの向こうにいたのは……サラお母さんだったのだ。

「お母さん……」

「ミッシェル！」

お母さんは、僕を抱き締めた。

「良かった、良かった。ミッシェル」

「お母さん、どうして……？」

「あなたが……『限りなく人間に近いAI』と判定されたのよ」

「本当に！？」

夢のようだった。
それじゃあ……

「ミッシェル。これからも、私達……一緒に暮らせるのよ。最高の誕生日プレゼント……神様、ありがとう！」

幸せ一杯に抱き締め合う僕達親子を、判定者達は微笑ましく見つめていた。