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Side 菫
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「菫(すみれ)。あんた、凛(りん)と仲良いわね」
昼休み……親友の美樹(みき)から不意に言われて、ドキッとした。
その『仲良い』ってきっと、『友達』としてのことを言われてるんだろう。だけれども、彼女のことを「カッコいい……」って思い始めている私は何だか、変に意識してしまう。
「うん、仲良いよ。小学生の頃からクラスメイトだったし、剣道部でも一緒だし」
「そっか、いいなぁ……」
美樹は目を細めて、本当に羨ましそうに私を見た。
「あの娘、すっごく綺麗でカッコいいんだけど、完璧すぎて近寄りにくいのよね。剣道でも春季大会、優勝したみたいだし」
その春季大会……実は私も出た。そして三回戦で凛と当たって勝てるはずもなく、ストレートに二本負けしたんだ。
でも、大会で優勝したんだし凛にとっては嬉しいことのはずなんだけど……その試合の後から、どういう訳か、私に対する凛の態度が素っ気ない。そのことを思い出した私は、思わず溜息が出そうなのを飲みこんだ。
「菫?」
「あ、ごめん。ちょっと一瞬、考え事してた」
「え、考え事って、一瞬でやるもの? 相変わらず、菫って不思議ね」
「へへっ、ごめん」
苦笑いを向ける美樹に私はチラッと舌を見せて、先程の話の続きをした。
「そうね……確かに凛って、近寄りがたいオーラも出しているかも知れないけど。話してみたら面白い娘だし、普通に仲良くなれると思うよ」
「それはさぁ、あんたが絶世の美少女だから、あのイケメン美少女とも釣り合うんでしょ。透き通るような白い肌が儚げで……私、あんたに話しかけるのも、勇気要ったもん」
「え……そんなことないよぉ。むしろ、私の方がクラスに溶けこめるか不安だったし……美樹が話しかけてくれて、嬉しかったよ」
そう言ってにっこりと笑うと、美樹は「もうまた、この娘はぁ」なんて言って真っ赤になった。
だけど……私がクラスに溶け込めるか不安だったというのも、美樹が話しかけてくれて嬉しくてほっとしたのも、決して嘘ではなかった。
幼い頃に腎臓の病気を患って、小学校にもろくに通えていなかった私は、中学でクラスに馴染むことができるか、本当に不安だった。そんな私に、凛以外で真っ先に声を掛けてきてくれたのが美樹なのだ。
そのことを思い出して……私は彼女の瞳を見つめて、にっこりと微笑みかけた。
「そうやって照れるところも……大好きよ、美樹」
すると……彼女はまるで、瞬間湯沸かし器のスイッチが入ったみたいに『プシュー……』と言って、トマトみたいに真っ赤になって倒れこんだ。
「ちょ……美樹! 大丈夫!?」
「菫……あんたのそれ、殺人的……。自分が凶器だってこと、もっと自覚なさいよ」
「え、凶器? 私が!?」
何が何だか分からない私に、彼女は「う~」と言って、さらに頭を抱え込んだのだった。
昼休み……親友の美樹(みき)から不意に言われて、ドキッとした。
その『仲良い』ってきっと、『友達』としてのことを言われてるんだろう。だけれども、彼女のことを「カッコいい……」って思い始めている私は何だか、変に意識してしまう。
「うん、仲良いよ。小学生の頃からクラスメイトだったし、剣道部でも一緒だし」
「そっか、いいなぁ……」
美樹は目を細めて、本当に羨ましそうに私を見た。
「あの娘、すっごく綺麗でカッコいいんだけど、完璧すぎて近寄りにくいのよね。剣道でも春季大会、優勝したみたいだし」
その春季大会……実は私も出た。そして三回戦で凛と当たって勝てるはずもなく、ストレートに二本負けしたんだ。
でも、大会で優勝したんだし凛にとっては嬉しいことのはずなんだけど……その試合の後から、どういう訳か、私に対する凛の態度が素っ気ない。そのことを思い出した私は、思わず溜息が出そうなのを飲みこんだ。
「菫?」
「あ、ごめん。ちょっと一瞬、考え事してた」
「え、考え事って、一瞬でやるもの? 相変わらず、菫って不思議ね」
「へへっ、ごめん」
苦笑いを向ける美樹に私はチラッと舌を見せて、先程の話の続きをした。
「そうね……確かに凛って、近寄りがたいオーラも出しているかも知れないけど。話してみたら面白い娘だし、普通に仲良くなれると思うよ」
「それはさぁ、あんたが絶世の美少女だから、あのイケメン美少女とも釣り合うんでしょ。透き通るような白い肌が儚げで……私、あんたに話しかけるのも、勇気要ったもん」
「え……そんなことないよぉ。むしろ、私の方がクラスに溶けこめるか不安だったし……美樹が話しかけてくれて、嬉しかったよ」
そう言ってにっこりと笑うと、美樹は「もうまた、この娘はぁ」なんて言って真っ赤になった。
だけど……私がクラスに溶け込めるか不安だったというのも、美樹が話しかけてくれて嬉しくてほっとしたのも、決して嘘ではなかった。
幼い頃に腎臓の病気を患って、小学校にもろくに通えていなかった私は、中学でクラスに馴染むことができるか、本当に不安だった。そんな私に、凛以外で真っ先に声を掛けてきてくれたのが美樹なのだ。
そのことを思い出して……私は彼女の瞳を見つめて、にっこりと微笑みかけた。
「そうやって照れるところも……大好きよ、美樹」
すると……彼女はまるで、瞬間湯沸かし器のスイッチが入ったみたいに『プシュー……』と言って、トマトみたいに真っ赤になって倒れこんだ。
「ちょ……美樹! 大丈夫!?」
「菫……あんたのそれ、殺人的……。自分が凶器だってこと、もっと自覚なさいよ」
「え、凶器? 私が!?」
何が何だか分からない私に、彼女は「う~」と言って、さらに頭を抱え込んだのだった。
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