仕事と家を同時に失った僕を拾ってくれたのは美少女JKでした。

れれくん。

文字の大きさ
7 / 13

 家と転職と。

しおりを挟む
『平日の昼間から僕は...なんでダメなんだ』
瑠奈との共同生活が始まり何事もなく2週間が経過し、7月も半ばを超えてしまった。

2週間たったのにも関わらず僕は自室(瑠奈の家)で最近お気に入りのライトノベル『ただ制服を着てるだけ』を読んでいる。

このラノベが特に面白い。
昨日何か気が紛れるモノを求め書店へ行くと普段は足を踏み入れないライトノベルコーナーへと向かっていった。

そこで、新作。ライトノベル大賞金賞。の帯がついたこの作品と出会った。

J Kリフレで働くヒロインとコンビニ店長の共同生活を描いたこの本は、奇しくも今の僕と瑠奈の関係に似ている。

(僕って本当に立場がないな...)
似ているだけで根本は違う。
この作品の主人公はちゃんと働いているし、家を失わない。困っているヒロインを受け入れる側だ。

でも、その事に目を背ければかなり現状に近しいモノだ。
購入し、内容を読むと引き込まれすぐに読み終わってしまった。

(次が楽しみだな......)
と、1人現実逃避してみるのだが問題はこの作品では無い。僕の現状だ。

[何で2週間も経っているのに、まだお前はそこにいるんだ]
僕のこれまでの経緯を物語にするのなら、読者の皆さんはそう思うだろう。
でも一つだけ言わせてくれないか。
僕はこの2週間何もせずにただヒモに成り下がっていたわけでは無いんだ。

それでは聞いてください。僕の言い訳を______。




遡ること1週間前。
僕は不動産屋さんを訪れていた。

『やはり今のままだと、ちょっと厳しいみたいですね...』
店員さんが困ったような笑みを貼り付け、こちらに現実を突きつけてくる。

『そうですか...』
この数日間で4度同じ言葉を聞いた。
僕はこの1週間毎日不動産屋さんへと行き、前の家と同等の部屋を探している。

前の家は駅から徒歩3分。1DKの4階。
駅にかなり近い為に家賃は管理費込み13万円。
流石に駅からの距離だけは目を瞑り、似たような物件を希望した。

でも借りられない。
貯金が有ると言っても、それは信用に足らないようで、無職の僕に貸せる部屋は築年数のかなり経過した、ワンルームだけだと毎度言い切られて来た

『分譲であれば...頭金と数ヶ月のローンを支払えるので在れば用意することも可能かと思いますが...』
『はぁ』
ついため息が溢れる。

この世界は弱肉強食だ。つまり搾取される側は搾取され続けるシステムだ。
仕事をしていなくて家を借りられない人間に家を売りつける。

この申し訳なさそうな、化けの皮を被った狼は腹の底では自分の事しか考えていない。


『結構です。ありがとうございました』
淡々と告げ、店を後にする。

(どうするかなぁ......)
まずは瑠奈に現状を報告し、もう少し面倒を見てもらうしか無いか。と、自然と肩を落としてしまう。


(ブー、ブー、ブー、ブー)
当てもなく、ただ街を歩いていると携帯が電話の受信を知らせてくれる。

スマホを出し相手を確認すると、前の会社での取引相手だった及川(おいかわ)さんだった。
画面をタップし、通話を開始。
耳に当てるとすぐ焦った及川の声が聞こえて来た。

『姫野くん、聞いたよ。仕事辞めたんだってな、大丈夫か?』

及川さんは自分の事を心配してくれていると、声だけでハッキリと伝わって来た。

『はい。すいません。こちらからお電話をさせて貰いたくても番号が分からずにそのままにしてしまいました』
及川には前の会社で非常にお世話になった。

本来あの会社では取引するのは難しいとされていたのだが、蓮太郎が出向くと快く取引を決定してくれたのだ。

そんな人に自ら伝えられなかったことに対して不甲斐なさを嫌と言うほど感じてしまう。

『そんなことは気にしないでくれ。そうだな、もしこれから時間が空いてるなら直接会って話せないか?』
『はい。僕も直接のが嬉しいです』
及川は特に気に留めることもなく、蓮太郎にとって嬉しい提案をしてくれる。

その後時間と場所を教えてもらい、通話が終了した。

(したいこともないし、早めに行くか)
すぐさま駅へと向かい電車に乗り込み、待ち合わせ場所へと向かった。




蓮太郎が改札前で待っていると一回りほど年上の見慣れた男性がこちらに歩いてくる。

しっかり整えられた髪に皺一つないスーツ。
メガネをかけ知的に、この年まで体型はちゃんと維持されたいかにも仕事が出来そうな男性。
そんな印象を受けるのが、蓮太郎が以前お世話になっていた及川その人だ。

『及川さんお久しぶりです』
『蓮太郎くん、久しぶりだね。ここではなんだし、早速お店に行こうか』
合流し、すぐさま先導されて歩き出す。及川が昼食を提案してくれたのでその店へと向かっていく。


店へ着きお互い注文を済ませたところで及川が口を開く。
『蓮太郎くんはどうして突然仕事を辞めたのかな?君の会社はただ辞めたとしか教えてくれなかったんだ』
(理由までは言われなかったのか...良かった)
心配そうにしてくれている彼を他所に、つい安堵してしまう。
理由まで言われていたら彼にも見限られてしまっていたかもしれない。

『恥ずかしい話、僕には社内に恋人が居たんです...』

蓮太郎の身に起きた事実を話し始めると途中少し表情に不満や心配が出ていたが、最後まで口を挟まずに聞いてくれた。


『そうか、よく分かった。言い辛かっただろうに良く教えてくれたね』
優しく、諭すように笑いかけてくれる。
先程の店員とは違い化けの皮など取っ払い、心からこちらのことを考えてくれていることが窺える。

『はい。良くしていただいて居たのに...本当に申し訳ございません』
頭を深々と下げる。
この人のお陰で蓮太郎の前の会社での評価はかなり上がった。
それなのにこんな結果を報告しなければいけない自分が悔しくて仕方ない。

『顔を上げてくれないか。そもそもあの会社は君の居るべき場所では無かったよ』
『...いるべき場所では無い。ですか?』

及川の放った言葉の意味が理解できない。
驚きのあまり、即座に顔を上げ聞き返してしまう。
少し失礼な行いではあるが、及川は気に留める様子もなく微笑み、話を続ける。

『そもそもウチはあの会社と取引するつもりは無かった。君が来る前は断ると決まっていた』
淡々と事実をありのままに伝えてくれる。
言い終え、及川の表情が和らぐ。
『だが、僕が覆した。商談に来た君と話をして是非一緒に仕事をしてみたいと思った。僕は君のことを買っているんだよ』
『......』

驚きのあまり口が上手く動かせず、言葉が喉元につっかかる。

蓮太郎は先程の及川の言葉を、君にあの会社は荷が重い。と言われていると解釈していた。
高卒の自分を拾ってくれた会社だった。他の社員に比べれば劣っていると入社してすぐの頃は何度も言われていた。

それでも今目の前にいる彼は僕には手に余ると言ってくれている。
自然と涙が溢れ、頬を伝う。

『ここからが本題なのだが...』
及川の言葉を受け、一声かけてハンカチで涙を拭い居住まいを正し、視線を戻す。
すると獲物を見つけた肉食獣のような、強く気高い瞳がこちらを射抜いていた。

この表情、瞳には覚えがある。
及川の仕事の時の顔だ。

『蓮太郎くん。是非ウチの会社に来ないか?丁度今すぐにでも活躍出来る人材を探していてね、僕からの推薦として君の名前を出したい。つまるところ今日ここにはヘッドハンティングをしに来たんだ』
『えっ...僕がですか...?』
話を聞き、内容を理解しても問い返してしまう。

勿論嬉しい話ではある。
だが、同情から声をかけてくれてる。そう思ってしまう。

蓮太郎の言葉を受け、及川はありのままの気持ちを伝えてくれる。

『そうだ。君をだ。でなければ、今日のスケジュールを後回しにこんな所へは来ないよ。その事を君は分かっているはずだ。君の人柄と能力が欲しい。是非僕の元へ来てくれないか?』

淡々とただ事実を述べるように話す及川。
彼の言っていることは間違っていない。

業界屈指の大企業で営業部長をしている彼のスケジュールが空かないのは、以前取引していた蓮太郎自身が誰よりも理解しているからだ。

これは同情なんてものじゃ無い。正真正銘ヘッドハンティングだと彼の言葉や表情から感じとる。

『ありがとうございます。僕としては身に余るお言葉です。ですがこの場ではお答えすることができません』
『他からも声をかけられている。か...』
蓮太郎が言おうとしていた言葉を先回りに言われる。承知の上での誘いなのだろう。

『君みたいな有良物件だ。もちろん理解しているよ。その上でだ、一度ウチの会社を見に来てくれないか?返事はその後にもらえるかな?』
『はい。お願いします』
今日何度目かの、頭を深々と下げ顔を上げると先程の笑顔に戻っている及川。

『君の都合のいい日を教えてもらえるかな?』
『はい』


その後予定を照らし合わせ、この日は解散した。
2日後に及川の連れられ、面接兼会社説明を受けたのだった___________。




『ほらね?僕頑張ってるでしょ?』
誰もいない部屋で誰に宛てるでもなくポツンと呟く。
要約すると有給期間が終わるまでどうにもならない。この一言に限る。

幸か不幸か瑠奈に報告すると喜ばれてしまい、そのままお世話になっている。

(後2週間このままか..,)
つい現実に目を向けて、肩を落としてしまう。
会社を辞めた時に29日あった有給が終わるまでにあと2週間もある。
こんな生活がまだ続くと考えるだけで憂鬱になってしまう。

(お腹空いたし、昼食べてスーパーに行くか)
気分を変えるには外に出るのが一番だ。今は12時を少し過ぎたところなので、丁度お腹も空いてる。

スマホを取り出し、同居人へとメッセージを送り着替えを始めるのだった。


***********************


(ブブッ)
昼休みになり夢乃とお弁当を食べていると、スマホがメッセージの受信を知らせてくれたので素早く取り出し確認する。

蓮太郎『スーパー行ってくる。買うものあったらLINEしといてくれる?』

(..........なにこの幸せなメッセージ)
絵文字もなく、ただ用件だけを告げた簡素なメッセージを見て私の胸は高鳴っている。

よく考えてみてほしい。こんなLINEを友達とするわけがない。
夫婦や家族。つまり彼とより近しい間柄の人間のみが受け取れるメッセージなのだ。

(ふふっ新婚かよって...)
私の中に住まう何者かが大喜びしてしまっている。
私自身も同じように喜びたい。が、今は無理だ。

友人やクラスメイトが周りにいる状況では、必死に内に押し留めるしか無い。

『瑠奈ちゃんまたニヤニヤしてるよ?大好きな彼からのメッセージだったの?』

(.........バレた)
普通にバレてしまった。
私は自分が思っているよりも表情に出てしまうようだ。
内容が内容なだけに、しかたもないだろう。と自分に言い訳をし、彼女へと応じる。

『え?なんでもないよ?私って基本笑ってるタイプじゃーん』
『そんなことないよ?』
ペチペチと肩を叩きながらノリ良く言ってみたが、全く効果がなかった。

『それで?そろそろ彼のこと教えてよー。瑠奈ちゃんが惚れるなんて...どんな人なんだろ....』
『だから居ないって、ずっと言ってるよね?』
『そんなの信じられるわけ無いじゃん』

瑠奈は彼女にさえ、蓮太郎のことを隠していた。
彼との関係は人に言えるものではない。そう自覚しているからだ。

『ほら、ご飯食べちゃおうよ』
『もぅ...』
人一倍色恋の話が好きな彼女はずっと私の想い人を知りたがっているが、こればっかりは申し訳無いが黙秘を貫かせてもらう。

(いつか...いつか誰かに話せる日が来るのかな...)
私だけに色んな表情を見せてくれる夢乃。彼女は私を信頼してくれているし、私も信頼している。
もし、蓮太郎との事を最初に打ち明けるなら絶対に彼女だろう。
そう確信めいたモノが私には確かにあった。

その後夢乃の目を盗み、欲しい食材や生活用品を蓮太郎に送り昼休みが終わり、五限目が始まるのだった。


***********************





__________________________________


最後まで読んでいただきありがとうございます。


作者のモチベになりますので、よろしければお気に入り、コメントなどお待ちしております。

次回の更新、お待ちくださいませ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

処理中です...